墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 167

2006-12-02 20:54:33 | 

「手術室で手術中の医師が『メス!』と言ったなら100人中100人の看護婦は『患部を切り裂くメス』を医師に手渡すはずだ。猫のメスを手渡したり、顔を赤らめそっと医師の手を握り『私もメスです』なんて言う看護婦はまずいない。
 建設現場で『ネコ持って来い!』と言われたら、誰でも一輪車の『ネコ車』を持ってくる。裏の河原で昼寝していた『猫』を持ってくる馬鹿はそうそういない。
 何故、こういう事が可能なのか?
 それは、その状況でその言葉を言われたなら、ある1つの意味しか持ちようがないと『意味の共有』がしっかり出来ているからだ。
 そして、それが正しい言葉遣いでもある。
 単語1つ1つは、けっこういろんな意味を指し示せるが、この状況だったらこの意味以外は絶対にあり得ないと、たった1つの意味だけを指し示せる事が、誰でも意味を理解できる条件だ。
 話される時の状況や、文脈によって、たった1つだけの意味を示せる事。その条件が満たされていないと単語の意味は正確に他人に伝えられない。日本語なら日本語という同じ言語で話している誰でもが、同じただ1つの意味だけで単語を理解する。単語には1つしか意味の持ちようがない状態。それが、本当に誰でも正しく理解できる言葉遣いだと言える」

「いくつもの概念を含む単語はあるでしょ。
 そういうのは伝わらないと言う事?」

「まぁ、即座には伝わらないよな。眠くなるし。
 でも、文脈が正しくて、国語辞典に載っている意味を逸脱していないなら、聞き手が努力すれば理解できる可能性はある。
 しかし、世の中には指し示す『意味』が崩壊している単語もある。いま話題にしている『個性』のようにね。なんとなくこんな感じってイメージだけは共有されているが、『意味』はとっくに崩壊している。こういう言葉はけっこう多い」


平成マシンガンズを読んで 166

2006-12-02 20:14:59 | 

「それはそうと、おかしいとは思わないか?
 同じ人間の『個性』を問題にしているのに、何故こんなにも自分と他人とでは『個性』のとらえ方が違ってしまうのだろうか?
 あんたは、自分の個性の良い所は『優しいこと』だと言う。だが、俺から見るとあんたの個性の良い所は『意地悪な洞察力』だ。まぁ、少しぐらいはあんたにも人の血がかよった優しい1面もあるのかもしれないが、俺の目から見るとあんたは『鬼の意地悪娘』以外のナニモノでもない!
 また、俺の個性の最大の美徳は、『たぐいまれなるギャグ・センス』である。なのに、あんたは俺のギャグは滑りまくっててつまんないと言い切った上に、なおかつあろうことかドコがギャグなのか分からないと言う。あんたは俺の個性なんて、せいぜいのとこ『人のあげ足取り』が良い所だと酷評する。
 ところで。
 ここまでの俺の発言には練りに練ったギャグが3つほど仕込んであったのだが気がついてもらえただろうか?」

「え?
 今のセリフのどこにギャグがあったの?」

「あったろうが、踏めば確実に炸裂する笑いの地雷がドッカンドッカンと!
 あぁ、なんでこう世の中の連中は俺のギャグが分かんねぇ奴ばっかなんだ。
 どこで笑っていいかも分からないなんて最低の馬鹿で、最低の馬以下だ!
 馬だって笑うって言うのに。
 よーし、なんだったら、指示しようか。笑う所を。
 俺が頭に手をこうやったら『笑う所』!」

「ソレって林家三平じゃんか!」

「おぉ、若いのに良く知ってる!
 偉いぞ!」

 死神はそう言いながら頭に手をやった。

「ココで笑えってか?」

「いや、コレは頭が痒いだけ。3日ばかり風呂に入ってないからな」

 ボリボリと頭を掻きむしる。

「入れよ風呂!」

「うーん、打てば響くような突っ込み。
 まぁ、そんなで、自分の『個性』の良いところ1つあげるにしてみても、自分と他人では意見が違ってしまう。
 そんなんで、本当に自分と他人が同じ『個性』を問題にして話しあっているのか不安にならないか。
 俺から見たあんたの個性も、あんたから見た俺の個性もまるで別物だ。
 2人は本当に同じ物をちゃんと同じ物だとして理解して会話できているのだろうか?」