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 風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画『宇宙からのメッセージ』 昭和52年(1977)

2016-12-20 04:05:43 | 特撮映画









アメリカで『スター・ウォーズ』が公開されたのが1977年。その翌年には日本でも公開されることが決定しました。


この『スター・ウォーズ』の評判を聞きつけ、これからは「宇宙映画」の時代だと踏んだ東宝と東映の両映画会社は、こぞって特撮宇宙映画を製作します。

東宝が製作したのが、福田純監督による『惑星大戦争』そして東映によって制作されたのがこちら、『宇宙からのメッセージ』。

東宝の『惑星大戦争』は正直かなりヒドイです。会社側に本気で作る気があったのかどうか、その点すら疑いたくなる。まあヒドイ!


その点、東映が作ったこちらはかなり頑張ってます。まず本家『スター・ウォーズ』をかなり研究していますよね。しっかりと研究して各名場面をうまくパクリつつ(笑)、当時日本で出来た精一杯の技術を駆使して独自のものに仕上げています。

思った以上によくできた映画で、感心しますね。これは頑張ったよ日本!



出演はハリウッドより、あの『コンバット!』のサンダース軍曹で御馴染みのビック・モローを招聘し主役に抜擢。日本側からは千葉真一、志穂美悦子、成田三樹夫、丹波哲郎。さらには当時まだ無名の新人だった真田広之を起用、そして監督には深作欣二。

製作費15億と、当時の日本映画としては破格の金額で、東映の本気度が伝わってきます。……ったく、特撮の本場東宝が完全に負けとる、情けなや!





ストーリーは「南総里見八犬伝」をモチーフにしています。宇宙に散った8つの聖なる実を身に着けた8人の戦士が、宇宙の悪に立ち向かうという物語。


********************


惑星ジルーシアは悪の宇宙帝国ガバナスの侵略を受け、惑星要塞化されてしまう。ジルーシアの大酋長キド(織本順吉)は、奇跡の戦士による救いを求め、伝説の聖なるリアベの木の実を宇宙に放ちます。そうして伝説の戦士に出会うため、キドの孫娘エメラリーダ(志穂美悦子)と戦士ウロッコ(佐藤允)がジルーシアを脱出、伝説の戦士を探す旅にでるのです。

リアベの実は、退役軍人のガルダ(ビック・モロー)、宇宙暴走族のシロー(真田広之)、アロン(フィリップ・カズノフ)、チンピラのジャック(岡部正純)、富豪令嬢のメイア(ペギー・リー・ブレナン)そしてガバナスの正当皇位継承者ハンス王子(千葉真一)などの手に渡って行きます。


一方ガバナスの悪の皇帝ロクセイア12世(成田三樹夫)は、地球の美しさに見惚れ地球侵略を決意、地球連邦に降伏を迫ります。地球連邦評議会議長アーネスト・ノグチ(丹波哲郎)は、幼馴染のガルダを交渉の使者に立てるのです。


果たして地球の運命やいかに、


聖なるリアベの戦士は……。



ガバナスを倒すことはできるのか!!??




********************



とにかく特撮がよくできてます。ミニチュア・ショットの迫力はなかなかのもので、下手な東宝作品より凄いかも。特に合成ショットにおいては、ECGシステムという技術を導入しています。まあ、早い話がヴィデオ合成なんですね。ヴィデオ・カメラで撮影した素材を、クオリティ高い映像で合成する。この一番の利点は、現場で合成の出来具合が確かめられることなんです。

フィルム合成ならば、きめ細かい合成ができるけれども、現像が上がってくるまではどんな出来具合かわからないわけです。それがヴィデオ合成だとその場ですぐに確かめられる。せっかちな深作監督にはぴったりな技術でした。

ただこの技術の最大の難点は、ヴィデオカメラで撮影するために、これをフィルムに起こしたときに、画面上に走査線が写りこんでしまうことなんです。この走査線が写りこんだままで劇場で上映すると、走査線が邪魔でとても見づらい映像になってしまう。

この技術が今一つ定着しなかったのは、こんなところに原因があるのでしょうね。


このECGシステムを使って、当時のミニチュア特撮としては、かなり大胆な映像にチャレンジしており、中でも白眉は、四方を壁に囲まれたトンネル内を、戦闘機が疾走し壮絶なドッグ・ファイトを展開するシーンです。

このシーンでは従来のピアノ線による操演と、ECGシステムを併用させて、実に迫力ある映像に仕上げています。


実はこのシーンに最大のショックを受けたのが、本家『スター・ウォーズ』の特撮スタッフでした。


『スター・ウォーズ』では、溝の中を戦闘機が疾走するドッグ・ファイト・シーンはあったけれど、トンネルの仲のシーンはなかった。溝よりはトンネルの方が単純な話、難しいし、これをやったのはスゴイことなのです。


日本に先を越されてしまった。これが相当に悔しかったのでしょう。83年公開の映画『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』において、特撮スタッフは、やはり四方を壁に囲まれたトンネルの中での、戦闘機の壮絶なドッグ・ファイト・シーンを展開させます。それも全編フィルムによるアナログ撮影という、より手間のかかる、しかしきめ細やかな映像を作り上げることで、見事にリベンジを果たしたのです。


