フランス語を始めた2001年、京都に出張した時、フランス語の教科書「フランス語最短コース Voie Express」 (4 CDs付) (白水社) を見つけ、その年の後半よく聞いた。ある状況で使える多様な表現がコンパクトに詰っているので、使い勝手が良く、なかなかいい本だと思った。お推めの本として余り取り上げられていないようだが、私には合っていた。好きな本のひとつである。
このCDを聞いている時に、ある発見をした。この本では「コーヒーブレーク」として途中にシャンソンを入れている。ある日何気なくCDを流していると、やや嗄れている(elle a une voix enrouée/éraillée/rauque) が、太くて力強く、人生を感じさせる声の持ち主が「何の悔いもない (Non, je ne regrette rien)」と歌う声が突然耳に入ってきたのだ。すぐに引き込まれた。エディット・ピアフ (Edith Piaf, 1915-1963) だった。彼女の名前は知っていたが、興味が湧かず真面目に聞いたことがなかったのだ。
この経験以来、彼女のベストアルバムを仕入れて、若手の女性歌手と一緒に車の中で聞いている。どの曲も人を引き付ける魅力があり、しかも人を奮い立たせる力に溢れている。世界中に多くのファンを獲得したのにはそれなりの訳があったのだと、その秘密の一部を理解できたような気がした。今まで意にもかけなかったものが、ある日突然重要な意味を持ってくるという経験は格別である。