「パセオは誰に何を伝えたいのですか?」②
日本のフラメンコ市場に「バイレの技術的上達もの以外は売れない」という時代は長く続いたが、「技術以外の何か大切なもの」について多くのファンの関心が向かい始めたことは、ここ数年来のフラメンコ界全体の傾向と分析してよいだろう。
ルジャビーから投げられた問い掛け、加えて今回のアンケート回答の数々はそれらの傾向をいっそう裏付けるものであり、同時にその潮流は「パコ・デ・ルシアのギターのように生きたい」と願った私の原点に直接響いた。
(筆者注:パコのようには弾けないことをほぼ予測していたところに若き筆者の謙虚さを垣間見る)
上達に対する強い希求という健全な傾向を残しつつも、おそらくはそれ以上に、「より豊かに生きるためのフラメンコ」というヴィジョンが大幅に浸透しつつあることが、私には手放しでうれしかった。
梅雨のころから暑かったこの夏にかけて、ルジャビーの声とアンケート回答から浮かび上がる本音をじっくり咀嚼吸収しながら自問自答をくり返し、その一方で、改めてこれからの具体的な方向性を確認し合うパセオ全スタッフによるディスカッションを重ねた。
私たちパセオの進むべき新たな方向性とは何か?
そして、その方向性をシンプルにわかりやすく明示するキーワードは何か?
議論の末、全員一致で選出されたコンセプトは、
「フラメンコはライフワーク」だった。
そうは捉えていないファンも大勢いるわけだから、この決め打ちはさまざまなリスクを伴う。
しかし私たちは、観る聴くだけの潜在ファン層の拡大を含め、この戦略を選んだのだった。
負けるかもしれないが、この戦略はフラメンコの本質にゴツンと合致していると思った。
「パセオは誰に何を伝えたいのですか?」
こんな裏プロセスをバラしつつ、次号最終回、ルジャビーのこの直球に対しできるだけ明快に回答したい。
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