フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

佐藤允彦を聞く ECOUTER MASAHIKO SATO

2007-02-19 00:16:37 | MUSIQUE、JAZZ

その人の演奏会場に入ると、いつもとは違い空気の密度が濃いと感じる。もちろん満席なのだが、数のせいではなさそうだ。お客さんから何かが発散されて空気を満たしているという印象である。

  佐藤允彦 (1941-) 
    加藤真一 (ベース)
    村上 寛 (ドラムス)

佐藤允彦という名前は学生時代から知っていた。中山千夏のお相手として (最近の方はご存知だろうか)。ただ、その音楽に意識的に触れることはなかった。ジャズに詳しかった今は亡き友人HT が、彼は千夏 (当時大活躍をしていた) よりもずっと才能がある、と言っていたのを思い出し、その人の演奏を聞いてみようと思った。その日演奏された曲で覚えているのは、以下の通り。

  "I won't dance" (Jerome Kern)
  "What are you doing the rest of your life ?" (Michel Legrande)
  "That old feeling"
  "Only you" (The Platters) ・・・ 懐かしい、懐かしい気分にさせてくれた。

それから日本の歌 (童謡) を演奏後に (1回だけ演奏前に) どれだけ変形されているのかをわかりやすく紹介し、客を楽しませてくれる。例えば、

        「四丁目の犬
        「あわて床屋

日本人の感情に根ざしてジャズに向かい合っているという印象である。66歳になるご本人がまずお楽しみになっているのかもしれない。人生を、そして音楽を少し遠くから見ることができるようになった余裕が滲み出ている。フランス語に、よりよく理解するために少し離れたところからものを見るというニュアンスの "prendre du recul" という表現がある。そういう円熟の時期に入りつつあるのを感じることができた。それをお客さんが感じ取り、自らの人生を重ねながら楽しんでおり、それが演奏者との間に何とも言えない柔らかなコミュニケーションを可能にしているようにも感じた。アンコールにはドラムスの村上寛さんの "Outrunner" という疾走する曲が演奏されてお開きになった。
 
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16 コメント

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ジャズ (ミコ)
2007-02-19 11:16:53
今日はジャズのお話。自分の好きなジャンルがテーマだと、1日がお得な気がします。

へえ「あわて床屋」(「四丁目犬」は知りません)を演奏!!選曲の感覚が日本的なのか、演奏のフィーリングが日本人を感じさせるのか、どちらでしょう?

このトリオは聴いたことがありませんし、大阪では現在も活躍する北野タダオとアロージャズオーケストラとか、古谷充(AS)小曽根実(P)ぐらしかライヴは聴いてないのですが、1960年~80年代に来日した外来ジャズメンはほぼ全員聴いています。もっとも旬な時期で、彼らのライヴレーザーディスクも50枚ほどあり、CDよりもっぱらLDで楽しんでいます。ポールさんよりちょっと早く?生まれ、いい思い出がつまっています。

あえてお気に入りを選ぶなら、やはりソニー・ロリンズ(TS)とマックス・ローチ(D)でしょうか?
マイルス・デイヴィスは、晩年が駄目だったから、あまり買いません。

ちなみにクラッシクでは、作曲はショスタコーヴィッチ、指揮はバーンスタイン、演奏はオイストラッフ(V)ですね。カラヤンと一緒に写っている若き日のわたしも残ってますが、そのカラヤンも日本での最終公演(ザ・シンフォニーホール)で、出だしを間違うという信じられないミスを犯し、晩節は良くありませんでした。佐藤允彦氏はまだ66歳、大丈夫でしょう。ポップスは勿論モンタンです。


 ジャズメンの蠢き居りて冬尽きぬ   ミコ
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ミコ様 (paul-ailleurs)
2007-02-19 19:07:52
日本の遺産を生かしてジャズをやりましょうという遊び心に溢れていて、演奏には特に日本的なものは感じませんでした。若い時にありがちな、向こう一辺倒の姿勢が消え、自然の流れでしょうが自らの根に目が行っているということでしょうか。コメントを読ませていただくと、ミコ様がこれまでジャズに溺れて来られた様子が伝わってきます。否、ジャズに限らず幅広い音楽に。

