ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝第2戦浦和レッズvsヴィッセル神戸@埼スタ20160904 -いつかその日のために-

2016-09-05 22:14:10 | 加賀さん

今年もまた、ひと夏を越えて晩夏を迎えました。

おひさしぶりです。

甲府でお会いして以来、一か月ぶりの加賀さんです。

7月は甲府でしたので、埼スタでお会いするのは、5か月ぶり。

今年の夏の加賀さんは、近年にないくらい試合に名を連ねていました。昨年は6ヶ月間試合から遠ざかっていて、加賀さん本人のこころの内はわかりませんけど、外から見てて、レッズに来て一番苦しい時だった気がします。結局夏は一度もスコッド入りすることはありませんでした。

それどころか、怪我による離脱以外で、スコッド入りする可能性がほぼ皆無だった時期は、加賀さんのキャリアを通じても無かったことです。

そしてちょうど今頃、何があったかはわかりませんけど、吹っ切れた時期だったと記憶しています。9月にひさしぶりに大原でお話ししたときは、練習中も笑顔いっぱいですっかりレッズファミリーになじんでいました。

今年の夏は、7月23日以降、8試合で6回のスコッド入りです。航さんがオリンピックで、マッキーさんがワールドカップ予選で不在だったというスクランブルではあるのですけど、わたるん移籍以降は、DFが必要とされるシーンでの1stチョイスとして確実にポジションを得ているような気がします。

もちろん、プロサッカー選手である以上、試合の場、プレーで自己を表現できることが最も望ましいし、刹那的に見ればそれ以外に価値はありません。だから、レッズの一員として和やかな笑顔で過ごしているなかにも、個人としての悔しさが薄れているようなことはけしてないと思います。

いやむしろ、だからこそいっそう悔しいし、試合に出たいんじゃないかと思います。その意味では、とても充実した夏を過ごせたのかなと思います。

今日は、マッキーさんがワールドカップ予選に加え怪我をしてしまったことで離脱していて、準決勝第1戦に続いて公式戦2戦続けてのスコッド入りです。

第1戦で梅ちゃんが長期離脱を強いられることになった不幸な怪我のあとのスクランブルを加賀さんがしっかり封じていましたので、もしかするとスターターもあり得るかなと思って、ドキドキしながら埼スタに向かいました。

結局スターターではなかったのですけど、ひさしぶりにホーム埼スタにいる加賀さんを観ることができました。加賀さんはマルチロールなタイプではないので、右CBか右WB。もしくはミシャでは非常に稀ですけど2CBの右です。なのでモリさんのコンディションに問題がなければ右WBしかないのですけど、アウェイゴールルールによる大きなアドバンテージがありつつも、まだ安心できない状況でしたので、スターターは正直難しいなと思っていました。それに、今日の後は一週間空くので、レギュラーを休ませる理由もありませんから。

というわけで、ひたすら加賀さんを追うマッチデーとなりました。贅沢なことですけど、ほとんど試合は観ていません。申し訳ございません。結婚する前のウッチ―さんを追うファンの気持ちが少しだけわかりました(^^;。

試合前のアップのメニューは普段と一緒で、サブメンバーのグループワークの後は、バックスタンド側で軽めのダッシュを繰り返していました。その後は通常お散歩時間になってウロウロしてるのですけど、ここで異変が。なんと加賀さんがシュート練習をしていました。三本ほどミドルを蹴ってすべて外していましたけど、シュート練習をする加賀さんを東京時代も観た覚えがないので、ものすごい衝撃でした。もっとも東京時代は試合に出るとスターターが多かったので、CBにはシュート練習がメニューに無かっただけかもしれないけど。

秋商の1年生の時は快速FWでしたから、コントロールはともかくさすがにシュートにパンチ力があります。お散歩してて、慎三さんとただなりがはやめにシュート練習を終えたので、じゃあ俺もってノリで蹴ったんでしょうね。いつか、生で観たことがない加賀さんのゴールを観てみたいです。加賀さんファン一同で号泣必至。

