ある週末の夜、偶然にもこの歌い手に出会う。
木下ときわ
Dois Mapas (ポルトガル語で 「2つの地図」 という意味) というユニットで活動されている方。日本女性としては大型である。そのためか、声が深く存在感がある。ややかすれたように聞こえるところもあり、味がある。そして何よりも、真っ直ぐな、素朴な、どこか遠くをじっと見つめているようなお人柄、あるいは真っ直ぐな、素朴な、原始的なものに惹かれているような方とお見受けした。どこまでも静かなのである。盛り上がるところでも決して弾けない。コントロールされている、どこか沈んでいる。意識してそうしているというよりは、この方の内なるものがそうさせるのではないかと思わせる。
当日は次のような歌が歌われた (順不同)。
「コヘンテーザ」 (アントニオ・カルロス・ジョビン)
「海へ来なさい」 (井上陽水)
海へ 来なさい
海へ 来なさい
太陽に負けない肌を持ちなさい
潮風に溶けあう髪を持ちなさい
どこまでも泳げる力と
いつまでも歌える心と
魚に触れるような
しなやかな指を持ちなさい
海へ 来なさい
海へ 来なさい
そして心から幸せになりなさい
風上へ向かえる足を持ちなさい
貝殻と話せる耳を持ちなさい
暗闇をさえぎるまぶたと
星屑を数える瞳と
涙をぬぐえるような
しなやかな指を持ちなさい
海へ 来なさい
海へ 来なさい
そして心から幸せになりなさい
「私の快楽」 (木下ときわ)
「百年先のみなさん」 (新美博允)
「旅する人」 (新美博允)
「月の姿のように」 (木下ときわ)
「塩の歌」 (塩田で働く人を歌ったミントン・ナスメント?の作)
「出会いと別れ」 (ミントン・ナスメント?)
「よいとまけの歌」 (美輪明宏)
「アラルナ」(「青いオーム」という意味で、インディオの歌)
「ケサラ」
などなど。そしてアンコールには 「ジンジ」 が歌われた。
この日、彼女のグループが 「極東組曲」 というCDを出していたことを知る。この名前に聞き覚えがあった。どこでどうつながるのかわからないものである。その記憶が蘇ってきた。森美術館での展覧会 (Africa Remix か) に向かう途中のブックセンターで、そのタイトルに惹かれて仕入れていたのである。 一度だけ聞いて、余りピンと来なかったせいか、そのままになっていた。彼女の場合、まず実演に触れてからの方がよいのかもしれない。しかし、こういう行ったり来たりする経験もまた面白いものである。
普段はファースト・セッションで引上げるのだが、その日は帰ろうとすると外は土砂降り。最後まで付き合うことにした。これも不思議な縁である。
木下ときわさんはStringsには以前から色々なユニットで出演されていました。でもやはり"Dois Mapas"が本チャンのようです。深い世界がありましたね、、
また宜しくお願い致します。