本来は今日(土曜日)Londonへ引っ越すはずだったのに、金曜日の午後3時頃、引越し会社の担当者が怪我をしてしまったので日曜日に変更して欲しい旨連絡があった。「有り得ん!」と思ったものの、ごねてどうなるものでもないので受け入れた。
という訳で1日空きができた。朝、同じ住宅群に住む友人の家でコーヒーとケーキでおしゃべりした後、長い間to do listに残っていた「ベスん家」訪問を果たした。
「ベスん家」とは、もちろんWindsorで最も有名なWindsor Castleのことである。入場料はなんと14.2£(=3550円!!)。それでも、結構な数の人が雨がちのお天気の中訪れている。まずは城壁を巡り、本来は居城(the State Apartments)を拝見してからチャペル(St. George's Chapel)なのだけれど、今回は何となく道なりに先にチャペルを見学してから居城を訪れた。
Chapelを先に訪れた利点は、ガーター騎士団についての理解が深まったこと。見学中無料で借りられるオーディオガイドによれば、各騎士の紋章旗(バナー)が礼拝堂に掲げられている、ということだったが、この中に、なんと菊の御紋と思しきバナーを発見!え、もしや日本人が??と思ってその場にいたガイドのおじさんに尋ねてみると、昭和天皇が騎士団に名を連ねていたそうだ。彼の説明によれば、騎士が亡くなるとこれらのバナーや兜(?)などは、席の背に付けられたプレート以外は遺族が望めば返還され、遺族からの要望がなければ席からは外されてChapelの保管庫に移されるとのことだった。
この地位は世襲ではないので、平成天皇は騎士ではない、とおじさんは言っていたが、バナーも残っているし、おかしいなぁ、と思っていた。家に帰ってネットで調べると今上天皇も1998年に叙勲されているとのこと。しかし、「騎士」ってことはですよ、日本の天皇は英国女王の臣下ってこと??と勘繰ってしまうのは私だけかしらん?
さて、それはさておいて、居城訪問。小雨が時折降る中、15分程度待って入場。最初はQueen Mary's Doll's House。15分待って、豪華なリカちゃんハウス~??と思っていたら(それにしても立派なリカちゃんハウスだった。お宝鑑定団に出したら9桁だろうか、10桁行くのかな?)、勿論その後に居城が待っていました。
途中にまずはda Vinci、ミケランジェロの素描が!ベスん家には素晴らしいda Vinciコレクションがあるとは聞いていたけれど(ただ、展示されていたのは4、5点のみ)、ミケランジェロも。イタリア女性の体型って、本当にこうだったのかしらん。また、1800年代後半の晩餐会か何かの招待状だろうか。ベロアっぽい表紙のそれは、150年の時間を全く感じさせない、まるで昨日の夜の招待状のように素晴らしい状態で保存されていた。本物は時間を経てもあせることが無いのだろうか。
さらにその先には晩餐会にも用いられるという食器のセットの一部が飾られていて、オーディオガイドはイギリスの陶器を解説していた。確かに展示されているセットを製作するためにお金をかけすぎて会社が倒産した話は笑えないでもないけれど、どちらかと言えば、マイセン(これは刻印もあったので確かと思う)とかジノリっぽいセットとか、フランスからのロイヤルブルー(リモージュとは書いてなかったけれど)の食器とか、個人的にはそちらの方を解説してもらいたかったな。
The State Apartmentsは素晴らしかった。今も現役だからとは思うが、ヴェルサイユ宮殿の「がっかり」はない。全て非常によく手入れされている。絵画も素晴らしい。レンブラントの「ターバンを巻いた男」の肖像画の前では、また「これ欲しい」病が出てしまった。また中国風の家具や青磁と思しき壺も素晴らしかった。しかし食堂はヴェルサイユの鏡の間の勝ち、と言う感じ。この辺りは1992年の火災で焼けてしまって再建されたらしい。
また、武器や過去の戦争で功労のあった臣下たちの肖像画や胸像なども数多くあった。英国では王室と実際の政治(過去で言えば戦争)の距離が、他の国より近く感じる。それは過去を生き抜いた王室が今も現役でその役割を果たし続けているからでもあるのだろう。当時、功労を称えられ領地を与えられた臣下(ウィンストン・チャーチルを生んだマールバラ公爵家。領地とは世界遺産でもあるブレナム宮殿)は今も賃料を「旗」の形で払っていると言う。今年の賃料はフランス国旗とフランス王室の御紋(白地に金の百合の紋章)らしき旗であった。どういう意味があるのだろうか?
フランスでは王政や帝政は過去のものであり、日本の皇室も第二次世界大戦の後にその様相を大きく変えた。英国においても政治は政治家の仕事なのだろうが、それでも、日本のシステムに比べ英国では王室の政治への関わりが遥かに大きいと聞いたことがある。また、財政的理由によるところがあるとはいえ、実際の使用されている居城の一部を一般に公開するという姿勢も国民/世俗との距離感を縮めているのかもしれない。
デコレーションの趣味は私とは異なっていたけれど、良く手入れされたいいお家だった。いいなぁ、ベスん家。またいつか遊びに来たいな。今度は、押しかけじゃなくて、招待状が欲しいんだけど。その時は14.2£よりはもうちょっと良いお土産を持ってゆくからぁ。。。