
アナキン・スカイウォーカーはいかにしてダーク・サイドに堕ちたかを語る物語最終話。この三部作の中では一番出来がいいです。
ここまでの展開をおさらいしますと
若きジェダイ候補、アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、才能あふれる青年でしたが、若さゆえの自信過剰から、自分に厳しく当たる師のオビ=ワン(ユアン・マクレガー)はじめ、ジェダイ評議会に対し、自分を評価してくれない不満を持っていました。それでも自分は修行中だからと、無理して自分を納得させる毎日でした。
そんな中、銀河共和国最高議長のパルパティーン(イアン・マクダーミド)だけは、アナキンを認め、「お前は最強のジェダイになる」と誉めそやします。アナキンは、自分を認めてくれるパルパティーンを信頼するようになっていきます。
それが罠とも知らずに……。
アナキンは子供のころに出会った、惑星ナブーの若き元女王、パドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)と再会、二人は激しい恋に落ちます。
ジェダイの掟では恋愛はご法度でした。恋愛は強い執着を生み、執着はダーク・サイドを呼ぶ扉と成りかねないからです。
しかし、一度ついた恋の炎は、簡単に消せるものではありませんでした。
そんな折、アナキンは故郷に残してきた母が苦しんでいる夢を見、母の危機を察知し故郷タトゥイーンに帰ります。そして母が盗賊タスケン・レイダースに捕らわれたことを知り、彼らの村に潜入、母を救出しようとします。しかし一歩遅く、母はアナキンの腕の中で息を引き取ります。
深い悲しみと激しい怒りは、強い憎しみを呼び、アナキンは村人全員を惨殺してしまう。私怨によって殺戮を行うなど、ジェダイに限らす許されることではありません。
徐々に、そして確実に、道を外れていくアナキン。
母を救えなかった無念から、アナキンはより強い「力」を得ることを希求するようになっていく。
力さえあれば……。それは大変危険な兆候でした。
そして、アナキンとパドメは、だれにも知らせることなく密かに結婚します。
二人は深く愛し合います。しかしこの「愛」がさらなる悲劇を呼ぶ扉となるのです……。

ep3の冒頭、アナキンは一度敗れたドゥークー伯爵(クリストファー・リー)と再度対戦、今度は打ち負かします。
すでに勝負は決し、相手は丸腰、この状況なら、ジェダイの道としてはドゥークー伯爵を逮捕し、裁判にかけるのが常道です。しかし現場に居合わせたパルパティーンは、アナキンにドゥークーを殺すよう促します。
戸惑うアナキン、しかし最後には促されるままにドゥークーを殺してしまう。
アナキンの中に、力を行使することの「快感」が芽生えていました。己の力を行使することで、「正義」が守られるのだ、「道」が正されるのだ。
「平和」が守られるのだ!
独りよがりの正義感。ジェダイの正義とは公のためのもの。しかしアナキンの正義とは「己」のためのもの。
「正義」の意味がすり替わっていることに、アナキンは気が付いていない。
安易な道に転がり落ちていくアナキンを、もはや誰も止めることはできませんでした。

共和国と分離主義派の対立はついに戦争へと発展します。
しかしその戦争を陰で操っているのは、パルパティーン=ダース・シディアスでした。
パルパティーンは戦争事態を利用して、共和国の権力が自分一人に集中するように、議会を操っていきます。
パルパティーンはジェダイ評議会に、アナキンをジェダイに昇進させるよう働きかけますが、ジェダイ評議会はまだ早いと判断、評議員には加えるがジェダイには昇進させないと結論づけます。
納得がいかないアナキン、やはりジェダイ評議会も師オビ=ワンも、自分を信頼してはいないのだ!
ジェダイ評議会はパルパティーンに疑念を抱き、アナキンにパルパティーンをスパイするよう指示します。
我が敬愛する議長を監視するというのか!?反発を抱きつつも、評議会の決定には逆らえないアナキン。
しかしパルパティーンはすべてお見通しであり、アナキンに「ジェダイ評議会は、共和国元老院の乗っ取りを企んでいる」と告げるのです。
そのころアナキンは、妊娠した妻パドメが、お産のときに死亡する夢を見ます。母親のこともあり、不安におびえるアナキン。
母だけでなく、愛する妻までも失ってしまうのか……。
アナキンは詳細を告げずに、ヨーダに相談します。ヨーダは「死は終わりではない。生きるかたちが変わるだけだ。フォースに帰っていくことを祝福すればよい。失うことを恐れるな。それは執着だ。執着は嫉妬と怒り、憎しみを呼び、ダーク・サイドを引き寄せる」と警告します。
しかし今のアナキンに、パドメを失う恐怖を失くすことはできませんでした。
一方パルパティーンは、アナキンの中にある恐怖を見抜き、アナキンに「死をも克服する方法がある」と告げます。
藁をもすがる気持ちのアナキンは、それは私にも学べますか?と尋ねます。
「私のいうとおりにすればよい」パルパティーンはダーク・サイドのパワーを手に入れれば、死をも超え、銀河全体を支配することができると語ります。そして、我こそが
シスの暗黒卿ダース・シディアスであることを明かすのです。
議長がシス!?宿敵が目の前にいる!ライト・セイバーを抜くアナキン。しかし斬ることができない。
「私だけが、パドメを救う方法を知っているのだぞ」と静かに語りかけるパルパティーン。それでもアナキンは、これをジェダイ評議会に報告すると告げ、その場を去ります。
アナキンの最後の理性、でしょうか。
アナキンの報告を受け、メイス・ウインドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)ら数人のジェダイが、パルパティーン逮捕に向かいます。アナキンは急に不安になります。
「私だけが、パドメを救う方法を知っているのだ」パルパティーンの言葉が、アナキンの耳から離れない。
アナキンはついに、パルパティーンの元へ向かいます。
折しも、マスター・ウインドゥがパルパティーンを斬らんとしているところへ、アナキンは飛び込み
「待ってください!ここで殺さずに裁判にかけるべきです!ジェダイの道に外れますよ!」とウインドゥに向かって叫びますが、状況が状況故、そんな悠長なことは言っていられない。ウインドゥは今にもパルパティーンをを殺そうとします。
パルパティーンはアナキンに向かって、いかにも憐れそうに「助けてくれ……」と乞うてくる。今パルパティーンを殺されては、パドメを救えない!
失う恐怖が、執着が、アナキンの理性を吹き飛ばし、アナキンはライト・セイバーを抜きざまにウインドゥの腕を切り落とします。
ここぞとばかりに電撃攻撃をかけるパルパティーン。パルパティーンの電撃により、遥か彼方へ飛ばされるウインドゥ。
ついにアナキンは、ダース・シディアスの手に堕ちたのです。
満足げなシディアス。シディアスはアナキンに、共和国乗っ取りを図るジェダイを全滅させるよう命じます。
「お前は今日からこう名乗るがよい。ダース・ヴェイダーと」
共和国議会はついに、パルパティーン一人に権力を集中させることを「民主的」に承認。ここに共和国は滅亡し、銀河帝国が誕生します。
銀河暗黒時代の到来です。

