なぜブリュッセル郊外のゴルフ場にこんな豪華な人々が演奏をしにやってくるのだろう?Hulencourt Art Projectの演奏家には、ゴーティエのほかにも、前日聴いたティル・フェルナーやシュタットフェルトなどが名を連ねている。
仕事柄、知らないわけではないブリュッセル、しかもワーテルローの近く、ということに勇気付けられ、また月曜日朝一のユーロスターでロンドンに戻れば仕事にも間に合う、ということでパリ→ブリュッセル「即決・弾丸」演奏会ツアーの一環としてゴーティエ・カプソンのチェロを聴きに行った。
演奏会場はゴルフクラブの2階。150人程度の席が用意されている。流石ゴルフクラブ、上流階級の社交場という雰囲気もある。席はあらかじめ決められていて、最後の最後に滑り込んだ私の席はお世辞にも良いとはいえない。しかし、ロンドンから遙々、ということは伝わっていたようなので「私も楽器をやっているのでチェロの演奏が見えるところで聴きたい」と「そこを何とかボタン」を押してみると、これがゴーティエの斜め前のなかなか悪くない席に移動を許された。
もともと演奏会用には作られていない会場なので、流石のゴーティエの音も感銘を与える、というようには聴こえない。プロコフィエフでは最初のいくつかの音が安定しない。プロコの曲は楽しいから好きなのだけれど、どうということもない演奏に思われた。また、シューベルトのアルペジョーネも、上手いけれど、やっぱりヴァイオリンの音のほうが好き?なんてことを思う始末。
しかし後半になって、彼の調子が上がったのか、こちらの耳が慣れたのか、メンデルスゾーンのチェロソナタは特に音も出ていたし、ゴーティエも楽しそうに演奏していたように見受けられた。尤も、本人に、後半が良かった、といったら、あまり納得していないようではあったけれど。
会の運営を担当していたマリアも、送迎バスで知り合ったおば様2人も、ゴルフクラブのおじ様も、送迎バスの運転手さんも、みんなとても良い人たちだった。ちょっと不便ではあるけれど、また機会があれば是非訪れてみたいプロジェクトである。