DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

中原中也(1907-37)「夏」:詩人は「血を吐くよう」に憂鬱だが死なない!明るさに惹かれ、生きる欲望をもつ!今、疲れ不甲斐なく思う!だが大丈夫、彼は死なない!「燃ゆる日」をあこがれるから!

2019-01-31 17:10:26 | 日記
 「夏」 Summer

血を吐くような 倦(モノ)うさ、たゆけさ I am in melancholy and in tiredness like vomitting my blood.
今日の日も畑に陽は照り、麦に陽は照り Today also, the sun shines over fields, and over wheat.
睡(ネム)るがような悲しさに、み空をとおく  Because of my saddnes like making me sleepy, the sacred sky is in the far distance,
血を吐くような倦うさ、たゆけさ and I am in melancholy and in tiredness like vomitting my blood.

《感想1》この詩人は憂鬱が嫌いだ。それはそうだ。憂鬱=「倦(モノ)うさ」のため彼は精神的に「血を吐く」。死ぬほどに苦しい憂鬱。彼は死にそうだ。しかし彼は生きることにとどまる。
《感想1-2》だるさ=「たゆけさ」が身体的で、一層耐え難い。「血を吐く」ほどの身体的状態。
《感想1-3》彼は明るさに惹かれる。彼には生きる欲望がある。「畑に陽は照り、麦に陽は照り」、それが彼はうらやましい。「空」に敬意が表される。「み空」だ。だが生き生きした「生」から自分の憂鬱がはるかに「とお」い。彼は「血を吐くよう」だ。

空は燃え、畑はつづき The sky is in fire, fields extend,
雲浮び、眩(マブ)しく光り and clouds float shining brightly.
今日の日も陽は炎(モ)ゆる、地は睡(ネム)る Today also, the sun burns, and the earth sleeeps
血を吐くやうなせつなさに。 becuse of my sadness like vomitting my blood.

《感想2》詩人の「血を吐くやうなせつなさ」は、心底から「燃え」、「眩(マブ)しく光り」、激しい対照と激変の「心の歴史」の再来を願う。彼は今、精神的、身体的に疲れた自分を不甲斐なく思う。

嵐のやうな心の歴史は The stormy history of my mind sleeps
終焉(ヲワ)つてしまったもののやうに far beyond the burning sun,
そこから繰(タグ)れる一つの緒(イトグチ)もないもののやうに as if it came to an end,
燃ゆる日の彼方(カナタ)に睡る。 or as if it had not any beginning where I can make.

《感想3》彼は「嵐のやうな心の歴史」が「終焉(ヲワ)つてしまった」、今や「睡る」と言う。確かに今はそうだ。「血を吐くような 倦(モノ)うさ(※憂鬱)、たゆけさ(※だるさ)」だから。
《感想3-2》だが、大丈夫だ、彼は死なない。なぜなら彼は「燃ゆる日」をあこがれるから。

私は残る、亡骸(ナキガラ)として――  I remain to stay as a dead body ――
血を吐くやうなせつなさかなしさ。 I am in sadness and in loneliness like vomitting my blood.

《感想4》詩を書く限り、彼は死なない。彼は「亡骸(ナキガラ)」だが、堂々と生きて歌う。彼は「血を吐くやうなせつなさかなしさ」のうちで立派に歌う。彼は死なずに歌う。彼は「燃ゆる日」をあこがれる。
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①壊れたものばかり、②空虚が必ず来る、③有(存在)も荒れ地だ、④君は生きるため戦う、⑤ルールに従って戦うor殺し合い! 

2019-01-31 00:41:38 | 日記
(1)
また壊れてしまった。すべてが壊れる。壊れたものばかりが過去にも周囲にも散らばる。
(2)
やがて君も壊れる。空虚だ。主語がない。ひたすら空虚だ。空虚は、理解不能で不安だ。だが空虚が必ず来る。ただそれだけ。
(3)
だが有(存在)も荒れ地だ。君は善を探す。平穏を探す。喜びを探す。信頼を探す。公平を探す。
(4)
そして何よりも生きていかねばならない。生きるのは努力がいる。君は生きるため戦う。君は修羅だ。存在は無残だ。勝たねばならない。
(5)
幸いにもルールがあれば、ルールに従って戦う。競技だ。公正なルールが保たれねばならない。だが、ルールがなければ殺し合いだ。
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石川啄木(1886-1912)①「どうなりと・・・・」②「曠野(アラノ)ゆく・・・・」:『悲しき玩具』(1912)所収:①投げやりになるな!②不安だ!