ダッシュのアップをはじめる前、ちょっと目を離してる間に加賀さんがいなくなって、おや?と思っていたら、バックスタンド側の真ん中あたりでじーっと神戸の練習を観ていました。誰かを探している風だったので、もしかしたらマックスに会いたかったのかも。誰に会いたかったのか分からず仕舞だったのは、結局誰にも気づいてもらえず、さみしげにダッシュをはじめたからです。

通常、前半の30分くらいにサブメンバーのアップがゴール裏ではじまるのですけど、今日の前半はベンチ横で体操をした程度です。ちなみに後半もベンチ脇で軽めのアップだけでした。しかもコンディショニングトレーナーさんの指導もなく、各自が思いおもいにアップしてました。

ハーフタイムの鳥かごはメイン側でやってくれたので近くで観ることができました。加賀さんの動きに、なんとなくキレを感じました。コンディションの状態がとても良いのでしょう。動きの良さだけでなく、躍動感もありました。その点でも充実を感じました。試合に出たら、アウェイガンバ戦で魅せた安定感のある対人守備に加え、攻撃でもアクセントになりそうな気がしてなりません。

レッズの右CBは、モリさんをベストモデルとすると、個人で試合を作れる、現場レベルでの高度な作戦企画能力が求められます。これまでどちらかというとフィジカル面をプロとしてのストロングポイントとしてきた加賀さんですけど、吹スタの姿をTVで観てたら、良い意味ですごい違和感を覚えました。守備はもちろんのこと、右でボールを持ったときに何かをしようと考えている風情を感じました。ちょうどレッズに入って悩んだ期間を通過した直後のモリさんの姿がダブりました。今でこそ右サイドのコックスとして味わい深いプレーを見せるモリさんですけど、あの芸は一日にしてならず。雌伏の時のなかでも、加賀さんは日々成長をしているんだなと実感した試合でした。

もともとプレー中の立ち姿に落ち着きがあるタイプですけど、ガンバ戦は自信を感じました。レッズのなかでどうプレーしたら良いのかをしっかりと頭と体に沁み込ませることができているのでしょう。すっきりと立ってしっかり見ることができれば、攻撃面でのプレーの幅が広がるでしょう。攻撃の基点になる加賀さんなんてまさかと思っているけど、当たり前になる日が来るかもしれません。

後半のサブメンバーのアップでは、加賀さんが一番動いていました。たしかめるようにゆっくりダッシュを繰り返していました。ちなみに慎三さんと石原さんはストレッチだけでほとんど動いていなかったのですけど、そのまま試合に出て筋肉系は大丈夫なのか、ちょっと心配でした。

後半はサブメンバーがほとんどの時間、ベンチの外に出ていたので、レッズがゴールした時の様子を観ることができました。大騒ぎすることなく、ベンチメンバー全員わりと冷静でした(^^;。ゴレアーダということもあったのでしょう。

交代で戻ってきた選手を、サブメンバー全員笑顔で迎えます。

今日一番嬉しかったのは、加賀さんの意外な一面を観ることができたことです。慎三さんとただなりが交代を指名される直前、まだコーチから声がかかる前に、加賀さんがなにか声をかけていました。なんとなく口の動きの感じで、「出番じゃね?」的なことを言ってるような気がしました。実は、加賀さんには試合に流れを読むちからがあるのかしらとびっくりしました。レッズの交代はパターン化しているのですけど、ミシャが退場して堀さんがスクランブルで指揮を取っていたので普段と違っていました。それに慎三さんとただなりの出る順番まで当てていたのはすごいです。

もちろん自分の出番のためにしっかり準備するのが一番大事なのですけど、試合を読むちからがあるかどうかはともかく、期待がかかる仲間にさりげなく笑顔で声をかけることは、案外難しいことだと思います。加賀さんはとても話好きだし、ムードメーカーでもあるし、仲間からちょっと離れて観察するポジションも好きですから、つき過ぎず離れ過ぎずの絶妙なコミュニケーションレンジを取れる才能を持っているのかもしれません。

これは、もしかですけど、本当にもしもですけど、コーチに向いているのかもしれません。子ども好きの加賀さんですから、将来は育成スタッフが向いているのかと勝手に想像しているのですけど、ポイチさんのようなキャリアというか、育成部門でスタッフから監督の経験を積み、その先に。

