「例えば、あんたがズギャギャーと走って来て、とんがった石だらけの河原で足をもつらせてドギャンとこけたとする。
突然の転倒だ。
天地がひっくり返ったような感じがして大ショック!
一呼吸おいて転んだショックから立ち直り、我が身に異常がないか確認してみると膝小僧がガンガン痛む。
座り直して膝小僧を見る。
鋭い石が思いきり膝小僧に突き刺さっている!
大流血、ピューピューと傷口から血が流れはじめている。
コレは痛いよな?」
「痛いよ!」
「そこに俺がやって来た」
「うん」
「『ウワッ、すげぇ怪我! こりゃマジ痛いべ。本当に痛そうだ。
よし、消毒だ、ツバつけてやる!』
なんて、俺が言ったとしたら、たぶんあんたは。
『やめてツバなんてつけないで。ツバから死神がうつる!』
ぐらいの事は意地悪だから言うだろうが、なんて言う?」
「冷静に『セクハラだからやめて下さい』と言う!」
「俺のツバはセクハラかよ。
ところで、前に例に出した『こんなの本当の痛さでない』と言うのは、『痛さ』に誤った階級をつけた間違った言葉遣いだった。痛さに、偉いも偉くないもない。本人にとって痛いもんはただ痛い。
では、今回の『本当に痛そう』は何か。
ただの痛さの肯定だ。『うん、痛そう』と言っているだけに等しい。
『嘘じゃなく本当に痛そうだね』と認めているだけだ。『うん』で済む言葉だ。あんたの痛さは嘘じゃないと肯定しているだけのセリフだ」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます