フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

「脳と性と能力」  "CERVEAU, SEXE & POUVOIR"

2007-06-27 00:53:05 | 科学、宗教+

千里中央から電車に乗る。大きなサングラスをかけた女性が入ってきて、私の前に坐った。その女性は眼鏡をおもむろに取り、化粧道具の入ったバッグを開けた。ここで私は初めての経験をさせていただいた。一重瞼を二重にするテクニックを見せていただいたのである。皮膚に接着する細い糸を瞼の上に押さえつけるように乗せていき、望む形になったと思ったところでその両端を鋏みで切ると見事に二重になっている。これであれば、手術などするには及ばない。二重の程度も自在に変えられる。化粧のテクニックがここまできているのかと驚いた。それからお肌の方へ移って行き、新大阪駅に着く頃には見違えるようになっていた。


新幹線が事故で遅れたので駅構内の本屋を覗く。その中にあった新書を手に取る。科学を一般向けに扱ったものなので、その様子を見てみようという好奇心からか。

カトリーヌ・ヴィダル、ドロテ・ブノワ=ブロウエズ 「脳と性と能力」 (2007.6)
 Catherine Vidal, Dorothée Benoit-Browaeys "Cerveau, Sexe & Pouvoir" (2005.2)

かなり荒っぽくまとめてしまうと、男女間に能力 (知的、社会的などの) の差はあるのか、それは脳にどのように反映されているのか、脳に性差はあるのか、というような問題についての言い伝えを検証し、科学の成果を科学的判断に基づかない解釈で自らの社会的立場を押し進めようとする勢力が存在することを指摘している。すべて遺伝子でプログラムされているという決定論的な立場の危うさを説く。これらの問題自体は私自身もある程度知っており、それほどのインパクトはなかった。結論的には、先日のカンデルさんのお話とも共通する次のようなことになるのだろうか。

性差を検討する時、条件を厳しく取っていくと性差が次第にあいまいになる。つまり、性差として捉えられていたものを科学的に見直すと、実は別の要因によっていることが多いという。もちろん、遺伝的な要素も考慮に入れなければならないが、それ以上に人生を歩むうちに出会う環境 (すべての要素を含む) により、シナプスが形成され、あるいは消失するというダイナミックな過程 (脳の可塑性と言っている) こそが、その脳を、その人間を特徴付けているのだ。

そして、本の最後をフランソワ・ジャコブさんの言葉で締め括っている。要約すると、次のようになる。

  「生きている有機体の中で、遺伝的プログラムからもっとも自由になったのが人間である」


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最後にひとつだけ。カトリーヌ・ヴィダルさんのポジションがパスツール研究所所長となっているが、これは明らかな誤り。現在の所長はアリス・ドートリ女史で、研究所初の女性所長である。出版社の方にはその旨お伝えしておいた。

(4 juillet 2007)
集英社のHPを見てみたところ、ヴィダルさんのポジションの記載が訂正されていることを確認できた。早い対応であった。本体はどうなっているのだろうか。いずれ本屋さんを覗いてみたい。

(5 juillet 2007)
帰りがけに時間があったので本屋さんに立ち寄ってみましたが、さすがに本体は以前のままでした。内容には直接関係ないということなのでしょうか。ただHPには変更を加えていますので、どのように考えているのかはわかりませんが、、

コメント (4)
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