ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2015J2リーグ第28節ツエーゲン金沢vsアビスパ福岡@石川県西部緑地公園20150808

2015-08-09 20:33:13 | サッカー

区切り、というものはあってはならないでしょう。ただ転換点は、時間の経過とともにいくつもやるかたなくやってきます。

あの年以来続けてきた、復興の様子を確認する東北の夏旅は、4年目にして中断です。自分が旅する理由はサッカーと朝ドラと大河です。サッカーは今年は仙台に加えて山形がJ1にいてくれますから口実は二つに増えたのですけど、あろうことかGWに集中してしまいました。朝ドラと大河もともに東北にゆかりがなく。というのがやるかたない理由です。

前置きが長くなりましたけど、いつも長いんですけど、というわけで今年の夏は北陸をめぐります。

羽田から空路小松に来るのが今旅の最西端で、これを起点として北東に向かう、ぶらり日本海の旅です。東京→小松→金沢→長野→輪島→新潟→東京。

初日の今日は、今年二度目の金沢。前回もツエーゲンが大分を迎えるホームマッチがあったのですけど、輪島に行ったので観られませんでした。なので今回はサッカーがメインです。

金沢駅東口からバスに乗りましたら、ちょうど金沢ゆめ街道で百万石通りが封鎖されていて、通常の3倍以上の1時間半ほどかかって、キックオフギリギリに着きましたは、はじめての石川県西部緑地公園。言わずもがな、ツエーゲンの聖地です。

本日は、福岡がわざわざの遠征です。そう言えば鳥栖戦を観に行った時、福岡開催の金沢戦が日曜日にあって、ツエーゲンサポさんを博多駅で見かけました。今日は香林坊でアビスパサポさんです。

ゲンゾーのパフォーマンス

正直言えば、予想外にしっかりとサッカーを志す両チームに感動し、試合を楽しめました。互いに詰めの甘さを見せ合う形になった試合は、こちらは予想通り、セットプレーの差で福岡がものにしました。

金沢は、その6月21日の福岡戦以来勝ちが無く、その間6分2敗です。シフトは変わりませんけど布陣を試行錯誤中のようです。水戸戦で太田と廣井が負傷し長期離脱です。シフトは4-2-3-1。GKは原田。CBは今日は作田とチャ・ヨンファンが組みます。SBは右に辻尾左に紘史。ボランチは秋葉と山藤。メイヤは右に玉城左に茂木。トップ下に清原。1トップは水永です。

福岡はその間2勝5分1敗。負けない安定感がついてきているようです。シフトは3-4-2-1。GKは中村。CBは右からイ・グァンソン、堤、田村。ボランチは淳と秀人。WBは右に北斗左に亀川。2シャドウは右に城後左に金森。1トップはウェリントンです。

ここ数年の昇格あるいは昇格争いに絡むチームは、判で押したように似たようなスタイルを取ります。言わば昇格モデル。厳しいフォアチェックを基礎として、連動性の高いコレクティブな攻撃を旨とします。J2では、とくに守備側のスピードとパワーの問題でこの攻撃が機能しますから、躍動感があって観ていて楽しいです。ただ、やっぱりゴールに直結する絶対的なプレーがあるわけではないので、得てしてつぶしあいになり勝ちです。上位のチームは戦力が拮抗してますから、余計この傾向が強いように感じます。リーグ5位と6位の、昇格レースの生き残りをかけた試合ですから、ガチの守り合いを予想しました。

ところが今日の西部緑地で展開した試合は、理念を感じるとてもモダンなサッカーでした。ちょっと驚きました。

金沢は、まったくと言っていいほどフォアチェックをしません。4+4+2のスリーラインをコンパクトに保ちます。この守備網をハーフウェイから10mくらいの距離以内に敷きます。福岡の起点に入っても、それが中央でもサイドでも、仕掛けません。なので、必然的にトランジションポイントは低めになります。と言っても、守備網を維持してますから、ディフェンシブサードにかかる手前で最終ラインに引っ掛けるイメージです。

この守りかたは癖があります。守備網をコンパクトにしボールサイドに寄せますから、サイドにスペースができやすくなります。福岡は、これを見越していたかもしれません。

福岡は相手に応じてシフトを変えるようです。基本は4-4-2のようですけど、福岡での対戦でも3バックで臨んでいました。今日も3バック。これはつまり、金沢の癖をつくプランでしょう。とくに狙うのが左サイドです。辻尾を狙うというよりかは、亀川を活かす意図だと思います。

金沢と福岡は、順位こそ拮抗していますけど、チーム作りのコンセプトはまったく異なると思います。金沢は現有編成で最大の成果を得ようという考えかたでしょう。なので、攻守ともに連動性にプライオリティーを置いていると思います。

福岡は、金沢に比べると編成力が高いです。個の力で状況を打開できるタレントを持った攻撃の選手が割合揃っています。なので、チームのストロングポイントの設定が明解です。この両チームのキャラクターの差異が、闘いかたによく現れています。金沢は中盤の構成力。福岡は亀川とウェリントン。

序盤のロングボールの蹴り合いでの様子見から、先に仕掛けたのは金沢です。5分を過ぎると、中盤がダイナミックにムービングしはじめます。確認した限りでは、ポジション別に約束事があります。コレクティブネス所以ですね。ボランチは役割を固定せず分担します。どちらかが上がる場合は、一方がアンカーとして残ります。むしろボランチの片方が積極的に攻撃に絡むのが特長のひとつです。秋葉の安定感は山形時代に見ているので、変わらずの元気そうな様子に安心しました。山藤の充実にびっくりしました。金沢は、中盤からの長い展開をあまり見せません。なのでパスさばきは、基本的にショートパスの受け渡しです。山藤も秋葉も、細かいポジション修正で攻撃時のひとりアンカーを違和感なくこなします。加えて山藤は、中盤でのトランジションポイントになってました。寄せとボールを奪う技術が高いのでしょう。しかもJ2に有りがちな、ラフなコンタクトではなく、エレガントなんです。金沢のチーム全般に清々しさを感じるのは、中盤の個の守備の巧みさに由来してるのかなと思います。

メイヤは二人とも内に絞ります。これは、メイヤ自身がバイタルエリアで基点になることと、SBのためのスペースを空ける意図だと思います。茂木のプレーが心地よかったです。小気味良いドリブルは、寄せてくる相手をドリブルしながら振り切るほど、小柄なのに直線的で、スピードにあふれてました。受けてもバイタルエリアでターンする余裕があります。良い経験を積めてるみたいですね。

さらに清原が下りてきて、バイタルエリア中央に3枚の基点のオプションができます。この3枚のダイナミックな役割分担が、金沢の攻撃の最大の特長でしょう。実際に基点になるのはひとりだけで、誰かが良いポジショニングができたと分かると、ひとりはフォローと前線へのアタック、もうひとりはバランスを確保します。基本的にバイタルエリアでは、細かいポジション修正で、守備網の小さな穴を狙います。この動きは、昇格モデルに特長的ですね。言わば金沢のサッカーは、個性と流行りのハイブリッドですね。

中盤で基点を作る理由は、アタッキングサードでのサイドアタックを有効にするためです。金沢は辻尾と紘史という優れたクロッサーがいますから、この二人を裏に走らせることが主題なんだと思います。

ただ、福岡の対策はぬかりがありません。5バックにしてサイドをワイドにケアします。中央のゾーンは金沢に上手く処理されても、ある程度は構わないという割り切りでしょう。フィニッシュの手前のチャンスを消すことと、最終的には、ゴール前中央に3枚置きフィニッシュを抑えること。

