墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 193

2006-12-19 20:22:23 | 

「例えば、あんたがズギャギャーと走って来て、とんがった石だらけの河原で足をもつらせてドギャンとこけたとする。
 突然の転倒だ。
 天地がひっくり返ったような感じがして大ショック!
 一呼吸おいて転んだショックから立ち直り、我が身に異常がないか確認してみると膝小僧がガンガン痛む。
 座り直して膝小僧を見る。
 鋭い石が思いきり膝小僧に突き刺さっている!
 大流血、ピューピューと傷口から血が流れはじめている。
 コレは痛いよな?」

「痛いよ!」

「そこに俺がやって来た」

「うん」

「『ウワッ、すげぇ怪我! こりゃマジ痛いべ。本当に痛そうだ。
 よし、消毒だ、ツバつけてやる!』
 なんて、俺が言ったとしたら、たぶんあんたは。
 『やめてツバなんてつけないで。ツバから死神がうつる!』
 ぐらいの事は意地悪だから言うだろうが、なんて言う?」

「冷静に『セクハラだからやめて下さい』と言う!」

「俺のツバはセクハラかよ。
 ところで、前に例に出した『こんなの本当の痛さでない』と言うのは、『痛さ』に誤った階級をつけた間違った言葉遣いだった。痛さに、偉いも偉くないもない。本人にとって痛いもんはただ痛い。
 では、今回の『本当に痛そう』は何か。
 ただの痛さの肯定だ。『うん、痛そう』と言っているだけに等しい。
 『嘘じゃなく本当に痛そうだね』と認めているだけだ。『うん』で済む言葉だ。あんたの痛さは嘘じゃないと肯定しているだけのセリフだ」


平成マシンガンズを読んで 192

2006-12-19 19:50:17 | 

「確かに、他人の痛みは感じられないから、本当に痛いのか痛くないのか誰にも解んない。
 でも、他人の痛さを証明できないから、痛さに本当も嘘もないと言うのは間違ってる気がする。
 だって、痛くないのに『痛い』と言えば明らかに嘘じゃん。
 他人には嘘だと証明できなくても、本人は嘘だと知っている。
 なら、本人にとっては痛いに本物も偽物もあるってコトじゃないの?」

「そうだな。言う通りだ」

「じゃー死神の言う事は間違いじゃん!」

「いやいや。
 言葉が足りなかっただけだ。
 痛さなどの感覚は本人にしか分からない。
 自分の痛みは他人には絶対に分からない。
 誰かが『痛い』と言うなら、その言葉が嘘か本当か他人には分からない。
 感覚は目に見えないし、簡単に器械で計れるモノでもない。
 本人が痛いと言うなら、ソレが嘘でも本当でも、こいつは『痛がっている』と認めるしかないのだ。
 他人の痛さは分からない。他人がどんなに痛くたって自分は痛くない。 
 痛さは伝染もしないし、通じ合う事もない。
 誰かが『痛い』と言って痛がってんなら痛いんだろうなぁと認めるしかない。
 自分の目の前で痛がっている他人に出来る事は、黙殺か容認のみだ。
 誰かが、まったく痛くもないのに痛がったとしても、他人にはその痛みが嘘か本当か分からない。
 痛いわけないじゃんと思っても、本人が痛いと言うなら、その痛さは嘘だろうとは言えない。
 痛さは本人じゃなきゃ嘘か本当かなんて証明できない。
 だから、本人以外の人間にとって『痛さ』は全くの自己申告で、申告の真偽は本人以外には証明しょうもない。
 嘘の痛さを嘘だと他人には証明できない。
 他人の訴える痛さを偽だと証明する事は不可能だ。
 確かに、痛いと嘘をつく事はできる。
 そして、その嘘は、嘘をついている本人以外の人間には、誰にも嘘だと否定できないタイプの嘘だ。
 嘘であることを証明できないなら、どんなに嘘に思えても嘘だと言い切る事は出来ない。
 嘘だと証明できない他人の痛みに、嘘も本当もない。
 もし、これが『痛い』ではなく、『今のお前の発言に俺は傷ついた!』というものならどうだろう。
 肉体的な事ではなく、心の事となると、もう確実に誰にも否定できない。
 本当は傷ついてもいないのに、お前に馬鹿にされているような気がして傷ついたと嘘を言えば、相手はソレを否定のしようもなくオロオロするだけだ。
 最も卑怯な嘘だな。
 こんな嘘を言うような奴とは縁を切った方がいい。
 本人が痛いと言うなら痛いと認めるしかないないのだ。
 嘘の痛さを嘘だと他人には証明できない。
 他人の訴える痛さは絶対に嘘だと証明できない。
 出来ないなら、偽物は存在しないのと一緒だ。
 偽物は偽だと証明できて偽になる。
 偽を証明できないなら、偽物は存在しないのと一緒だ。
 偽物が存在しないなら本物も存在しない。
 だから、『他人の痛さ』に本当も嘘もない。
 もちろん、あんたの言うように自分には本当の痛さや嘘の痛さがあるが、他人にはそんな事は分からない。
 あんたが痛いと言うなら他人は痛いんだなと認めるしかないのだ」