某とかやいひし世捨人の、「この世のほだし持たらぬ身に、ただ、空の名残のみぞ惜しき」と言ひしこそ、まことに、さも覚えぬべけれ。
<口語訳>
なにがしとかいう世捨て人の、「この世にほだし持たない身に、ただ、空のなごりのみが惜しい」と言ったことこそ、まことに、そのようにも覚えるはずだ。
<解説>
『某』(なにがし)
場所、物、人、などで具体的な事が不明な時に使われる言葉。
『世捨人』
出家して坊主になった人や、世間から隠れ住んでいる人。
『ほだし』
馬の足をしばる縄。また、罪人の手足をしばる縄。漢字で「絆」と書く。
『名残』
平仮名で「なごり」にすれば、現代語とほぼ同じ意味である。
『さも覚えぬべけれ』
「さも」は現代語の「さも」とほぼ同意義。「覚えぬ」は動詞「覚ゆ」の連体形、「覚ゆ」は現代語の「思う」に意味が近い。「べけれ」は推量の助動詞「べし」の已然形。「べし」は確信に近いなにかを感じた時にベシッと使われる。
<意訳>
名もない世捨て人が「この世に未練はないが、ただ、空のなごりだけが惜しい」と言ったそうだ。マジでそう思う。
<感想>
兼好法師は、「空のなごり」という言葉に共感したのだろう。だからこそ、この文章を書いた。でも、「空のなごり」ってなに?
昼間のうちにある程度、第二十段の見当をつけてから仕事に出かけた。
夕方、仕事帰りに空を見上げる。「空のなごりってなんだろう?」
今日はふりそでふらなかった。雲ばかりがモクモクとすがたかたちを変えながら空に浮かぶ。きれい。こんな中途半端なくもり空でも、空は時期も場所も選ばず、なによりもきれいだ。もしかして空に浮かぶ雲こそが、「空のなごり」か。
ポンと兼好法師に肩を叩かれる。
「地面ばかり見てないで、空を見上げてごらん」
そう、空を見上げる行為こそ。
「空のなごり」を探して空を見上げる事こそが「空のなごり」であったのだ。
ま、もちろんまったく違うかもしれないかもね。いわゆる俺の解釈だ。
原作 兼好法師
現代語訳 protozoa
参考図書
「徒然草」吉澤貞人 中道館
「絵本徒然草」橋本治 河出書房新書
「新訂 徒然草」西尾 実・安良岡康作校注 岩波文庫
「徒然草 全訳注」三木紀人 講談社学術文庫
<口語訳>
なにがしとかいう世捨て人の、「この世にほだし持たない身に、ただ、空のなごりのみが惜しい」と言ったことこそ、まことに、そのようにも覚えるはずだ。
<解説>
『某』(なにがし)
場所、物、人、などで具体的な事が不明な時に使われる言葉。
『世捨人』
出家して坊主になった人や、世間から隠れ住んでいる人。
『ほだし』
馬の足をしばる縄。また、罪人の手足をしばる縄。漢字で「絆」と書く。
『名残』
平仮名で「なごり」にすれば、現代語とほぼ同じ意味である。
『さも覚えぬべけれ』
「さも」は現代語の「さも」とほぼ同意義。「覚えぬ」は動詞「覚ゆ」の連体形、「覚ゆ」は現代語の「思う」に意味が近い。「べけれ」は推量の助動詞「べし」の已然形。「べし」は確信に近いなにかを感じた時にベシッと使われる。
<意訳>
名もない世捨て人が「この世に未練はないが、ただ、空のなごりだけが惜しい」と言ったそうだ。マジでそう思う。
<感想>
兼好法師は、「空のなごり」という言葉に共感したのだろう。だからこそ、この文章を書いた。でも、「空のなごり」ってなに?
昼間のうちにある程度、第二十段の見当をつけてから仕事に出かけた。
夕方、仕事帰りに空を見上げる。「空のなごりってなんだろう?」
今日はふりそでふらなかった。雲ばかりがモクモクとすがたかたちを変えながら空に浮かぶ。きれい。こんな中途半端なくもり空でも、空は時期も場所も選ばず、なによりもきれいだ。もしかして空に浮かぶ雲こそが、「空のなごり」か。
ポンと兼好法師に肩を叩かれる。
「地面ばかり見てないで、空を見上げてごらん」
そう、空を見上げる行為こそ。
「空のなごり」を探して空を見上げる事こそが「空のなごり」であったのだ。
ま、もちろんまったく違うかもしれないかもね。いわゆる俺の解釈だ。
原作 兼好法師
現代語訳 protozoa
参考図書
「徒然草」吉澤貞人 中道館
「絵本徒然草」橋本治 河出書房新書
「新訂 徒然草」西尾 実・安良岡康作校注 岩波文庫
「徒然草 全訳注」三木紀人 講談社学術文庫