2019-01-30 22:19:14 | 日記
(1)
どうなりと勝手になれといふごとき I seem to abandon myself
わがこのごろを these days.
ひとり恐るる。 I am secretly afraid of such a feeling of mine.

《感想》歌人は人生をあきらめかけており、彼はそれを恐れる。投げやりになるなと自分に言い聞かす。

(2)
曠野(アラノ)ゆく汽車のごとくに、 This worry of mine looks like a steam engine train
このなやみ、 going through a barren field.
ときどき我の心を通る。 It sometimes passes through my mind.

《感想》重くつらい悩みがときどき彼を襲う。曠野(アラノ)を行く汽車のようだ。彼は不安だ。
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高田敏子(1914ー1989)「夕焼け」『夢の手』(1985)所収:詩人は夕焼けが「火の色」、「血の色」になるのを見た!

2019-01-29 22:41:14 | 日記
 「夕焼け」 Evening glow

夕焼けは Evening glow is
ばら色 rosy colour.
世界が平和なら When the world is in peace,
どこの国から見ても from whatever country you see,
どこの町から見ても or from whatever town you see,
夕焼けは evening glow is
ばら色 rosy colour.

夕焼けが I hope that
火の色に evening glow is
血の色に not seen
見えることなど as colour of fire,
ありませんように。 nor colour of blood.

《感想1》詩人は1914年生まれ。満州事変1931年(17歳)、日華事変1937年(23歳)、太平洋戦争1941年(27歳)、終戦1945年(31歳)。戦争続きだ。詩人は夕焼けが、「火の色」、「血の色」になるのを見た。
《感想2》この詩集の出版は1985年(71歳)。終戦から40年間、日本は戦争に参加(宣戦布告)しなかった。詩人が平和の時代の夕焼けを、「ばら色」と呼ぶ気持ちがわかる。
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三好達治(1900-1964)「残果」『百たびののち』(1962)所収:「木守り」の柿は、やがて朽ちて落ちる!しかしそれは、老いた者の誇りある姿だ!

2019-01-28 20:13:26 | 日記
 「残果」 A fruit left at a branch

友らみな梢を謝して Its friends went away from branches of a tree.
市に運ばれ売られしが Then they were carried to a market and sold.

ひとりかしこに残りしを However, it alone has remained to be there.
木守(キマモ)りといふ It is called a tree guardian.

蒼天のふかきにありて It is deeply in the blue sky.
紅の色冴えわたり Its red colour is extremly clear.

肱(ヒジ)張りて枯れし柿の木 The persimmon tree has become bare and extends its branches.
痩龍(ソウリュウ)に晴(ヒトミ)を点ず The fruit is like an brilliant eye of a slim dragon.

木守りは The tree guardian
木を守るなり protects a tree,

鴉(カラス)のとりも鵯(ヒヨ)どりも Even a crow and a bulbul
尊みてついばまずけり respect it and don't pick and eat it.

みぞれ待ち雪のふる待ち It waits for sleet and waits for raining.
かくてほろぶる日をまつか Then it waits for a day of collapsing.

知らずただしは I don't know such a thing. It possibly may be
寒風に今日を誇るか  proud of its today’s exiztance in a cold wind.

《感想1》冬になり、枯れた柿の木に赤い柿の実がひとつ残る。他の柿は、すべて収穫され市場に運ばれ売られた。収穫されない柿が1個だけ残る。
《感想2》その柿は「木守り」と呼ばれる。冬の深い蒼天に、柿の紅の色が冴えわたる。肱を張って枝ばかりになった柿の木に、「木守り」の柿はさながら痩龍の晴(ヒトミ)だ。
《感想3》木守りは木を守る。鴉も鵯どりも、それを尊んでついばまない。みぞれ、雪がつづき、やがてその柿は朽ちて落ちる。
《感想4》だが、それは朽ちるまでの間、木を守り続ける。その間、それは寒風に自らを誇る。
《感想5》「木守り」の柿は、やがて朽ちて落ちる。しかしそれは、老いた者の誇りある姿だ。



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