全体の話じゃなくって恐縮ですが。
最後に滑った羽生選手の演技が、とても良かったです。
世界選手権の時、良いなと思い、
その後、アメリカ大会でのSPを見て、自分の好みではなくなったと思ってた選手だったので、(崩れたフリーの方じゃなく、世界最高得点と騒がれた方のが、個人的に、好みじゃなかった。)
今回、エキシビジョンで、以前に感じていた良さが戻っていて・・。心のこもった踊り、ってか、滑りで。こういう表現が、もう出来なくなってるのかと思ってた。
(4回転を2回もやる時に、こういう心に沁みる高度な表現を求めてるわけじゃないんだけど、こんな無心な感じじゃなくって、もっと安い気障なステージアーティストに、なっちゃったかな~?、と思ってたから。表現者って、かっこつけてて良い時もあるんだけど、望ましい表現じゃなくって、なんか中途半端なナルシズムに見えちゃってた。舞台アーティストって、自分に酔うとか、自信とか、自惚れ・ナルシズムも、多少必要な部分もあるんだけど、さじ加減が易しくないのよね。堂々として突き抜けたものがあれば、何でもオッケーなんだけど。
男って、女を口説く時には、かっこつけててもいいし、自分を大きく見せようとしてもいいんだけど、でも、一方で、本当にかっこいい人、とか、本当にかっこいい時、って言うのは、ことさらにかっこつけなくても、かっこよかったりする、っていう・・・ちょっと難しくなっちゃうけど。
今日の羽生選手は、かっこいいというより、マインド的にも素敵だな~と思って見入っちゃう感じ。宮城の観客に、この特別な日に何を見せるのか、きちんと準備してきてて、アイデアも思いも含めて、ちょっとさすがだな~と思ってしまいました。
ロミオの時は、かっこいい、の3乗位でした。人が、あんなにかっこよく在ることが出来る瞬間って、そうないのではないかと。)
(アメリカ大会で、大人っぽく成長した姿を見て、ああ、もう自分の好きだった羽生結弦の世界は終わったと思ってましたから。)
自分が、男性が自分の魅力をみせびらかす系の表現が苦手で、もっと無心に心から踊ってるとか、突き抜けたものがあるほうが好きなので。
それと、この人は音楽に乗って、こう動きたい、とか、こう踊りたい、という、ダンサーの生理に近いものが、元々ある人だと感じてたけど、このエキシビジョンで、それが数箇所見られて。
音楽を聴いて、心が感じるに従って、ポンッと跳んで廻ったりして、フリーハンドで滑ってるパートが、良かった。
今日は、な~んだ、やれば出来るじゃん、と思った。
世界選手権で最初に見たとき、衣装センスが良いのも目を引いたけど、今日は和装で、独創的な衣装。花びらを散らす配分のセンスとか、やっぱり洋装の時と変わらぬ良さ。
何より、今日、この日のためのプログラム。
エキシなのに、最後まで技術的にも手を抜かず、美しく舞うのも、気持ちの伝え方なんだろうなと思って。
色んな意味で、圧巻でした。考え抜かれた作品で、芸術性の高い表現でした。
この人は舞台センスもいいし、両性具有的というか、男性的なのも中性的な表現も両方やれる人みたいだけど、私自身があまり男臭いのが好きじゃないみたいで、SPのプログラムは苦手だったんだけど、逆にこのエキシでの表現がこなせるなら、表現の幅の広さとして、SPも違う目で見れそうです。
舞台に立つ人は、器になれることが大事だと、自分は思ってるので、小さくまとまらずに、色んなものを吸収して、これからも面白く変化していって欲しいと、一瞬、望みをもちました。
ちやほやしてくれる人も、辛口な観客も、色んな観客にこれからも出会うでしょうけど、どちらをも呑み込んで、必要なエネルギーを吸収して、大きくなってってくれたら、嬉しいかも。
今日は素敵な舞台をありがとう。