(1)『大渡海』:言葉の海を渡る舟!
荒木公平は玄武書房に入社して辞書作りに携わり、今年1995年、間もなく定年退職を迎えようとしていた。辞書編集部長で国語学者の松本は辞書『大渡海』の編集のため、荒木を慰留するが、荒木は「妻と共に過ごしたい」と出版社をやめる。『大渡海(ダイトカイ)』とは「言葉の海を渡る舟」ということ。「舟を編む」はその辞書(舟)を編集することだ。無数の言葉はまるで海、その海を渡るには辞書(舟)が必要不可欠だ!
(2)玄武書房・辞書編集部:部長で国語学者の松本朋佑ふくめ総勢4人!
荒木は自分の後任を探す。辞書はその特殊性から、適した人材も限られる。また会社(出版社)は人もカネもかかる辞書編集部にあまり人材を回さない。今の玄武書房・辞書編集部は部長で国語学者の松本朋佑、荒木、営業向きだが辞書には向かない軽いノリの西岡正志、実務を担当する契約社員の佐々木薫のみだ。
(3)馬締光也(マジメミツヤ):営業部から辞書編集部へ!
そんな時、西岡が「辞書作るのに向いていそうな人物が営業部にいる」と聞きつける。その人物は馬締光也(松田龍平)といい言語学専攻だが、内向きで営業に向かない。だが荒木は馬締が言葉に対して鋭い感性を持つことに気付く。荒木は馬締を、営業部から辞書編集部に引き抜き、自分の後任とする。馬締は不器用で変わっているが、どこか愛嬌があり辞書編集部に溶け込む。
(4)林香具矢(ハヤシカグヤ):馬締は香具矢に一目惚れする!
馬締が辞書編集部に異動して三ヶ月、彼の下宿先である早雲荘に、大家のタケの孫の林香具矢(宮崎あおい)が移って来る。馬締は香具矢に一目惚れする。しかしこの気持ちをどう伝えていいのか分からず「恋煩い」に陥る。香具矢は板前の見習いで『梅の実』という料理屋で修業中。馬締の恋の話を聞きつけた辞書編集部はこのお店を度々訪れる。
(5)恋文事件:結局、馬締は口で「好きです」と香具矢に告白する!
そんなある日、馬締と香具矢は休みの日が重なり合羽橋と遊園地に行く。しかし馬締は香具矢への気持ち口ではうまく伝えられない。そこで誠心誠意、恋文を書き香具矢に渡す。しかし筆書きで言葉遣いも難かしく香具矢は困り腹を立てる。しかし馬締は改めて口で「好きです」と告白し、香具矢も「私も好きです」と答える。やがて二人は結婚する。
(6)辞書編集部の外部交渉を一手に引き受けてきた西岡が営業部に異動する!
西岡がこの春、営業部に異動になると決まる。これまで辞書編集部の外部交渉は西岡が一手に引き受けてきたため、馬締は不安で仕方ない。だが西岡は今や、馬締のことや辞書作りが好きになり、「異動後も辞書作りをできるだけサポートする」と馬締に約束する。なお西岡は大学時代からつきあっていた三好麗美へプロポーズし、二人は結婚する。
(7)十三年後:馬締光也(マジメミツヤ)はすでに主任になっている!
『大渡海』の話が立ち上がり、馬締光也が辞書編集部に移ってから十三年後。馬締は主任になっていた。ある日、玄武書房に入社して三年の岸辺みどり(黒木華)が、異動で辞書編集部員となる。彼女は主任の馬締に会い「この先、自分は大丈夫だろうか」と不安になる。だが馬締は彼女を「辞書作りに向いている」と評価。みどりは『大渡海』に使用する紙の選定の際に、馬締が非常な熱意を持って辞書作りをあひていると知り馬締を尊敬する。
(8)再度、全「見出し語」24万語のチェックをする!
『大渡海』の発売を来年に控え、『大渡海』のための紙がついに完成する。素晴らしい紙だった。辞書の原稿は「5校」まで校正するが何と「4校」で「見出し語」が抜けていることが見つかる。大事件だ!来年3月発売と決まっているのに、再度全「見出し語」24万語のチェックをしなければならない。アルバイト学生10人以上が雇われ辞書編集部に泊まり込みでチェックをすることなった。
(9)辞書編集部長・松本が食道がんで亡くなる!
さらに辞書編集部長で国語学者の松本が検査入院するが、食道がんが見つかる。馬締は松本が生きている間に、なんとしてでも『大渡海』を完成させたいと思う。馬締は辞書作りに励み、ほとんどの日を会社で寝泊まりする。妻の香具矢が馬締をサポートする。「見出し語」24万語のチェックが終了し、ついに『大渡海』のページ刷りが始まる。しかし、松本は完成を待つことなく亡くなった。
(10)『大渡海』出版記念パーティー!
ついに『大渡海』が完成し出版記念パーティーが開かれる。馬締は松本が生きているうちに完成させられなかったことを後悔していたが、荒木が松本の遺した手紙を馬締に見せる。そこには、「不安も後悔もない」、「荒木君や馬締君に引き継いでもらって感謝している」など『大渡海』編纂に、松本が携われたことへの喜びが書いてあった。『大渡海』は結局、完成まで15年かかった。
(10)-2 『大渡海』の改訂作業!
「だが辞書は完成したら終わりではない。『大渡海』の改訂作業がある。この先何十年も、時代に合わせた改訂の必要がある。辞書の完成は、この意味では始まりだ。」荒木が言う。馬締はその言葉に頷く。
《感想1》辞書編纂のために日々「用例採集」が必要だ。松本先生、荒木、馬締が「用例採集カード」を持って新しい語を採取する熱意に感心する。(Cf. 今はインターネットが普及し「用例採集」の仕方は変わったかもしれない。)
《感想2》出版社もIT化の時代、生き残りが大変だ。紙媒体が電子媒体に圧倒される時代だ。1995年の「玄武書房」は、今2020年、生き残って居れば、おそらく多角化し、書籍の比重は相当小さくなっているかもしれない。
《感想3》1995年は「失われた10年」の半ば、バブル崩壊・不良債権問題で銀行がつぶれたりする頃だ。(1997年山一倒産・拓銀破綻!)また1990年代以来、多くの会社がリストラの嵐だ。(Cf. 日本は1991年から、その後2020年まで「失われた30年」だ!)馬締光也がリストラに遭わなかったのは優秀だった(or必要とされた)からだ。
《感想4》馬締光也と林香具矢(カグヤ)の間には子供がいない。二人はともに40歳近いはずだ。これからも子供は持たないのかもしれない。
《感想5》女性の板前の香具矢がかっこいい。だが板前に男性が多い。理由①過酷な修業(Ex. 最初の数年間は早朝から深夜まで先輩の下で雑用)、②労働環境に問題がある。(Ex. 修行中は住み込み、勤務時間が不規則で休みが少ない、「おしゃれやデートを楽しむ」という若い女性の願望はかなわず!)
《感想5-2》最近は、男性の板前が育たず人手不足。女性の受け入れも多くなった。(Ex. 育児休暇などを整える会社、女性の板前だけで営業する店舗!)
《感想5-3》女性の板前の強み:(ア)女性がカウンターにいると若者・おひとりさま・年配者・家族連れが「入りやすい」印象を持つ、(イ)男性の板前に比べ気が利き、コミュニケーション能力が高いand「女性の板前がいい」という客がいる、(ウ)子どもの扱いに慣れている女性をファミリー層が支持等々。
《感想5-4》女性で苦労する点:(a) 体格差や体力の差、(b) 「女性が握る寿司は食べられない」と言う年配の男性あり。