金沢の攻撃は、組織的な機能美があります。ただ、ゴールを想起させる流れが、肝心のアタッキングサードに入ってからありません。これは、主たるシューターがいないためだと思います。切ないことではありますけど、だからこその金沢の選択は、とてもリスペクトできると思いますし、実際観てて楽しいですから、これで良いと思います。

福岡は、序盤からのウェリントンへのロングフィード時間をかなり長くとりました。基本的にはフルゾーンの金沢ですけど、ウェリントンに限ってはヨンファンを貼り付けます。ウェリントンは空中戦で負け続けます。もしかしたらこれは、福岡の罠だったかもしれません。ウェリントンだけをあえて晒して、金沢に中央の高さへの意識を刷り込む意図かもしれません。

少し触れましたけど、福岡の攻撃は、亀川がすべてです。とにかく亀川に良い形でボールを渡すこと。これに集中します。そのための形を整えます。中盤は惇がひとりアンカーで残ります。惇のパスを散らす展開力が、福岡の攻撃を形作る原動力です。この辺りもアンカーを分担する金沢と違いが明確でおもしろいですね。言い換えると、惇を抑えに行ったらもしかすると福岡の攻撃は機能不全かもしれません。金沢が惇を狙わなかった理由はわかりませんでした。

福岡は、惇を文字通り扇の要にする陣形をとります。秀人が惇の前をワイドに動いてフォローします。前方は城後がバイタルエリアに下がって基点に備えます。右は北斗が惇のやや前に出ています。北斗は絶妙なポジショニングでバランスを取ってます。紘史との距離感を保ち、金沢に北斗サイドを意識させます。ゴール前はウェリントンが真ん中にいて、金森がフォローします。そうして全体をやや右に寄せて、いよいよ亀川です。

亀川は別格ですね。サイズもスピードもあるし、少なくとも攻撃のアプローチでは、確実にストロングポイント足り得ます。福岡は、事実上亀川システムですね。北斗が北斗をしてバランサーに甘んじてるのは、ひとえに亀川がいるからだと思います。課題はアタッキングサードに入ってから。亀川はドリブラーのようですので、フィニッシュの絡みは抉ってからのマイナスのクロス、もしくはカットインからのシュートです。たぶん左利きでしょうから、違いを生むためには右足のシュート力をつけたいですね。フィニッシュに絡めるかどうかがJ1クラスか否かを分けますから、とてもおもしろい存在なのでがんばってほしいです。

金沢にしろ福岡にしろ、攻撃の組み立てはモダンで洗練されています。課題は同じ。アタッキングサードに入ってからのクオリティです。残念ながら、ともに絶対的な結果を残せるシューターがいません。とくに金沢は、やっているサッカーが興味深いだけに、わかり易さのためにはゴールが必要ですから、とても残念です。ともにゴール前のワクワク感を感じられず、これはセットプレーかなぁと思ってました。

互いに意図を見せ合う好マッチになりました。前半はスコアレスのまま終了。

前半は金沢のコレクティブなサッカーが勝っていましたけど、後半は一変します。ウェリントンの罠が効いたのか、蒸し暑さのせいか、ヨンファンのマーキングが緩くなります。加えてウェリントンがポストの時に少し下りはじめました。これでウェリントンが足元でポストを受けられるようになります。ウェリントンの真の強みは足元なのでしょう。これで福岡の攻撃が安定します。結果的にシュート数で福岡が金沢の倍近くをスコアしたことが、試合全体を見ると福岡優勢だったことを表しています。

そこで、先に森下さんが動きます。玉城に代えて和弘をトップ下に投入します。清原を右メイヤに移します。ボールを収められる和弘を据え、ドリブルのある清原を中盤に置くことで、ポゼッションを回復しようという意図だと思います。これで金沢の中盤の構成力が蘇ります。この時間帯で、水永がCBの裏を再三狙えるようになります。振り返ると、金沢の勝機はこの時間帯だったと思います。悔やまれるのは、秋葉からのロングスルーを水永が決めていれば、試合結果は間逆だったでしょう。

