蜘蛛は銀の玉をかかえる
蜘蛛は銀の玉をかかえる
目に見えぬ手に──
そしてひとり軽やかに踊りながら
真珠の織り糸を──くり出す──
彼は無から無へと往復する──
稼ぎにならぬ商売に従事して──
わたしたちの壁掛けを自分のものに取りかえる──
あっという間に──
一時間で至高のものに至る
彼の光の大陸──
と思うと主婦の箒からぶら下がる──
自分の国境は──忘れている──
‘The Spider holds a Silver Ball’
The spider holds a Silver Ball
In unperceived Hands —
And dancing softly to Himself
His Yarn of Pearl — unwinds —
He plies from Nought to Nought —
In unsubstantial Trade —
Supplants our Tapestries with His —
In half the period —
An Hour to rear supreme
His Continents of Light —
Then dangle from the Housewife's Broom —
His Boundaries — forgot —
《感想1》
詩人は、蜘蛛に感情移入しない。擬人化しない。自然の中の生命を、そのまま描く。その不思議さに驚く。神秘を感じ取る。
彼女には、蜘蛛が銀の玉を持つように見える。事実としては、蜘蛛は銀の玉を持たない。
だが次々と繰り出される銀の織り糸 の不思議。蜘蛛は、目に見えない銀の玉を持つ。
《感想2》
至高の光の大陸が、全くの無から生み出される神秘。
蜘蛛の尻の穴から糸は出る。化学的変化。だが、糸が存在しなかった限りでは、光り輝く糸は、まさしく無から生まれた。
そして光り輝く糸の光の王国は、壊されるだろう。無に帰る。「彼は無から無へと往復する」。
同時に、これは蜘蛛の動きの見え方の比喩でもある。見えない糸(無)の端から端へ、蜘蛛が移動する。
《感想2ー2》
蜘蛛の活動は、利益を求める商売でない。美を求める芸術の活動でもない。だが蜘蛛は、ひたすらに巣を編むついに至高の光の大陸が、誕生する。
《感想2ー3》
蜘蛛が巣を作るのは、餌となる虫を捕まえるため。この活動は、本能と呼ばれる。蜘蛛は何も考えず、ひたすら活動する。
自然のうちに神の目的があるのか、それはわからない。詩人は、素直に、全くの無から誕生する光の大陸に、驚く。
《感想3》
蜘蛛は1時間、勤勉に動き回り、至高の光の大陸を完成させる。
ところが、それはすぐに、主婦に発見され取り払われ壊される。当の蜘蛛が、箒にぶら下がる。
だが蜘蛛は悲しみも、落胆もしない。詩人は、蜘蛛を擬人化しない。
そもそも蜘蛛は、彼の光の大陸を自分が作り出したことさえ、記憶しない。
壊されれば、蜘蛛は、再び同じ活動を、精力的に淡々と繰り返す。
《感想3ー3》
至高の美的形象を、無から作り出すのに、その偉大さに気づかない創作者。
しかもその者は、その至高の美的形象が、直後に破壊され無に帰しても、それをすでに忘れてしまっている。そして、そのことに全く影響されず、嘆きもせず、落胆もせず、自分の利益のためでもなく、同じ至高の美的形象を、平穏に英雄的に再建する。
自然世界の謎!人間世界から解釈すれば、不可解な謎!
蜘蛛は銀の玉をかかえる
目に見えぬ手に──
そしてひとり軽やかに踊りながら
真珠の織り糸を──くり出す──
彼は無から無へと往復する──
稼ぎにならぬ商売に従事して──
わたしたちの壁掛けを自分のものに取りかえる──
あっという間に──
一時間で至高のものに至る
彼の光の大陸──
と思うと主婦の箒からぶら下がる──
自分の国境は──忘れている──
‘The Spider holds a Silver Ball’
The spider holds a Silver Ball
In unperceived Hands —
And dancing softly to Himself
His Yarn of Pearl — unwinds —
He plies from Nought to Nought —
In unsubstantial Trade —
Supplants our Tapestries with His —
In half the period —
An Hour to rear supreme
His Continents of Light —
Then dangle from the Housewife's Broom —
His Boundaries — forgot —
《感想1》
詩人は、蜘蛛に感情移入しない。擬人化しない。自然の中の生命を、そのまま描く。その不思議さに驚く。神秘を感じ取る。
彼女には、蜘蛛が銀の玉を持つように見える。事実としては、蜘蛛は銀の玉を持たない。
だが次々と繰り出される銀の織り糸 の不思議。蜘蛛は、目に見えない銀の玉を持つ。
《感想2》
至高の光の大陸が、全くの無から生み出される神秘。
蜘蛛の尻の穴から糸は出る。化学的変化。だが、糸が存在しなかった限りでは、光り輝く糸は、まさしく無から生まれた。
そして光り輝く糸の光の王国は、壊されるだろう。無に帰る。「彼は無から無へと往復する」。
同時に、これは蜘蛛の動きの見え方の比喩でもある。見えない糸(無)の端から端へ、蜘蛛が移動する。
《感想2ー2》
蜘蛛の活動は、利益を求める商売でない。美を求める芸術の活動でもない。だが蜘蛛は、ひたすらに巣を編むついに至高の光の大陸が、誕生する。
《感想2ー3》
蜘蛛が巣を作るのは、餌となる虫を捕まえるため。この活動は、本能と呼ばれる。蜘蛛は何も考えず、ひたすら活動する。
自然のうちに神の目的があるのか、それはわからない。詩人は、素直に、全くの無から誕生する光の大陸に、驚く。
《感想3》
蜘蛛は1時間、勤勉に動き回り、至高の光の大陸を完成させる。
ところが、それはすぐに、主婦に発見され取り払われ壊される。当の蜘蛛が、箒にぶら下がる。
だが蜘蛛は悲しみも、落胆もしない。詩人は、蜘蛛を擬人化しない。
そもそも蜘蛛は、彼の光の大陸を自分が作り出したことさえ、記憶しない。
壊されれば、蜘蛛は、再び同じ活動を、精力的に淡々と繰り返す。
《感想3ー3》
至高の美的形象を、無から作り出すのに、その偉大さに気づかない創作者。
しかもその者は、その至高の美的形象が、直後に破壊され無に帰しても、それをすでに忘れてしまっている。そして、そのことに全く影響されず、嘆きもせず、落胆もせず、自分の利益のためでもなく、同じ至高の美的形象を、平穏に英雄的に再建する。
自然世界の謎!人間世界から解釈すれば、不可解な謎!