
先日友人のI氏と食事をしていた時のこと。私のことを 「・・さんは融通無碍 (ゆうずうむげ) だから・・・」 と評した。この言葉の私の中での印象は、余りうるさいことは言わずに、なるようになれというやや楽観的な、やや無責任な傾向を言っているのか、という程度の漠然としたものであった。しかし、ネットを眺めていると松下幸之助による素晴らしい定義が現れた。
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松下幸之助は、“素直な心”の働きの一つを“融通無碍”という言葉で説明することがあった。融通無碍とは、「五条の橋のうえで弁慶が長刀を振り下ろすと、牛若丸はヒラリヒラリと身をかわしつつ、スキを見つけてピシャリと一撃、見事に降参させた。この牛若丸の身のこなしのようなものだ」という。つまり、一つの見方、考え方にとらわれるのではなく、自由自在にものを見、考え方を変え、よりよく対処していく。「流れる水は、いかなる障害物に出会おうとも少しも苦にせず、サラリと回って流れ続けます」。素直な心をもてば、これと同様、どんな困難に直面しても融通無碍に対処して、自らの歩みをスムーズに進めていくことができるという。
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I氏がどのような意味で言ったのか確かめようもないが、良きにつけ悪しきにつけ自分のある部分を言い当てているのかもしれない。ところで、これにぴったりのフランス語はあるのだろうか。専門家のご意見をお聞きしたい。
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(21 avril 2006)
Lys 様から、融通無碍に当たる言葉として souple, souplesse があるとのコメントをいただいたので、早速 Grand Robert にあたってみた。人や精神のあり方について言う場合には、以下のような説明がある。
Qui est capable de s'adapter adroitement à la volonté d'autrui, aux exigences de la situation
Qui n'est pas systématique ni uniforme ni rigide
融通無碍にぴったりの言葉のようだ。早朝から大いに勉強させられた。Lys 様の的確なコメントに感謝したい。この記事のフランス語タイトルにも使わせていただくことにした。ところでこの定義に従うと、I氏の言いたかったところは pas systématique のあたりにありそうな気がしてきた。