結局、三人目に石原さんが呼ばれて、今日の加賀さんの出番はありませんでした。

ちょっとだけ試合について触れますね。レッズは周作とマッキーと航が代表で不在。梅ちゃんも長期離脱です。シフトはおなじみの3-4-2-1。GKは大谷。3CBは右からモリ、アニキ、ウガ。ボランチはキャプテンとカピ。WBは右に駒ちゃん左にタカ。2シャドウは右にトシ左にムトゥ。1トップはズィライオです。

神戸はペドロ・ジュニオールがサスペンションで不在。今日のシフトはレッズ対策なのか、スペシャルプランです。3-4-2-1。GKは徳重。3CBは右から岩波、伊野波、祥平。ボランチは藤田とニウトン。WBは右に峻希左に慶治朗。2シャドウは右に中坂左にマックス。1トップはレアンドロです。

今日は前半に趨勢がすべて凝縮されたハーフタイムマッチです。神戸が非常に良い入りかたをしました。レッズと神戸は、この一週間で3連戦です。さすがに三戦目ですから、互いに手の内は見えていたでしょう。ノエスタでの連戦は1勝1敗ずつで、スコアもレッズから見て1-2、2-1。三戦目は、決戦です。神戸はやはりレッズの攻撃を封じることに主眼を置いていた気がします。ポイントは前線の三人の処理です。神戸はレッズのアタッカーに対しマンマーク気味にDFを付けます。ズィライオには伊野波、トシには藤田、ムトゥにはニウトンがそれぞれ付きます。封じるべきはバイタルエリアの基点です。レッズのアタッカー三人がかわる変わるバイタルエリアに下りてくると、必ずマーカーが密着します。これでアタッカーに仕事をさせず、ゆえにレッズは基点を作れません。

そこでレッズは、サイドに基点を散らします。モリとウガを高めに位置取らせ、駒ちゃんとタカはなかに入ります。さらにボールサイドにカピが寄せます。こうして、サイドを基点にしてインサイドに攻撃ルートを作り、その上で前線を走らせるパターンに切り替えます。でも、ここまではネルシーニョさんの想定の範囲内だったようです。前線の三人を抑えれれると、レッズはWBのバイタルエリアでの仕事に活路を見出そうとします。そのためのサイド基点です。でも神戸は、駒ちゃんとタカに対し、対面のWBとサイドのCBがしっかりと付き、アタッキングサードでの自由を奪います。こうしてレッズはなかなかペナルティエリアに侵入できず、有効な攻撃を見せられなくなります。

変わって神戸の攻撃が威力を見せます。まず中盤での攻防で、ニウトンが存在感を見せます。神戸はフォアチェックからレッズにバックパスを選択させることで時間を作り、バックラインを高く保ったコンパクトな守備網を作ります。こうして中盤で支配力を発揮できる下地を作ります。網の中央にニウトンを置きます。レッズが中央を経由しようとすると、ことごとくニウトンがカットします。こうして高い位置でトランジションできるようになった神戸は、神戸らしくなく高速アタックを見せます。アタッカー三人が高い位置で基点を作って、WBを押し上げます。峻希と慶治朗が沸き上がるように攻撃参加します。サイドを征圧すると、中央にはレアンドロ、中坂、マックスに加えてニウトンも上がってきますので、人数をかけた迫力ある攻撃が展開します。非常に惜しむらくは、峻希がクロスバーに当てたシュートと、三度あったシュートチャンスで中坂がシュートを打てなかったことです。とくに中坂は、ペドロなら確実に仕留めていたレンジで、しかも十分にシュートを打てる時間があったなかでしたから、神戸にとっては悔やまれます。レッズは、完全に神戸の作戦にしてやられていましたから、フィニッシュまで決められていたら、今日の結果は違ったものになっていたかもしれません。

結果的にはゴレアーダになりましたけど、このように今日は薄氷の接戦でした。彼我を分けたのは約4分間の出来事です。39分の先制は、藤田のアタッキングサードでのロングスローのクリアから。こぼれ球をカピが拾ってルックアップ。前線のタカにメッセージを込めたロングフィードを送ります。まずこの視野とチャレンジが素晴らしかったです。タカが競り合いに粘ってフリック。がら空きのゴール前スペースに走り込んだのはトシだけでした。さらに43分。そのトシが峻希に倒されて得たPKをキャプテンがきっちり決めて2-0。

