フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

「パセオは誰に何を伝えたいのですか?」① [222]

2008年10月01日 | パセオ周辺






 「パセオは誰に何を伝えたいのですか?」①

         


  「パセオは誰に何を伝えたいのですか?」


 このド真ん中ストレートは、この春mixiで各種フラメンコアンケートを始めたころ、愛すべきウェブ友ルジャビーからこの私に投げられた問い掛けだ。
 そのうちじっくり答えるから楽しみにしとけや、と余裕を装いながら返答したものの、彼女のコメントは、実は私の心臓をグサリ刺していた。

「云うまでもなくパセオの主たる任務は“フラメンコの普及発展”にある。
 その結果が、私の達成感やら収入やら髪の毛の本数などに比例するのだ。
 専門メディアとして、ファンとその潜在層に向けて、さまざまな角度からフラメンコの魅力を伝え、ファンを増やしながらその発展・深化に貢献する。
 やり方に変化はあっても、昔も今もこのヴィジョンに変わりはねーよ」

 こうアバウトに対応するのが穏当なのだが、ラジカルにして真摯な想いに充ちたルジャビーのツッコミに、なぜか私のスイッチは作動し、その脳裏に棲む青春の原風景が突如フラッシュバックを始めたのだった。


          


 街々を徘徊中に、偶然手にした一枚のレコード。
 人生を賭けた将棋のプロテストに失格し進路を失った高校生の彼に、まったく新たな道筋を示すパコ・デ・ルシアのフラメンコギター。
 グチんな! クヨクヨすんな! 誰も助けちゃくれんぞ。
 魂ケチんな! さらして鍛える魂を金庫にしまってどーする。
 遠慮すんな! やりたいことを思う存分やれ。
 心配すんな! どー生きても人は必ず死ぬ。
 エネルギーに充ちあふれたそのフラメンコが、どん底の彼にそうソウルする。
 当時流行の優柔不断~ジリ貧コースとは対極に位置する方法論。
 ノミの心臓ゆえのキマジメだけが取柄の彼に、そんなんでいーのか?
 本当にそれだけで足りるのか? とズバリ迫る、まばゆい光の大胆パッション!
 引きこもり寸前の魂に、コペルニクス的転換の可能性を示す鮮烈な一撃!
 背筋のピンと伸びた本音と熱情のアートは、本物のエロスとタナトスを備えていた。
 その神秘のレコードは、わずか半日で、沈みかけた彼の運命をあっさり変えた。




 こんなレアな情景が、まるで昨日のことのようによみがえる。
 返事を保留したのは、ルジャビーの直球コメントが引き起こしたこのフラッシュバック現象の意味と、彼女の問い掛けに対する回答を、じっくり考え直す時間を稼ぐためである。
 アバウトなヴィジョンではなく、もっと具体的な方針(戦略)をわかりやすく整理して、ルジャビーにきちんと回答すること。そのことは同時に、周囲とパセオ自身に対し、これからのパセオの行動をさくっと明快にするガイドライン強化になるのではないか。
 創刊から四半世紀。これまでにも何度か戦略の転換はあったが、世の中の状況もフラメンコ界の状況も大きく変化した現在。
 この時期に、このビッグテーマに改めてじっくり向き合うことは、むしろ絶好のチャンスのように思えてきた。


 さて、先ほどのフラッシュバックのつづき。
 天才パコ・デ・ルシアが示す道筋を、一般人平均をやや大幅に下回る私がせっせと歩んだ悲惨なプロセスは都合によりカットするが、いつも心にアルモライマ(パコの有名なブレリア)を響かせた歳月は、①暗くハンサムな少年を、②陽気でブサイクな青年に変え、やがて彼にパセオを創刊させるのだが、さて、あなたは①②のどっちがタイプですか?っておゐおゐ、そーゆーアンケート調査ではない筈だろが次号につづく。


         

               

 

 

 

               






          



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