さて井原さんも動きます。金森に代えて坂田を同じ左シャドウに投入します。井原さんは内容的に良しと見たのでしょう。闘いかたを変えず、コンディションを向上します。

さらに井原さんが動きます。城後に代えて宣福を左シャドウに投入します。坂田を右に移します。城後は前半からフル稼動で走り回ってました。これもコンディションの考慮でしょう。

森下さんが動きます。井原さんの安定策で金沢の攻勢が止まりました。さらなる打開策でしょう。水永に代えて大町を同じトップに投入します。水永は惜しい動きを見せていたので、コンディションでしょうね。残しても良かったと思いました。

将棋や囲碁だと、森下さんが終始攻め手井原さんが受け手です。この指揮官の攻防もとっても面白かったです。ただやっぱり流れのなかで崩し切るクオリティは得られません。ドロー止む無しかなぁと思っていたら、試合が動いたのはやっぱりセットプレーでした。

81分。右CKを原田がクリアしたボールを、ファアにいた田村がダイレクトでシュートしますけど、これも原田がクリア。ゴールライン際に溢れるボールに田村が反応し、マイナスのクロスを折り返します。この時金沢は、ゴールエリアに7枚のストーンがいましたけど、ゾーンの難点で、全員がボールウォッチャーになってて、そのど真ん中にいたウェリントンを誰もケアしていませんでした。田村のクロスはウェリントンにぴったり合いました。金沢0-1福岡。

すぐ後に井原さんが動きます。ウェリントンに代えて貴之を同じトップに投入します。井原さんは1点勝負と見たのでしょう。すべてのカードがコンディションの考慮だと思います。今日の出来は、井原さんは手ごたえをつかんだかもしれませんね。

同時に森下さんが動きます。清原に代えて大槻を同じ右メイヤに投入します。アグレッシブなカードの使い方をしていた森下さんですけど、リードされてからの余裕を持ち合わせていないようです。おもしろいサッカーをするのに、編成の都合でやむなしとは言え、切ないなと思いました。

福岡が引きこもらず前への推進力を失わなかったので、金沢の攻勢はギアを上げられないまま時間が経過します。結局このまま試合終了。金沢0-1福岡。

博多へ帰ろう♪

玄人好みする内容でした。興味があったのは、金沢サポさんのサッカー感です。どんなところに反応するのか。星稜高校というランドマークが県内にはありますけど、プロレベルの経験が、どのスポーツでも金沢にはありません。ましてサッカーでは、国内最高峰のクオリティを目にしてないわけですから、ツエーゲンが基準になってしまう、つまり欲がわかない可能性は否めないと思ってました。実際にJ1を経験してもドメスティックに留まるサポさんが多いクラブが結構ありますから。金沢サポさんはサッカーを純粋に楽しんでらっしゃいます。上から目線みたいでごめんなさい。サッカーをよくわかってらっしゃるかたが多いと思いました。頼もしいことに、金沢には独自のツエーゲン文化が芽吹く素地があるように感じました。J2であってもカルチャーショックは感じ得ると思います。ツエーゲンのツエーゲンたるサッカーを作るのは、実はサポさん自身のサッカー感です。どうか金沢の地に、他にないツエーゲンサッカーを作る意思を持ち続けて欲しいと思います。まずは、とってもおもしろいサッカーをやってますから、もっと多くのかたにツエーゲンを認知して応援しに来て貰えるといいなと思います。

うがった見方かもしれませんけど、金沢にはチームもサポも浮ついた感はまったくありませんでした。サッカーの内容を見ても、どうしても昇格したいという考えではない、つまり未来を見据えた地に足がついた、金沢にツエーゲンのサッカーを作ろうという強い意思が感じられました。いつの日か、東京の対戦相手として金沢に来たいと思います。