これで完全に神戸のゲームプランが崩れます。まず守るという前提が崩れて、前掛りにならざるを得ません。なので、作戦の最大の肝である、ズィライオ、トシ、ムトゥへのマークを外さざるを得ない状況になります。こうして、レッズにとっては美味しいカウンターのかたちを得られるようになります。後半は、前半とうってかわってオープンファイトになりますけど、勢いにのったトシがつくるレッズの流れに神戸は抗し切れませんでした。最後は、アニキがパンツにくっついた蝉をベンチに見せに来る余裕まで見せつけ、レッズがゴレアーダの快勝です。

出場機会がなかった日の試合後の挨拶は、ちょっとさみしげで厳しい表情を浮かべることが多い加賀さんでしたけど、今日はとても穏やかでした。笑顔はなかったけど、チームのルヴァンカップの次のステージへの進出にほっとした気持ちもあったのでしょう。もっとも加賀さんがルヴァンが何かを認識しているとは思えませんけど(^^;。

とは言え、やっぱり出場したいだろうし、ファンとしてもピッチに立つ姿を観たいです。そして。

ルヴァンカップ準決勝は、東京との対戦となりました。自分にとっては加賀さんダービーです。もちろんリーグ戦での対戦はあるけど、加賀さんがスコッドに入る可能性はあまり期待できないので、カップ戦こそチャンスです。しかも決勝進出を巡る決戦です。加賀さんにとっても、アミノバイタルを強奪するチャンスでもありますし、なによりかつての仲間としのぎ合う場が楽しくてしかたないと思います。ぜひ、絶対、スコッドに入ってほしいと思います。

口で言うのは簡単だけど、なかなかプレー機会がないなか、いつでも出場できる準備を整えることは、心身ともに難しいことだと思います。今日の姿を観て、その難しいタスクをしっかりとこなして、良いコンディションを作っている様子が伺えました。とても嬉しかったです。怪我で苦しんだ姿を長く見てきたので、元気な様子がなによりも嬉しいです。2016年の秋が充実した時間になりますように。そしてできれば、来るホーム味スタで加賀さんに再会できますように。


2016JリーグYBCルヴァンカップ準々決勝第2戦アビスパ福岡vsFC東京@レベスタ20160904

2016-09-05 21:26:21 | FC東京

毎週のように台風の話題が上がっているような気がします。10号が東北と北海道に甚大な被害をもたらした記憶が覚めぬうちに、12号が九州に迫りました。

12号は九州ど真ん中直撃ではなく西沿いを遠慮がちに進んだようで、我々的に心配したルヴァンカップ準々決勝第2戦は、予定通りにベアスタで開催です。

本日は加賀さんに会いにいったので、TV観戦記で失礼します。

今年の難敵、勝てていなかった福岡を撃破して、準決勝進出です。

東京はムリキが前の試合の怪我で今日はお休みです。シフトは不動の4-2-3-1。GKは秋元。CBは秀人とカズ。SBは室屋と徳永。今日のボランチは梶山と草民。WGは右に広貴左に翔哉。トップ下は慶悟。今日の1トップはインスです。

アドバンテージのある福岡はサイド重視のプランです。今日のシフトは4-1-4-1。GKはイ・ボムヨン。CBは濱田とキム・ヒョヌン。SBは右に今日は古部左に亀川。3CHは右から冨安、ダニルソン、末吉。WGは右に城後左に為田。1トップは金森です。

今日の試合のテーマは、東京と福岡で極端に分かれました。東京のテーマはおそらく二つ。粘り強く闘うことと試合をしっかり終えることです。一方の福岡のテーマは一つ。東京のサイドを止めること。このことから、東京が積極的に試合を支配しようとして臨んだのに対し、福岡が東京を受けようとしたことが伺えます。この彼我の取り組みスタンスの差が、極端に言うと結果を分けたと思います。いうなれば、東京の吹っ切れた積極性の勝利です。

