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 風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画 『復活の日』 昭和55年(1980)

2018-03-24 15:53:02 | 映画










細菌兵器によって人類はわずか半年にして滅びてしまった。



この細菌は寒冷地では活動できないため、南極にいた各国の観測隊員八百数十名だけが生き残ります。


しかし、核ミサイルの自動発射装置がオンになっており、ソ連のミサイルが南極にも向けられていることが判明。折しもワシントンを巨大地震が襲うことが
予知され、これを核攻撃による攻撃と判断したコンピューターが、共産圏に向けて核ミサイルを発射すれば、ソ連からもまた、核ミサイルが自動的に発射されることになる。


地震を予知した日本隊の吉住隊員(草刈正雄)は、アメリカ軍将校・カーター少佐(ボー・スベンソン)とともに、装置を解除するためワシントンに上陸するが……。








小松左京原作によるSF映画『復活の日』。一度滅びた人類は再び立ち上がることが出来るか!?という壮大なテーマの原作に感動した角川春樹氏は、この作品を映像化したいがために、映画産業に参入したと語っていたとか。



さて、この映画最大の要は、なんといっても、草刈正雄演じる吉住がひたすら南へ南へと歩き続けるシーン。ワシントンに上陸したものの装置解除には失敗、カーター少佐は死亡し、地震の影響でついに核ミサイルが発射されてしまった。

そのような状況下、生き残った吉住は南へ向かって歩き続けます。南には、もしもの場合を想定して南極から避難した一部の越冬隊員たち、女性や子供たちが残っているはず。


仲間がいるはず。


仲間の元へ帰るんだ!



その強い想いを抱いて、吉住は北米大陸を横断し南米大陸へ渡り、さらに南米大陸の南端へと向かってひたすら歩き続ける……。



ボロボロの衣を纏った吉住のシルエットが、夕陽を背にして浮かび上がる。この吉住の行動と結末が感動的に決まらないと、この映画は成功しないわけですが、



うーむ、成功しているとは



言い難いなあ。



最終的に吉住は、仲間たちのもとへたどり着くわけですが、このシーン、原作では凄く感動できるシーンに仕上がっているのですが、これがいざ映像化されてみると、


いやはや「読むと見るとは大違い」という奴ですな。



いざ映像化してみると、出会いのシーンがあまりに唐突すぎて「えっ?」となっちゃう。ナビがあるわけじゃないのに、どうして仲間の居場所に正確にたどり着けたの?なんか変、おかしい。

感動よりもそうしたことが先に立って、笑いすらこみ上げてきてしまいます。「んなわけねーだろ!」という嗤い。




惜しいですねえ。このシーンさえクリアされていれば、歴史的な映画となり得ていたかもしれないのに。もう少しなにか、工夫できなかったものか。



惜しい、実に惜しい。



制作に3年を要し、総製作費25億円。世界中でロケを敢行し、南極のシーンは実際に南極で撮影されたもので、木村大作カメラマンの撮った南極の映像は、雄大で素晴らしいものがあります。


チリ海軍から本物の潜水艦を借りて撮影したり、ハリウッドからグレン・フォードやロバート・ヴォーンといった往年の大スターを招聘したり、なにかと話題には事欠かない映画でしたが、いかんせんラストシーンの失敗は痛かった。特に見込んでいた海外マーケットがまったく振るわず、最終的には赤字となってしまいます。これに懲りたのか角川春樹氏は、以後路線を変更、比較的少ない予算で確実な売り上げが見込める「アイドル映画」路線に転換し、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子らいわゆる「角川三人娘」を大々的に売り出していくことになるのです。




まあ、映画としては必ずしも成功しているとは言い難い作品でしたが、よくぞこれほどの期間をかけて、これほどの製作費をかけて、これほど壮大な映画を作り上げたなと思いますね。



