「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



真っ直ぐ行って左に曲がって交差点を渡って。
数年ぶりの平塚。
競技場までの道のりを覚えている。
ずっと前から変わらない風景、Jのある週末。

GK山岸
DF森脇・暢久・槙野
MF平川・阿部勇樹・啓太・柏木・原口・宇賀神
FW興梠
リザーブ加藤・坪井・永田充・小島・梅崎・関口・阪野
那須が出場停止、マルシオと直輝は負傷欠場。
迷いがあるのか、それとも研究されているのか、
浦和の良さが消えた数試合。
浮上の切欠を掴み、一気に最終戦まで駆け抜けたい。
そのためにも、勝たなければいけない試合。

もう、負けられない。

「啓太がいると違うね」
中盤でボールが収まる、試合が落ち着く。
「荒れてるんだよな」
芝がめくれている、足元を掬われそうなピッチ状態。
引いて守らない湘南、それに乗じることが出来ない浦和。
もどかしい。

槙野が切り込む、中央から右へ、シュートまで持ち込めない。
左サイドを突かれる、中央に走り込まれる、突破は許さない。
「力はウチの方があるんだよな」
落ち着いてやれれば、気持ちで負けなければやれるはず。
左からのCK、キッカーは柏木。
「あ、決まった!」
角度のないスタンド、得点者が分からない。
18分、浦和先制1-0。
「誰?槙野!?」
誰でもいい、これで少しは楽になれるかも知れない。
「引くなよ、狙って行こう」
今のウチにとって、1点差はセーフティではない。

啓太からウガにパスが通る。
「行ける!」
原口が受ける、ネットが揺れる。
「決まった!」
「え、オフサイドなの!?」
追加点ならず。
「しっかり!」
マークを外す、クロスを入れられる。
「どうしてかな…」
危うい試合運び、圧倒する迫力を感じない。

「これもか…」
ネットが揺れる、副審の旗が上がっている。
2度目のオフサイド。
「もう1点あればな…」
バランスを崩す、パスを繋がれる。
「ヒラ!!!」
奪う、逃れる。
41分、湘南3番に警告。
「後ろの選手だな、いい感じだ」
少しでも優位に立ちたい。
下位に沈む湘南相手にも、余裕がない。

前半終了、湘南0-1浦和。

「嫌な感じだな」
湘南のFKが降る、柏木がクリア。
「大丈夫か?」
前線にボールが収まらない。
「興梠のマークがキツいな」
ボールを失う、後退するDF。
「2点目が取れれば…」
得点の匂いまでしなくなる。
60分、湘南40番に警告。
「やっと出したか」
荒いプレーに漸く主審が反応。
古びたスタジアム、懐かしい手摺り。
片手を手摺りに掛け、跳ねる。
弱かった時代もこんな感覚だったのか。

「厳しいな…」
阿部勇樹のシュートも枠の上。
少ないチャンスをものに出来ない。
「2枚、か」
73分、暢久・宇賀神out永田充・梅崎in。
「向こうが9番入れたからってこと?」
永田投入にざわつくゴール裏。
「煩いんだよ!」
不安は伝播する、そんなことも分からないのか。

「何があったんだ?」
スポットを指す主審、PKが宣告される。
「何でこうなるんだ…」
「ギシくん、頼む…」
「あった!」
左に飛ぶボール、読みが当たる。
「あっ…」
山岸の手を弾くボール。
76分、湘南同点1-1。
「交代が裏目に出たか…」
跳ね返す力がウチにあるのか。
「勝つんだよ、目を覚ませ!」

78分、平川out関口in。
「これで変わるのかな」
局面を一変させる選手が欲しい。
「興梠!」
DFを交わす、シュートを放つ。
「惜しい!」
GKに弾かれる。
右サイドからクロスを上げられる。
「またか…」
81分、湘南逆転2-1。
立て続けに失点する悪い癖。
弱いメンタル、これが優勝を狙うチームなのか。
「諦めるな!」

消沈するゴール裏、声が出ていない。
「何しに来たんだよ?」
散見する罵声、味方の中に敵がいる。
続くララ浦和。
「俺だってムカついてんだよ」
それでも勝たせたい、勝ちたいから諦めないんだ。
89分、40番に2枚目の警告、退場。
「ここでいなくなるなよ…」
目的がよりはっきりする湘南、守備を固められる。

「来た!!
90分、浦和同点2-2。
「まだあるよな?」
バックスタンドの時計を見上げる。
「3、4分はあるはずだよな」
アディショナルタイム4分。
活気づくゴール裏。
「さっきまでのは何だったんだよ」
蟠りを抱えながら声を張る。
「行ける、ひっくり返せるぞ」
諦めない、勝ち点3が欲しい。

「ここまでか…」
選手の動きが止まる。
試合終了、湘南2-2浦和。
不満を露わにする輩がいる。
「戦ってたのか?」
スタンドに居たくなかった。
選手に向かって浴びせられる声を聞きたくなかった。
「諦めてたのは、誰だよ…」

やりきれない気持ち。
勝ち点よりも、大切なものを失った気分だった。





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