東京のひとつ目のテーマは、これからのシーズンの闘いかた、さらにはその先にとって、とても重要なものだったと思います。粘り強く闘う局面は守備にあります。今日の東京は、献身的でとても粘り強いフォアチェックを、山谷はありましたけど結局最後まで徹底し続けました。途中交代で入った拳人、遼一、羽生も、スターターの想いを次いで、執拗にプレスを追い続けます。結局90分間プレーした慶悟に至っては、守備だけでなく攻撃面でもアタッキングエリアで献身的にスペースメイクをし続けていましたから、今日のキャプテンにふさわしい、試合を象徴する存在だったと思います。今日のMOMは間違いなく慶悟です。

東京がフォアチェックに臨んだ理由は、今年の対福岡戦の反省から来ていると思います。東京のオリジナルの守備プランはリトリートスタイルです。これは今も基本的には変わっていないと思います。でも福岡に対しては、リトリートするが故にポゼッションを許し、アタッキングサードでの積極的な仕掛けを誘引していたと思います。このことが、結果的に終盤戦での福岡の粘りを引き出していたと思います。

つまり、今日のふたつ目のテーマと相まって、東京は今年福岡にやられていたことをやり返す、大逆襲プランだったと言えると思います。もっとも、献身的なフォアチェックと口では簡単に言えますけど、なかなかできることではありません。まして、台風が迫る悪条件でしたから。現地にいなかったので気温と湿度の体感はわからなかったけど、前半は雨が時折強く降っていたようですから、足元を含め、けして良い条件だったとは言えないと思います。チームとして、結果への欲求が高まってきていると思います。

これは、近年、柏、ガンバ、鹿島が優勝したときのチーム状態に似ていると思います。能力の高い選手の集団は、サッカーの技術と知識の高さ故にプレーイメージを共有し辛い部分があると思います。それを一体化させるためには、高い目標か高い責任感が必要でしょう。東京はようやく、ホントにようやくその位置まで来たような気がして、まだはやいですけど、少し感動を覚えます。

ただし、守備に関しては福岡に満足な攻撃を許さず、及第点だと思いますけど、攻撃に関しては福岡の所期のゲームプランの前に封じられます。東京はオリジナルのプラン通り、当初はサイドを重視した作戦で臨みます。もはや言うまでもなく、篠田東京のサイドアタックの特長は、縦のパス交換で相手陣深くに侵入することです。福岡はこれを予防します。SBとWGにIHを加え、東京がWGを軸に二人ないし三人で連携する狙いに対し、スペースと人の両方を封じにかかります。このサイドの攻防は、あっさりと福岡がものにします。そして東京の攻撃は沈滞します。

福岡が3CHで臨んだ理由には、攻撃面の工夫もあると思います。ポイントはIHです。右の冨安と左の末吉は、プレースタイルこそまったく違えど、ともに攻撃力のあるMFです。冨安はサイズを活かしたゴリゴリした突破に加え足元の技術も高く、右サイド深くに入って基点になれます。なので、福岡の攻撃における真のポイントである、城後をゴール前でフリーにする命題に対するアプローチとして、冨安は効果的な解をもたらします。今日も存在感が希薄だった右サイドがもう少し攻撃で絡めていたら、より脅威だったと思います。

いっぽう末吉は、左サイドで躍動する為田と亀川のコントローラーです。末吉は中盤にあえてステイすることで基点となり、為田と亀川、さらには金森が作り出すスペースにスルーを送る役割です。東京のサイドアタックを封じた序盤の福岡は、冨安と末吉を軸にアタッキングサードに入り込みます。

ただし、ここから先の東京の守備陣は、前線同様に粘り強かったです。まずしっかりとゴール前のガードを固めます。ここに堅城を構えますので、福岡はなかなかペナルティエリアに入ることができません。最終盤で福岡が10分強東京を押し込みましたのでその間の数字はわかりませんでしたけど、それまでは福岡のショッツ・オン・ゴールは確かゼロだったと思います。福岡のスターターのシュート精度はペナルティエリア外ではそれほど高くないということなのでしょうか。東京はある程度遠目でシュートを打たせても問題ないという考えだったかもしれません。

