世の人の心惑はす事、色欲には如かず。人の心は愚かなるものかな。
匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣装に薫物すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。久米の仙人の、もの洗ふ女の脛の白きを見て、通を失ひけんは、まことに、手足・はだへなどのきよらに、肥え、あぶらづきたらんは、他の色ならねば、さもあらんかし。
<口語訳>
世の人のこころ惑わす事、色欲には及ばず。人の心は愚かである。
匂いなどかりそめなのに、しばらく衣装に香をしたものと知りながら、なんとも言えぬ匂いに、必ずときめく。久米の仙人が、洗濯する女のふくらはぎの白さを見て、神通力を失ったことは、まことに、手足・肌が美しく、肥えており、あぶらののりようは、他の色ではない、そんな事もあるだろう。
<意訳>
人間を惑わすのは性欲である。人の心は愚かだ。
すれちがう女の匂いなど、香をたいて着物にしみ込ませたものにすぎないと知りながらも、なんとも言えない匂いに、ときめいてしまう。久米の仙人が、着物のすそをはだけて洗濯する女の白い足を見て、神通力を失ったのも、もっともな事だ、手足や肌がきれいで、肉付きがよくって、あぶらがのってると、他では例えようもない色気なのだ、だから久米の仙人も落ちた。
<感想>
あー。これってマジで古典なのか? たんなる馬鹿の戯れ言なんじゃないのか。
とすら思えるほどに兼好法師は、確実に若い。
でなきゃ、こんな文章は書けない。
兼好法師の目には、自分とおんなじ若い男以外は、人間として映ってないらしい。例えば、昨日の第七段でも、老人は見苦しいから年寄りになる前に早く死にたいと言っていた。今日は女は人を惑わす白い足だと言っている。見苦しい老人も男を惑わす女も自分と同じ人間であるという意識があまりみられない。
男を惑わすものは女である。それだけじゃ、まったくの一方通行だと思う。
原作 兼好法師
現代語訳 protozoa
参考図書
「徒然草」吉澤貞人 中道館
「絵本徒然草」橋本治 河出書房新書
「新訂 徒然草」西尾 実・安良岡康作校注 岩波文庫
匂ひなどは仮のものなるに、しばらく衣装に薫物すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。久米の仙人の、もの洗ふ女の脛の白きを見て、通を失ひけんは、まことに、手足・はだへなどのきよらに、肥え、あぶらづきたらんは、他の色ならねば、さもあらんかし。
<口語訳>
世の人のこころ惑わす事、色欲には及ばず。人の心は愚かである。
匂いなどかりそめなのに、しばらく衣装に香をしたものと知りながら、なんとも言えぬ匂いに、必ずときめく。久米の仙人が、洗濯する女のふくらはぎの白さを見て、神通力を失ったことは、まことに、手足・肌が美しく、肥えており、あぶらののりようは、他の色ではない、そんな事もあるだろう。
<意訳>
人間を惑わすのは性欲である。人の心は愚かだ。
すれちがう女の匂いなど、香をたいて着物にしみ込ませたものにすぎないと知りながらも、なんとも言えない匂いに、ときめいてしまう。久米の仙人が、着物のすそをはだけて洗濯する女の白い足を見て、神通力を失ったのも、もっともな事だ、手足や肌がきれいで、肉付きがよくって、あぶらがのってると、他では例えようもない色気なのだ、だから久米の仙人も落ちた。
<感想>
あー。これってマジで古典なのか? たんなる馬鹿の戯れ言なんじゃないのか。
とすら思えるほどに兼好法師は、確実に若い。
でなきゃ、こんな文章は書けない。
兼好法師の目には、自分とおんなじ若い男以外は、人間として映ってないらしい。例えば、昨日の第七段でも、老人は見苦しいから年寄りになる前に早く死にたいと言っていた。今日は女は人を惑わす白い足だと言っている。見苦しい老人も男を惑わす女も自分と同じ人間であるという意識があまりみられない。
男を惑わすものは女である。それだけじゃ、まったくの一方通行だと思う。
原作 兼好法師
現代語訳 protozoa
参考図書
「徒然草」吉澤貞人 中道館
「絵本徒然草」橋本治 河出書房新書
「新訂 徒然草」西尾 実・安良岡康作校注 岩波文庫