フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

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J'OBSERVE DONC JE SUIS

ロベルト・アラーニャ ROBERTO ALAGNA

2007-01-18 22:11:44 | MUSIQUE、JAZZ

今日のお昼の散策で届いたばかりの Le Point を見ているとき、あれ!この人はひょっとして、と思う記事があった。その主役は、

ロベルト・アラーニャ
Roberto Alagna

ほとんど独学というこのテノールが、昨年12月10日、ミラノのスカラ座でオペラ 「アイーダ」 のラダメス役を歌っている途中で啖呵を切るようにして退場したというのだ。この記事を見た時、昨年暮にルーブルのショッピング街で仕入れたオペラの抜粋集を歌っているのがひょっとするとこの人ではないかとの思いが過ぎる。帰って調べてみると、やはりそうであった (CDは "Viva Opera !")。CDを手に入れた時はこの事件がすでに起こっていたことになる。わざわざ目立つところに並べられていたのはそのためで、どうやら乗せられていたようだ。

今回の事件の伏線となったのは、初日の批評家の評が自分だけに厳しく、他のすべての人は好評でカチンときていたこと、地元新聞のインタビュー記事で、「アラーニャがスカラ座は私の役に立たないと語った」 と曲げて書かれたこと、そして当日、出演者入り口で男が待っていて、お前を潰してやるというような素振りをしてきたこと、さらに彼の代役が準備されているという話を聞いていたことなどがあり、ほとんど切れる寸前で舞台に上がっていたことが想像できる。

彼は舞台に上がり、「アイーダ」 が始ってすぐに出てくる 「清きアイーダ」 "Celeste Aida" を歌う。この曲には 「恐怖のB♭」 "Redoutable si bémol" と呼ばれるテノール泣かせのところがあるのだが、そこでブーイングが起こったのだ。これで彼は完全に切れてしまった。

私がアメリカにいた当時、ルチアノ・パヴァロッティがテレビで何度も語っていた話を思い出した。「テノール歌手はいつも闘牛場にいるようなもの、いつ殺されるかわからない。観客はテノールがいつ音を外すのか楽しみにしているのだから。」

彼は "Monsieur Difficulté" と呼ばれ、妻のソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギュー Angela Gheorghiu も "Dragon Diva" の名前をもらっている気分屋で、ご夫妻で "チャウシェスク夫妻 Les époux Ceausescu"、"Bonnie and Clyde" などと揶揄されているらしい。

CDがよく売れているのでのぼせ上がっているのではないか (il a la grosse tête)。ジダンの頭突きは許されても、アラーニャはオペラのジダンじゃないのでオペラ界との関係を壊してしまった、と手厳しい。ただ彼は劇場が戦場になるのだったら歌う気はしない、心が平穏でなければいい歌は歌えないのだと語っている。自らをカレラス、パヴァロッティ、ドミンゴに続く "第四のテノール le quatrième ténor" と名乗る彼は、スカラ座もその殺人的観客もどうでもよいと思っているのかもしれない。・・・当分の間は?・・・

こういう事件そのものが劇的でオペラを見るようである。

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