15分を過ぎるころ、守備の安定を見た東京が攻撃をアジャストします。サイド偏重になっていたのをあらため、中盤でリズムを作るようになります。ポイントは広貴と翔哉です。まず翔哉が中盤中央に下りてくるようになります。翔哉は中盤全体を広範囲に円を描くように動いて、積極的にボールに絡むようになります。このことで、梶山と草民を加えたトライアングルが中盤にできるようになります。これが福岡のダニルソンを中心にした守備網に狂いをもたらします。中盤に下がる翔哉をフリーにすると東京にリズムが生まれます。さりとて翔哉について出ていくとバイタルエリアが空きます。福岡は対処の方法に戸惑ったように見えました。結果バイタルエリアのバランスが崩れます。

そこを今度は広貴が狙います。広貴は中央寄りの前線からバイタルエリアにタイミング良く降りてきます。そこにパスが出ます。こうして、左は翔哉経由、右は広貴基点のビルドアップのかたちが生まれます。ようやく東京のサイドアタックが機能しはじめます。

この東京のアジャストを成立させたのは、広貴と翔哉だけではありません。二人が作る基点に対し、慶悟がフォローで前後左右を広範囲に走り回ります。この慶悟のプレーがとても効果的でした。広貴、翔哉、慶悟とつないで、室屋と徳永に送る流れ、あるいはインスを走らせるかたちが作られます。

でも惜しむらくは、今日のスターターアタッカーのシュートパターンは限られるため、なかなかシュートに結びつきません。今日の主たるシューターは翔哉とインスです。翔哉は左サイドのペナルティエリアやや外側のいわゆる翔哉ゾーンからのミドルショットのかたちです。インスはペナルティエリア内での飛び出しに合わせるかたちです。シューターの翔哉自身が中盤でチャンスメークを担うのは、もしかしたら東京の本意ではなかったのかもしれません。こうして東京が流れをつかみながらもフィニッシュに持ち込めないジリジリした展開になります。その重苦しい空気を切り裂く先制ゴールが生まれます。

30分。室屋のクロスを城後がクリア。これが短く、梶山がアタッキングサード中央で拾います。梶山はボールを納める前に末吉が寄せてくるのを感じ、胸で落としてそのまま右にいた草民に渡します。室屋のクロスからの連続だったので、福岡はほぼ全員ペナルティエリア内にいて、草民はどフリー。草民はパスを右足で受けて時計回りにターン。前を向いてワントラップしてルックアップ。ゴールを確認して、やおら右足を振り抜きます。これがゴール右隅に決まりました。ゴラッソ。福岡0-1東京。

アウェイゴールビハインドがひとまず消えました。逆に東京がアドバンテージを持ちます。立場が真逆になりましたけど、東京はやりかたを変えません。先制するとリトリートするのがこれまでの東京でしたけど、今日は献身的な前からの守備をそのまま継続します。これまでモード変換の繊細なタイミングを狙わることが多かったので、結果がすべてな今日だからこそ、何があっても走り抜こうという強い意思がチームに芽生えたのだと思います。前半はリードのまま終了。

後半も東京はプランを変えません。相変わらずアタッカーが率先して走り回ります。これは二次的な効果ももたらしていた気がします。第1戦ではカズと秀人が、秋元を含めてパスを回すところを狙われていました。後ろが安定しないと前もリスクを取れません。今日は後ろを安定させるというよりかは、前線が守備を引っ張ることで、後方の不安を消すことができていたと思います。この点でも、今日はチーム力の勝利だと思います。

ただし、まだリードは最小得点差です。なんとなくこのままでは終わらないような気がしました。そして、井原さんにはチェンジモードの切り札が残っています。7月のリーグ戦で機能していた邦本と、水曜日の試合で起死回生の同点ゴールを上げた三島です。邦本は前線で広範囲にスペースメイクしますので、終盤に疲労が来た東京守備陣に効きそうです。それ以上に、福岡に欠けているミドルシュートを打てる三島は、スプリンターの坂田や運動量のある邦本のスペースメイク力に補完されるととても脅威です。そして、井原さんが最終攻撃モードを起動します。末吉に代えて坂田を投入します。同時にシフトを4-4-2に変更します。坂田は金森と2トップ。為田が左メイヤです。