私はここに、「チャレンジャー」の雄々しさを見る思いがします。




当時日本映画は長らく低迷しており、そこに彗星の如く現れた角川映画が、日本映画界に大いなる「喝!」を与えたであろうことは疑いようがなく。

角川映画がなければ、日本映画の低迷はもっと長く続いたかもしれない。


そういう点からも、角川映画というある種の「ムーブメント」は、改めて評価されてしかるべきなのだろうと、思いますね。



当時、映画通を気取る者たちはこぞって角川映画を批判したものです。それが「トレンド」だとばかりに、彼らは角川映画を批判し、自分は映画を「分かっている」とアピールした。


私なぞは「通」でもなんでもないので、素直に角川映画を面白がって観ておりましたがね。



いつの世も「魁」というのは、攻撃の対象になりやすい。



世の魁の皆さん、どうか負けないで。






頑張れ!











『復活の日』
制作 角川春樹
原作 小松左京
脚本 高田宏治、深作欣二、グレゴリー・ナップ
撮影 木村大作
音楽 羽田健太郎
主題歌 ジャニス・イアン「ユー・アー・ラブ」
監督 深作欣二

出演

草刈正雄

オリビア・ハッセー

渡瀬恒彦

多岐川裕美

ボー・スベンソン
チャック・コナーズ

夏八木勲

森田健作
永島敏行

丘みつ子
中原早苗

ヘンリー・シルヴァ
エドワード・ジェームズ・オルモス

ロバート・ヴォーン

グレン・フォード

緒形拳


ジョージ・ケネディ

昭和55年 角川春樹事務所
東宝配給

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Sarasz)
2018-03-24 19:42:22
中学生の時に観ました。
正直、どこに「復活」の要素があったのか、釈然としなかったような…。

でも大道さんが「復活」してくれて嬉しいな😄

また映画の記事書いてくださいね〜🎵
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Unknown (薫風亭奥大道)
2018-03-25 19:17:37
Saraさん、そうだね、復活ということの意味をもうちょっとはっきりさせた方がよかったね。おそらくは吉住が仲間の元に帰ったことで、細菌の脅威はなくなっていることがはっきりしたということで、生き残った人々が再び北へ進出し始める。人類文明が再び歩みはじめる。そうした意味での復活なのかなとも思いますが、どうもはっきりしませんね、その辺は。
やはりラストシーンの失敗は、痛いなあ。
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彼女の髪も黒かった… (うぼで)
2019-07-08 20:07:36
あの太陽の前を横切るシーン、右から左へ歩いてたらラストシーンと上手く繋がったのでは…。私が気になったのはそこだけです。主題歌はいい曲だし、原作がすごすぎて製作に手が負えなくなったのかもて感じました。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2019-07-10 15:22:01
うぼでさん、はじめまして。そうですね、頑張ったとは思うんですけどね。原作が凄すぎたということはあるかもしれません。
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黒い潜水艦 (うぼで)
2019-07-15 14:00:38
>奥大道さんへ コメントご返信ありがとうございました。サイトを見ると色々な方がこの作品を評論?してくれてて参考になります。ペンギンやアシカて近隣の動物園でも見れますが、南極本土でのを鑑賞出来るのも本作の良さだと思いました。
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隠れオーストラリア…? (うぼで)
2019-07-26 10:31:48
最近、チリ産のワインがもてはやされてるそうです。私の地元のスーパーにも置いてました。本作公開時も黒い潜水艦がチリ海軍のだて話題になりましたし、もしかしたら面白い国なのかも知れませんね(笑)。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2019-07-28 12:55:03
うぼでさん、ワインですか~。飲まないからなあ~(笑)
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Unknown (うぼで)
2019-11-16 17:51:03
先日、兵庫県の植村直己冒険館に出掛けました。地球のほぼ全ての極地を制覇したこの人の功績に触れている内に本作を思い出しました。
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ラ・ツゥール博士助けて…(!) (うぼで)
2020-03-03 10:30:18
最近、コロナウイルスが発生しましたね。本作のMM‐88を思わせます。怖いので効き目のあるワクチンを作って欲しいです…。
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