ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

はやぶさ 遥かなる帰還

2012-02-12 22:39:07 | 映画

かすかに春の匂いがしてきましたね。もうすぐそばまで来てますよ。

はやぶさを観ました。はやぶさ/HAYABUSA(堤幸彦監督作品)に続き、はやぶさ三作のふたつめ。瀧本智行監督の作品です。ていうか、渡辺謙のはやぶさ。

感動しましたー!。途中、映画を観てることを忘れてしまうくらい、入り込んでしまいました。ひさしぶりに映画で泣きました。やっぱりロストしたはやぶさが見つかるシーンと、帰還するシーンは涙が出ます。帰還するシーンは、マジで涙でちゃんと見れませんでした。

ベースになるはやぶさの物語はご存知のとおり。幾多の困難にもかかわらず、地球に帰還したはやぶさと、プロジェクトに携わった人々の苦労の物語です。

どうしても、はやぶさ/HAYABUSAと比較してしまいます。どちらが良いというわけでなく、両方とも素晴らしいです。両方とも泣けます。はやぶさのほうが大人向けですかね。

一番の違いはサブテーマです。はやぶさ/HAYABUSAは、竹内結子演ずる若手科学者が、はやぶさプロジェクトに関わることで飛躍をとげるきっかけをつかむ、若者の成長ストーリーです。一方はやぶさは、山崎努演ずる町工場のおやじのセリフ「じゅんぐり」が象徴するように、技術継承の大切さを訴える作品です。いずれもメッセージ性の強い作品ですけど、はやぶさの物語がボクら日本人に与える感動の力強さと多様性を物語っているんだと思います。いろんな継承がありました。東出じいちゃん(山崎努)から孫の拓也。松本夏子(中村ゆり)から新人の女性研究員。山口先生(渡辺謙)から藤中先生(江口洋介)。それから、はやぶさからはやぶさ2。

どちらの作品にも共通するサブテーマもあります。技術開発を継続することの大切さがその一つ。糸川先生に始まる日本の宇宙開発が、一歩一歩継続してきた成果が、はやぶさの快挙だったということ。やはり、短期的な視点でしか語られない事業仕分に対するアイロニーがあるんでしょうね。ただまあ、税金の無駄遣いはやめなきゃいかんのも事実。こういう批判を浴びることを厭わない蓮舫さんは、それはそれで偉いと思います。

それから、携わっていた人々が抱く、はやぶさと仕事への愛情を描いているのも共通しています。社会全体がコンサバティブで無気力無感動な時代になってきていますけど、はやぶさプロジェクトが困難に粘り強く立ち向かう情熱は、そんな雰囲気への警鐘であり、がんばっている人たちへのエールです。

演出の違いもあります。はやぶさ/HAYABUSAはダイジェスト的だったと思います。あくまでも両作品を比較したら、ですけど。広報を担当する架空の若い女性キャラクターの目線でストーリーが展開しますから、どこか優しく、若々しく感じます。子供や中高生が観ても楽しい作品だと思います。はやぶさはリアリティを強調したヒューマンストーリー。だから、意見の相違による人と人とのぶつかり合いも描かれています。はやぶさでは、イオンエンジンの複合モード運転を決断する場面で、藤中先生とメーカー(NEC)社員(吉岡秀隆)が衝突したことを丹念に描いていました。

はやぶさの物語は、普通に人を感動させる力を持っていますから、誰が作っても良い作品になる可能性が高いと思います。でも、この作品は渡辺謙による渡辺謙のための映画になりかねない恐れもありました。それほど渡辺謙を中心に撮られてます。でも、そうならなかったのは、山崎努と吉岡秀隆の好演によるところが大きいです。山崎努演じる町工場のおやじが放つセリフは、さりげなくどれも素晴らしいんですよ。「じゅんぐり」とか「仕事は金じゃねーんだよ。金じゃない何かが人間にはあるんだよ」とか。吉岡君はどんな役をやっても吉岡君なのですが、そこがいいんですね。普段はヘナヘナしてるんだけど、キレた時のギャップが凄い。メーカー社員としてイオンエンジンの開発者として、複合モードに反対するシーンが印象的です。

それでもやっぱり、渡辺謙は存在感があります。好むと好まざるとにかかわらず、リーダーは「嫌われ役」に徹する必要があるんでしょう。作品を通じて、山口先生の表情は眉間にシワが寄ってるんですけど、たまに見せる笑顔や涙に感動するんです。20世紀フォックスが作ったはやぶさ/HAYABUSAよりもハリウッド的な印象を受けるのは、渡辺謙が主演だからかもしれないですね。

基本的に男たちの物語ですので、女優さんは物語の中心に出てきづらいのですが、東出じいさんの娘で朝日新聞記者役の夏川結衣と中村ゆいは綺麗でした。夏川結衣、好きなんです。中村ゆいはおひさまに出てましたね。

子供も観にきてたんですけど、どうですかね。完全に大人向けの作品です。難しいという意味じゃなく、華々しいキャッチーなシーンがなく、控えめなんだけど重厚な演出だから。カメラワークも同様です。陰影をはっきりさせた、リアリティを強調していました。仕事がんばっている大人に観てほしい作品です。

かなりオススメです。