これを受け、篠田さんが動きます。広貴に代えて拳人を投入します。東京もシフトを4-4-2に変更します。翔哉がトップに上がります。慶悟が右拳人が左のメイヤに入ります。まずは前半から献身的に走り回っていた広貴のコンディションを考慮したのでしょう。さらにマッチアップを明確にすることで、シンプルな守備網を作る意図だと思います。まず坂田単独での機能を防ぐことに成功します。

篠田さんが続けます。インスに代えて遼一を投入します。これもインスのコンディションを考慮したのだと思います。加えて、WGを使った基点ができなくなったので、前線での基点をFWに託す意図もあると思います。さらに、終盤戦でカウンターモードに入ることとセットプレーの可能性を考慮したのでしょう。そして直後に、東京の勝利をぐっと引き寄せるセットプレーのチャンスが訪れます。

75分。東京の献身的なフォアチェックから。慶悟がダニルソンに倒されて得た慶悟自身の右FKは、ペナルティエリア角の3mほど外側です。福岡はゾーンとマンマークのハイブリッドです。壁は二枚。ストーンはヒョヌンの一枚。東京はファア側に塊を作るパターン。ニアから梶山、遼一、カズ、拳人。大外に秀人です。やや離れてニアに翔哉ファアに草民がフォローします。慶悟の動き出しと同時に梶山以外の四人がゴールに向かって飛び込みます。慶悟のクロスは、マンマークの塊とボムヨンの間を縫ってファアに届く、フック気味のコントロールショットです。慶悟はさらに、ボムヨンの手前でワンバウンドさせます。ファアに届いたクロスは、マーカーの冨安を振り切って、執念を込めて飛び込んだ秀人の頭に合いました。福岡0-2東京。

このプレーの前から交代を用意していた井原さんが直後に動きます。城後に代えて三島を同じく右メイヤに投入します。ミドルシューターを加える意図ですけど、正直遅きに失した感があったでしょう。この時間帯を井原さんが重要な局面と考えていた証拠ですから、まさに決定的なゴールでした。

井原さんが一気に続けます。金森に代えて邦本を同じくトップに投入します。もうタイミングなんてはかってられないので、つぎ込めるものはガンガンいくというところでしょう。

ここにおいても東京は前線からの献身的な守備を続けていました。まったく頭が下がります。そして、篠田さんがいよいよ動きます。今日のふたつ目のテーマ、試合をしっかり終えるべく最終モードを発動する時間になりました。篠田さんは、翔哉に代えて羽生を投入します。同時にシフトを5-4-1に変更します。第1戦は、リードした最終盤で5バックにすることができなかったことが反省のひとつだったのでしょう。拳人が左WBに回ります。羽生は左メイヤ。1トップは遼一です。

遼一はそれでも守備に走り回ります。ホントに今日は徹底していました。それでもここからの10分間は、5+4の守備網を維持します。このことで、坂田と邦本にスペースメイクを許さず、さらには三島にミドルショットを打つ機会を無くさせます。長いながい耐える時間でしたけど、このまま試合終了。福岡0-2東京。

ついに福岡を撃破できました。しかも単なる勝利ではなく、ルヴァンカップベスト4進出を掴みとった価値ある勝利です。それも大切ですけど、なにより嬉しいのはチームがひとつになる努力がようやく実を結びつつあることを実感できたことです。モリゲとまるが不在というスクランブルに加えて、第1戦でビハインドを追った後がない状況がチームに勇気を与えてくれたような気がします。台風が迫るなか、現地まで東京に勇気を届けに行き、がんばる選手を支えてくれた現地組のサポの皆さまにもこころからの感謝を贈りたいです。ありがとうございました。

チームに良い流れが来そうです。そして準決勝の相手は浦和に決まりました。過去、激闘を繰り返した間であるうえ、決勝をかけたノックアウトというシチュエーションは、きっと選手、スタッフ、サポを熱くしてくれるでしょう。楽しみです。やるべきことは、ひと試合ひと勝利。