「誇」-URAWA REDS-
共に…
 



「暑いなぁ」
出不精になってしまうほど暑い。
開門に間に合わず、15時半スタジアム着。

GK加藤
DF森脇・那須・槙野
MF平川・阿部勇樹・啓太・柏木・原口・宇賀神
FW興梠
リザーブ山岸・坪井・暢久・永田充・マルシオ・関口・直輝
暢久が入り阪野がベンチ外。
前節の敗戦を受け、後ろの枚数を増やした浦和。

「エンド逆か…」
風は南から北に。
「大分は風下を選んだってことか」
いつもと違うエンドからのスタートは、座りが悪い。

「しっかりマークして」
誰が誰の面倒を見るのか、はっきりしない。
「フリーにさせるな!」
相手38番、7番が煩い。
大分FK。
「緩いんだよ」
12分、大分先制0-1。
「梶山なの?」
甘いマーク、あっさり得点を許してしまう。
「目を覚ませ!」
大分はどうしていつもこうなるのか。

「危ないって!」
突破を許す、ノブヒロが抑える。
CKからの混戦。
「しっかり!」
ネットが揺れる、沸く南側スタンド。
15分、大分追加点0-2。
「どうしてフリーにさせるんだ?」
簡単にやられてしまう。
「ったく…」
改善の兆しのない守備、暑さのせいじゃない。
「マズいぞ、これは」
上位を狙うには、優勝を目指すのなら、あってはならない失点。
左からのCK。
「決めろ!」
競り勝つ、跳ね返るボール。
「押し込め!」
ラインを割ったように見える。
「入ったか!?」
副審は認めていない。
「まだ時間はある、落ち着いて行こう」
浅いクロス、競り負ける。
浦和を嘲笑うかのようなシュートが決まる。
「はぁ?」
20分、大分3点目。
「いかん…」
練習パターンを変えたというのは、
チーム状態が良くないことの裏返しだったのか。
「今年は優勝なんて早いのかな」
覇気のない浦和、成す術もなく大量リードを許してしまう。

興梠が粘る、右から平川が詰める。
「空いてるぞ!」
シュートコースが見える。
「吹かしたか…」
決定機を逃す浦和。
「もったいなかったな…」
確実にものにする強さが欲しい。

左サイドを槙野が上がる、クロスが入る。
「スルーか!?」
1人飛ばす、興梠が受ける。
「巧い!」
24分、浦和1-3。
「行くぞ!」
一瞬の静寂。
「どうした!?」
興梠を叫ぶ。
「そうなのか?」
個人より大事なものがあるんじゃないのか。

「動け!」
「何やってんだよ!」
上から声がする。
劣勢になると顕れる“いらない声”。
荒げたって何の意味も成さないのに。
「時間はある、焦るな、落ち着け」
選手たちの意地を信じて、
己の成すべきことを果たさなければ。

31分、柏木に警告。
「それでハンドなの?」
神経質な笛がなる、主審は西村氏。
「基準がそれなら守れよな」
審判が敵になるのは勘弁だ。
「これもか!」
興梠がDFに競り勝つ、反転する、笛が鳴る。
「厳しいな、これじゃ…」
原口のトラップ、これもハンドの判定。
「わざとじゃないし、手広げてないし…」
試合に乗れていない原口にも厳しい笛が鳴る。
「今日は良くないのかな」

アディショナルタイム4分。
「向こうの遅延はしっかり取ってるのね」
真ん中が空く、ミドルシュートを放つ。
「決まらないか…」
「あ、啓太だったんだね」
前半終了、浦和1-3大分。

不満を声にする輩たち、
それを打ち消す声がする。
長い間戦い続けているから出来ること。
共感出来ないこともあるけれど、
諦めない気持ち、
最後まで戦い抜く気持ちは同じだから。
不満を口にする輩が消える。
これで変わる、変わるはず。
戦っているのは選手だけじゃない。
俺たちも共に戦ってるんだ。


「そうなるよな、今日は」
HT、原口outマルシオin。
「ファール!」
PA前、興梠が倒される。
「マルシオには少し遠いかな」
槙野か、マルシオか、陽介か。
「マルシオだ!」
急角度で落ちるボール、GKが触ることを許さない。
47分、浦和得点2-3
「勝てる!ひっくり返せるぞ!」
後半開始早々、素晴らしいシュートが決まる。

「嫌な感じなんだよな、30番と梶山が」
前回対戦時にはいなかったふたりが気になる。
「陽介!」
啓太の縦パスに反応。
「タイミング良過ぎたか…」
シュートはGK正面。
左からウガが仕掛ける。
「ハンドだろ!」
「内?外!?」
「コーナー、じゃないよな?」
阿部勇樹がスポットに歩き出す。
「PKだ!」
「マルシオの方が確率高い気がするけど…」
監督の方針ならば仕方ない。
「頼むぞ」
タイミングを外すステップ。
「余計なことを…」
右に飛ぶボール、右に飛ぶGK。
「入れ!」
56分、浦和同点3ー3。
「勝つぞ!」
これで負けはない、勢いはウチにある。

66分、宇賀神out関口in。
「興梠、強いな」
競り負けない、攻撃の基点になる。
関口が左サイドを走る、走る。
「上手く絡めれば武器になるな」
運動量が落ち始めた大分。
絡み付くような暑さから解放された埼玉スタジアム。
「これなら大丈夫だろう」
残り時間は十分、行ける。

マルシオから柏木へ。
「右足だったか…」
シュートはGKに弾かれる。
「追い付け!」
関口が突っ込む。
「速い、惜しいねぇ」
身体が軽い、自分の体力も十分にある。

「直輝だ」
浦和が動く。
「啓太かな」
4審が13番を用意している。
「ヒラ、ダメか?」
平川が倒れている。
「どうする?」
平川が起き上がる。
「そのまま見たいだね」
82分、啓太out直輝in。
「やるねぇ」
いきなり直輝が狙う。
「森脇!」
マルシオから右に展開、クロスが上がる。
「決まった!」
85分、浦和逆転4-3。
「那須だ、那須が残ってたのか」
とうとう仕留めた、ひっくり返した。
「集中しよう、しっかり!」
荒れた試合、何が起きても不思議じゃない。
直輝が前線を掻き回す、関口が必死に追い縋る、
陽介が諦めない、奪う。

アディショナルタイム5分。
「前後半で9分か…」
勝つぞ、勝つんだ。
しっかり、落ち着いて。
ミスさえしなければ、焦り慌てなければ。
「あと少しだ」
南側深く、ボールをキープする。
「もう時間じゃないのか?」

笛が鳴る。
「勝った!」
大きな勝ち点3、明日に繋がる勝利。
「これでいいってことじゃないけどさ」
選手を迎えずに、コンコースに抜ける。
「次、次が大事なんだ」
頂きを目指すなら、勝ち続けなければ。



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