 ジャズメンの蠢き居りて冬尽きぬ   ミコ

   des musiciens de jazz
    se remuant là
     l'hiver s'épuise

  (Miko; traduit par paul-ailleurs)

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中山千夏 (shoko)
2007-02-19 22:36:15
「佐藤充彦さんが中山千夏さんの…」と書いてあったので、目が止まりました。中山さんが結婚され、離婚されていたのは知っていましたが、相手がミュージシャンとは知りませんでした。中山さんが校長で、永六輔、矢崎泰久、小室等が講師という顔ぶれで、『学校ごっこ』という社会人の自己啓発として学ぶ学校がありました。今年1月に閉校になったのですが、始まりは2003年から、1期が5ヶ月単位で、計10期続きました。或る時期私が受講していたのは、ジャーナリストの矢崎泰久さんの講座で、中山千夏さんの「古事記」の授業は受講したことがないのですが、中山さんは古事記をはじめ、古典への造詣がかなり深い方だそうです。対象がなんでも、「深く知る」ということに共感をおぼえます。
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shoko様 (paul-ailleurs)
2007-02-19 23:27:34
私の方は、中山さんが何をされているのか知りませんでしたので、今でも活動されていることを知り少し安心しました。まだ私がカバーする範囲には入ってこないようですが。この世に少し長くなると、いろいろな繋がりがみえてきて面白いと思いました。

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千夏さん (ミコ)
2007-02-20 09:50:36

「週刊金曜日」の裏方さんで、読者の”人生相談”を担当されています。相変わらず歯に衣着せぬ発言で千夏節は健在。矢崎さんも時折登場のコメンテーターです。

原則通販の雑誌ですが、書店に申し込めば読めます。ご興味あればーー。

  TEL03-3221-8521
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日本のジャズ (ねね)
2007-02-20 11:40:29
paulさま
こんにちは。ねねです。
先日はご丁寧なお返事を戴きまして大変嬉しく思います。

今回、佐藤允彦さんのお名前が出ていたので先日読んだばかりの彼のエッセイを想い出しました。
本の中には中山千春さんの事がちらりと書かれてありましたがジャズを知らない方でも充分楽しめる内容と洗練されて自然体な文体が読後感を心地良くさせて、多才な方だなあと改めて感じました。
中山千夏さんの活動も少しだけですが存じ上げております。
彼女の声も素敵ですね。古典文化についての書物も父から貰った事がありました。

"prendre du recul"、、、、適度な距離を置くという意味で理解しておりましたが、お書きになっていらっしゃるように日本のジャズ界を君臨し、離婚も経験しながら円熟した演奏活動を続ける佐藤氏にふさわしい表現ですね。
密度の濃い空気がこちらまで漂って来ました。

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ミコ様 (paul-ailleurs)
2007-02-20 18:45:13
中山千夏さんに関する情報、ありがとうございます。ここにきて、一気に彼女の現況が目の前に現れてきた感じです。

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ねね様 (paul-ailleurs)
2007-02-20 18:50:05
佐藤さんのエッセイとのこと、彼のHPでも少し読んでみましたが、日本の生活に根ざしたお話がたくさん出ているようで楽しめそうです。千夏さんの声ですが、20年以上聞いていないのでどうなっているのでしょうか。余り変わっていないとは思いますが。今回の記事で当日の雰囲気が伝わっているとすれば、よかったと思います。

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俳句 (カメ)
2007-02-20 21:28:40
ミコさんの感性に、不思議な共感をおぼえました。
「蠢く」という字はほんとに絵画的ですね。直訳を原則とされるポールさんのremuerも、まさにそのとおりの言葉だと思います。
カメもあれこれ考えていたら、韻を踏んだ形ができました!

Les jazzmen se remuent,
Mon coeur ému,
Et l'hiver fondu.

真摯に考えました。ミコさん、ポールさんどうぞよろしく。
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カメ様 (paul-ailleurs)
2007-02-20 23:49:46
新しいバージョンありがとうございました。いつも一歩作者の中に入っているように感じる訳で、興味深く読ませていただきました。またよろしくお願いいたします。


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