墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 202

2006-12-24 23:55:41 | 

「嘘とも本当とも証明できないモノの真偽を問題にしても意味はない。
 この事から、目に見えないモノやさわれないモノの真偽を問題にしてもあまり意味はないという考え方が導かれる。
 ようは認めるか認めないかだ。
 九九を疑って何になる?
 音符を疑って何になる?
 文字を疑って何になる?
 時間を疑って何になる?
 認めるしかない。認めなきゃどうしようもない。
 本当の九九、本当の音符、本当の文字、本当の時間。そんなもんの存在を考えて、今あるモノは偽物かもと疑っても意味はない。誰もがそれはそういうもんだと認めているものを疑っても意味はない。
 そういう根本を疑ってたら、計算はできないし、楽器も弾けない、文字も読めない、時間も分からない。
 だから、強引かと思うかもしれないが、俺は目に見えないモノや手で触れないモノの真偽は問題としない。
 その人が『霊』や『神』がいると言うならいるんだろう。
 俺は無神論者だが、いる人にはいる。それでいい。
 ただ、問題にしたいのは、手で触れないモノ。目に見えないモノ。これらの真偽を問題にしても『意味がない』ということだ」


平成マシンガンズを読んで 201

2006-12-24 23:26:01 | 

 死神が言う。

「痛いとか痒い、寒いとか暑いとかの感覚を他人が嘘だと決めつける事は出来ない。
 どんな寒い冬の日であろうと、本人がノースリーブのシャツ一枚に短パンでガリガリ君をかじりながら『暑い!』と言うなら、ナニ言ってんだよアタマおかしいんじゃねーかと思っても、本人が言う『暑い』という言葉は否定できない。本人が暑いと言うなら暑いんだろうなぁと認めるしかない」

「まぁね」

「また、他人の気持ち。他人の感情も否定できない。
 好きとか嫌い、ウザイとかやる気ねぇとか本人がそう言うならそう思うしかない。
 本人が好きと言うなら、その相手が身の丈3メートルの化け物みたいな相手でも本人の好きだという気持ちは否定できない。また、本人が『やる気ない』と言うなら、やる気ねぇんだろうなと思うしかない」

「まぁね。本音はどう思っているかは知らないけど」

「なぜ、他人の感覚や感情は否定できないんだろう?」

「自分のものじゃないから、解んないから」

「他人の心の中にしか感覚や感情は存在しない。そして、感覚や感情は本人でさえ感じるだけで、誰にもさわれないし目にも見えない」

「うん」

「手でさわれない。
 目にも見えない。
 そんなモノの本当や嘘は誰にも証明できない。
 下手すると本人すら、存在そのものさえ証明できないかもしれない」

「まぁ」

「だから、逆に『本当』と人は言うのだ。
 感覚や感情は下手すると本人でさえ嘘とも本当とも分からないあやふやなもので、その事は誰もが無意識に知っている。
 ある人が痛がっているとする。
 でも、それを見ている自分が、他者である人の『痛い』という感覚を疑っては話も進まないし、嘘じゃないのなんて言ったら可哀想でもある。
 その人の言う『痛い』が、嘘か本当かは分からない。
 しかし、痛がっている他人に、痛さが嘘か本当か聞いても意味はない。『本当に痛いのか?』と聞く人もいるけど。
 他人の『痛い』と言う言葉を、そのとおりで嘘でなく痛そうだと認める気持ちが『本当に痛そう!』という言葉になるのだと思う。
 コレは、あなたの痛さを疑ってはいませんよという意思表示だ。
 ただの肯定であり、痛さが嘘か本当かは問題にしていない。
 また、他人が痛いと言う事を疑っても意味はない」

「うーん、まぁね」

「他人の痛さに嘘も本当もない。
 そもそも全く自分には嘘か本当か分からない。
 もちろん本人なら『痛い』と嘘をつける。
 その事においては『痛さ』に真偽があるとも言える。
 だが、『痛い』という他人の発言に対して、その『痛さ』は偽物であると証明する事はほぼ不可能だ。
 だから、『他人の痛さ』を嘘や本当だとか言っても意味はない。
 痛さは本人の自己申告であり、認めるか認めないかだ。
 それは、感情でも同じだ。
 好きだと言うなら好きなんだし、愛していると言うなら愛しているのだ」


平成マシンガンズを読んで 200

2006-12-24 16:08:57 | 

074  

 今回は連載200回を記念しての、特別企画です。

「こんにちは、木村みのりです」

「どうも、死神です」

 この2人でこの場所を訪れるのは2回目だ。
 時は2006年12月24日。
 物語に登場する架空のキャラクターでしかない私達は、またお約束を破り、閉塞した「2006年の夏」という時空間から抜け出して、現実と同じ時間の流れに身を置く。あの100回記念の時と同じように作者である protozoa の部屋を訪問するためだ。

「寒いねぇ。死神」

「寒いなぁ。舞台は、夏から急に冬だもんなぁ」

 ピンポーン!