アナキンがダーク・サイドに堕ちたことを知ったオビ=ワンは、パドメとともにアナキンの元へ向かいます。再会するパドメとアナキン。
アナキンは、ジェダイが共和国を乗っ取ろうしたのだ!悪いのはジェダイだ!自分は戦争を終わらせ、銀河に平和を齎したのだ!と自己を正当化します。
自分は正義を行った。そして愛するパドメを救おうとしたのだ。それを邪魔するやつらは、
全部始末してやる。
力さえあればなんでもできる。
それは正義などではない。
ただの独裁。
もはやアナキンは完全にダーク・サイドに堕ちた。救う術はない。
ライト・セイバーを抜くオビ=ワン。溶岩が激しく流れる星の上、師であり友である二人の、悲しくも凄まじい戦いが繰り広げられます。
死闘の末、アナキンは両足を切断され、溶岩に焼かれます。
「お前が憎い!」とオビ=ワンに向かって叫ぶアナキン。
「お前は自分で堕ちたのだ!」悔し気に叫ぶオビ=ワン。オビ=ワンは弟子であり友であったアナキンが、地獄の業火に焼かれていくのを見るに耐えず、とどめを刺さずにその場を立ち去ります。
そこへやってくる、帝国皇帝パルパティーン。
パルパティーンは焼けただれても未だ息のあるアナキンを、いずこかへ連れていきます。
アナキンがダーク・サイドに堕ちたことを知ったパドメは、生きる気力を失くし、男女の双子を出産すると、それぞれ「ルーク」と「レイア」名づけ、その生涯を閉じます。
同じころ、アナキンはサイボーグ手術を施され、その身その顔を黒い甲冑に包まれた「ダース・ヴェイダー」となって生まれ変わります。
それはまるで、永遠の苦しみの中に閉じ込められた、アナキンの姿の象徴のようです。
ヨーダとオビ=ワンは、産み落とされた双子を帝国に気づかれぬよう、別々のところへ預け、自分たちは身を隠すことにします。
レイアは惑星オルデラーンの王族オーガナ家の養女となり、ルークは惑星タトゥイーンの身内、ラーズ夫妻の元へ預けられました。
ヨーダは沼の惑星ダコバに隠棲。
オビ=ワンはベンと名を変え、人知れずルークの成長を見守ることになりました。
ルークとレイア。それは暗黒に包まれた銀河における、
唯一の、そして
「新たなる希望」でした……。
フォースに均衡を齎す者……。

アナキン・スカイウォーカーはいかにしてダーク・サイドに堕ちたかを語る物語。
これにておしまい。

ふつうは自分の経験からくる「言い訳」的なものか、自分の身近にいる人がダークサイドに墜ちてしまった経緯を自分なりに分析して、心理的に受け入れるためだと思うのですが…。
ルーカスってさ、スター・ウォーズグッズの版権で莫大な富を得るという「陽」によって、映画監督として映画を創造しなくなるという「陰」を背負ったのかなぁ…。
それとも元々実質的な映画監督より、製作の方がよかったのかしら…?
反対に映画を撮り続けたスピルバーグをどう思っているだろう?
ダースベイダーって何の比喩なんでしょいね?
アメリカの映画業界ではプロデューサーの権威がダントツに高い、日本とはそのあたりのシステムが違うんです。監督はプロデューサーの構想を画にする「現場監督」的な位置づけなんです。だからスピルバーグやコッポラのようなお金のある監督はみんな自分でプロデューサーも兼任する。でもルーカスはプロデューサーにほぼ専任した。そこらへんは謎といえば謎かもしれない。
ルーカスにとって、映画ってなんだったんでしょうね。