この日米技術屋魂対決、なんかいいですよね。こういう話、私は好きだな。




原案に石ノ森章太郎先生やら、SF作家の野田昌宏氏が参加していることもあって、ストーリーはしっかりしているし、出演者の方々の熱演も光る。特に成田さんはじめ、悪のガバナス人を演じた方々にはご苦労様と申し上げたいです。皆さん顔を銀色に塗られて誰が誰やら分からない。この銀色の人たちの中に、福本清三さんもいるらしいですが、まったく見分けがつきません。辛うじて見せ場のある曽根晴美さんは分かりますが、あとはわかりませんねえ。

でもそんな中でも、一発でわかったのが天本英世さん、この方はどんな役をやられてもご本人だとすぐわかる(笑)。やはり、稀有な役者さんでしたねえ。




公開当時、私は中坊でした。当時はアメリカの特撮映画が大挙して日本に入って来はじめた時代で、『未知との遭遇』辺りを観てしまうと、日本の特撮なんて恥ずかしいとしか思えなくなってしまっていたもので、この作品のことは最初から馬鹿にし切っていましたね。ですから劇場で観ることはありませんでした。


今にして思います、劇場で観たかったなと。



なかなかの拾い物、といっては失礼かもしれませんが、この映画、良いです。



私は好きだな。










『宇宙からのメッセージ』
制作 植村伴次
   渡辺亮徳
   高岩淡
プロヂューサー 平山亨
        岡田裕介
        サイモン・ツェー
原案 石森正太郎 
   野田昌宏
   深作欣二
   松田寛夫
脚本 松田寛夫
視覚効果 中野稔
光学撮影 デン・フィルム・エフェクト
音楽 森岡賢一郎
特撮監督 矢島信男(特撮研究所)
監督深作欣二

出演

ビック・モロー(声・若山弦蔵)

フィリップ・カズノフ(声・三景啓司)
ベギー・リー・ブレナン(声・岡本茉莉)

真田広之
岡部正純

三谷昇
成瀬正

佐藤允

小林稔侍
中田博久

織本順吉

成田三樹夫

曾根晴美
福本清三

天本英世

ナレーター:芥川隆行

志穂美悦子

千葉真一


丹波哲郎

昭和52年 東映映画

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Unknown (Sarasz)
2016-12-21 06:39:49
1977年といえば、「ヤマト」や「999」が大ヒットしていた時代です。
そんななかでの「惑星大戦争」や「宇宙からのメッセージ」、さらには80年代の「さよならジュピター」の失敗は、一般人の心に「やっぱり日本にSF映画はムリ。アニメの方がいいよ」というネガなイメージを植え付けてしまったと思います。
そしてハリウッドの特撮費用が膨らむにつれ、世界のマーケットを持たない日本は費用面で諦めた感じに…。
でも後に、「だから日本はアニメが発展したのだ」と言われていました。
ただ私は、日本の観客が日本のスペースオペラを楽しめなかったのは、ある種の「こっぱずかしさ」のせいだと思っているのですが…。
非日常設定のSFに、お茶の間ドラマの俳優さんが銀のジャンプスーツで出てるだけで、もう痛々しくて見れないというか…。
そんな生理的感覚で、私も当時日本のスペースオペラが見られませんでした。
さっき検索していて、「さよならジュピター」なんて小松左京さんが私財を投じ、借金を作ってまで製作していたと知って、「なんだか申し訳なかったなぁ…」と思ってしまいました。
学生時代の私は今よりもさらに左巻きな「日本にはムリ!」「日本はダメ!」感覚が強かった気がします…。

「宇宙からのメッセージ」はいい作品なんだ~。
見てみようかな♪
スターウォーズの特撮班が悔しがったというそのシーンも見てみたいです(*'‐'*)♪
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Unknown (薫風亭奥大道)
2016-12-21 08:31:29
Saraさん、こっぱずかしいというのはその通りで、この『宇宙からのメッセージ』も、最初はその感じが強くあるんですが、そこはもう、慣れるしかないです(笑)。銀色の成田三樹夫さんなんか、最初はなんか、痛々しくて見ていられない感じがするのですが、続けて銀色の天本英世さんが出てきた途端に、なんか大丈夫だ、って思ってしまった(笑)天本さんって、こういうのがハマる方なんですよね。天本さんが出てきたら大丈夫になっちゃった。
まっ、慣れてしまえばなんとかなります(笑)。
『さよならジュピター』も三浦友和やら森重久弥さんらに「説得力」がないんですよね。全体的にこじんまりした映画で、宇宙の広大さが感じられない。やはり日本映画では宇宙物は難しいと思われても仕方がなかったと思いますよ。
日本は宇宙よりもやはり、大地の精霊を描く方が得意なんじゃないかな。だから怪獣映画を無くしちゃいけないんです。
『シン・ゴジラ』に続く新しい怪獣映画、頑張って作って欲しいなあ。
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