 マンションの一室の前に立ち、インターフォンを押す。

「こんにちはー。木村みのりでーす!」

 ドアを開けて、作者の protozoa が顔を出した。

「おう、お前らか。ナニしにきた? まぁ上がれや」

 ドアを押し開け protozoa は部屋に私達を案内した。
 昼間だってのに、また布団が敷きっぱなしだ。死神はすぐに布団の上に腰を下ろした。私だけ帰るわけにもいかないので、今回は我慢して、布団の隅に座り込む。
 この部屋には電気ストーブ以外に暖房もないが、外よりは暖かいかな。とりあえず、私は作者の protozoa に質問してみた。

「今日は何をしていたんですか?」

「おふくろに頼まれて年賀状の印刷をしていた」

 もう24日だってのに、ずいぶん遅い年賀状の支度だ。
 年賀状は25日までに投函しないと郵便局に怒られるぞ。

「頼まれたけど、めんどくさいから『いやだ』と言ったんだ。でも、おふくろが千円くれると言うので引き受けた」

「千円につられてやったんですね?」

「あぁ。思い出すと、コンピュータを購入してから毎年のように年賀状作りをやらされている」

「年賀状作りは年末の定番ですものね。てか、年賀状作りにしかパソコンを使ってない人なんかもいたりして」

「まあね。でも俺は1度も年賀状作成ソフトを使った事がない。 なんかのオマケについていた年賀状作成ソフトを持っている事は持っているのだが、使い方がいまいち分からない。せっかくあるんだから今年は使ってみようかなとソフトを立ち上げてはみたが機能を理解するのがめんどうになって今年も使用をあきらめた」

「え、じゃーどうやって年賀状を作るんですか?」

「フォトショップって画像編集のソフトがあるんだよ。万能のソフトだ。ほぼなんでも出来る。宛名印刷は出来ないけど、10万円もしたんだぜ」

「ふーん。宛名はナシで、年賀状の内容だけ印刷するんですね。でも、10万円もするソフトで作ったなら、さぞ素晴らしい年賀状なんでしょうね!」

「コレが見本でプリントした今年の年賀状だ」

 ソレは字だけの年賀状。
 色すら使ってない。
 説明されない限り、誰も10万円もするソフトで作成した年賀状だとは夢にも思わないだろう。
 ちなみに死神は、protozoa とキャラがかぶってしまうので、さっきから発言をひかえている。

「す、素晴らしい年賀状ですね。どうやって作ったんですか?」

「今年も、いつもの手で年賀状を作成する事にした。 いつもの手とは、スキャナーでよそからきた去年の年賀状をスキャンして、そのスキャンした画像をフォトショップで住所と年だけを置き換えて一丁あがりという手だ」

「速攻で出来そうですね」

「最も苦労した点は、年数の書き換えだな。なにしろ去年の年賀状のコピーだから、年が去年の年数になっている」

「あー(そうですか)」

「住所は多少フォントが変わっても、その部分は丸ごとすげ替えるから問題ない。本文と住所が違うフォントでも不自然には見えない。だけど、年数はそこの1文字だけフォントが変わると明らかにおかしい。不自然に見えないように1字だけすげ変えるのが腕の見せ所だ!」

 自慢するほどの事じゃないけど。自慢したいんだろうな。

「うわー、それで?」

「年賀状の作成は30分ほどで終わった」

 だろうな。

「問題はこの先のプリントアウトにある。 どうも、俺はプリンターと相性がものすごく悪い。ぜんぜんイメージどおりに印刷できたためしがない」

「そうなんですか」

 あんたのイメージが変だからプリンターがイメージどおりにプリントできない可能性だってある。おっと、死神の口調がうつった。

「年賀状を何枚もプリントしなきゃならないから、何度もためし刷りをするんだけど、色が薄かったり位置が変だったりと、なかなか納得のいく印刷ができない。いろいろ試しているうちにプリンターはバグり、再起動したり強制終了したり。電源を入れたり切ったりしていると、今度は「インク切れです」のメッセージ。 あー、本当にプリンターは手間のかかる子だ!」

「そうですね」

「やっと納得のいく1枚がプリント出来た。 さっそく本番と思ったら、枚数設定が何故かできないんだ。 1枚ずつしか印刷できない。 何枚もいっぺんにプリントするという機能が使えないのだ。 いろいろ試したがどうしても1枚ずつしか印刷してくれない。ケチなプリンターだよ」

「ほほぅ」

「何十枚もの年賀状を1枚ずつなんてプリントしてられるか。 もう理由なんて分からないけど、きっとフォトショップとプリンターの相性が悪いのだと決めつけて、Mac に標準でついてる『プレビュー』という画像閲覧用のソフトからプリントしようとしたらまたプリンターがバグった」

「どうしてですか?」

「その理由は分からないが、たぶんフォトショップで保存した『jpg 形式』に問題があるのだろうと目星をつけて、フォトショップの『jpg 形式』の画像を『pdf』に変換してからプレビューでプリントを試すと、今度は上手くいった。枚数も設定できる」

「大変ですね」

「大変だよ。こうしてやっと、おふくろに年賀状を納品できた。朝の9時半から作業をはじめて、納品は昼の1時半すぎ。宛名のない年賀状のプリントに4時間近くかかった。その時間のほとんどはプリンターとの格闘時間」

「でも、お母さんは喜んでくれたんでしょう?」

「どうだか。だいたい、これで千円だよ。時給にしたらすごく安い仕事だ。時給250円だよ。 仮にも、時給800円でパン屋のバイトをして、1配達2500円で夕刊を配達するプロのフリーターの俺としてはだよ、なんとも情けない稼ぎだ。 もう、来年は頼まれてもやらない!」

「あー。で、今日は何の日だか知ってます?」

「知らん」

「知ってるくせにとぼける気ですね、聖者の誕生日の前夜祭ですよ」

「あぁ、天皇誕生日だろ」

「ソレは昨日! 今日はクリスマス・イブです!」

「ウォオオオ! ソレを俺に言うなぁ! せっかく忘れたフリをしていたのにぃ!!」

 protozoa は、しおしおのパーと塩をかけられたナメクジみたくとろけて消えてしまった。
 せっかく、1人で淋しい思いをしているであろう作者に、登場人物からの愛のプレゼントをあげようと思ったのに。
 死神が発言した。

「やっぱり、よけいなお世話だったのさ」

 悪い事をした。