視点:ミーナ
欧州大陸よりネウロイ襲来、この報告は別に珍しくもなんともない。
欧州が陥落して以来、欧州圏では島国であるブリタニアが最後の防波堤としての役割を担っている。
ネウロイは海や河といった地形に弱く、空を飛ぶタイプを除けば進行は限られる。
だから大抵わざわざ海を渡ってでも来るのは単騎で大型の奴か、少数の編隊を組んだ小型と相場は決まっている。
最短距離を目指すならドーバー海峡を渡らざるを得ず、その時は自分たちの出番だ。
だが、だ
「ネウロイハ2機ノミ・・・。」
ロンドンの防空司令所から送られた電文を淡々と読み上げる。
「機影ハキワメテ人型ニ似テイルト思ワレル、注意サレタシ。」
人型
その単語にミーナは悪い予感にとらわれる。
だいぶ前、スオムスにてウィッチを模したネウロイが出現したことはロンドンに行った際、
その現場に居合わせ、交戦したというビューリング大尉から直接聞いた。
だからただ人の形をしたネウロイには驚きはしない。
問題はなぜ単騎でノコノコとブリタニアに来るその意図が読めないということ。
さらに―――。
「ミーナ!敵の情報を教えてくれ!」
指揮卓に置いてある隊内電話が鳴り響き、受話器を取るとトゥルーデの声が聞こえた。
声のほかに爆音が鳴り響き、どうやらすでに格納庫でユニットを吹かしているようだ。
「人員は?」
『私、イェーガ、フランチェスカ、ユーティライネンが今ユニットを履いている。』
「坂本少佐は?」
『どうも、離れで鍛錬していたらしく、遅れるとか。』
舌打ちをしたくなる衝動を抑える。
かわりにミーナは指で指揮卓を軽く鳴らし思考を展開する。
トゥルーデは大戦初期から、しかも扶桑海事変にも参加している超ベテラン、遅れを取ることはない。
加えて彼女の固有魔法は「バロールの眼」と称される神話クラスの最強の魔眼を保有している。
そう、問題はない。
ないのだが、
「ブリック東114地区、高度は約6000、2機よ。」
「種類は?」
「極めて人型に似ている、と司令部は連絡してきたわ。」
人型、それで息を飲んだ気配をミーナは感じとった。
『誤報、ということはないよな?』
「続報はないから、今はそうだと認識して。」
―――さらにはもしやあの時、戦友にして友である人が破滅するに一役を買った奴だとすると。
『了解した、これより
イェーガ、フランチェスカ、ユーティライネンの4名で当該戦区へ出撃、敵対勢力を撃破する。』
「よろしい、出撃しないさい。」
命令を下し受話器を置く。
後は彼女たちの働きようを信じるしかない。
ミーナは思う、
人型ネウロイはトゥルーデにとってトラウマそのもの、部下、肉親を殺した存在。メンタル面で不安が残る。
彼女を外し美緒、あるいはシャーリーに任せてしまう、という手もなくはないがそんな時間はない。
指揮官として一分一秒を争うこの場面でそういうことはできないのだ。
「・・・ほんと、ままならないものね。」
窓の外の青空にのびる4本の飛行機雲を見て呟く。
どうにもならない現状にミーナは現実への達観といらだちを覚えた。
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