本日12月14日は陽暦と陰暦の違いこそあれ、赤穂浪士が吉良邸に討ち入った日。
今日の日に、この忠臣蔵映画史上最高傑作とも称される本作品を紹介できるとは、なんともありがたい限りです。
べつに計算したわけじゃないのですよ、気が付いたらちょうどその日だったわけで、なにやら縁のようなものを感じますねえ。
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最高傑作という呼び声は伊達じゃありませんね。
忠臣蔵は非常に長い話なので、映画にするとどうしてもダイジェスト感が漂ってしまうのですが、この映画にはほとんどそれがありません。満遍なく名場面を配置しながら随所に映画オリジナルの展開を加えて新味を見せ、しかしながら全体としては王道の忠臣蔵から外れていないという、このストーリー運びの見事さには思わず唸ってしまいます。
セットの作りも絢爛豪華、特に松の大廊下のセットはとんでもなくデカい!このデカいセットをクレーンに乗ったカメラが縦横無尽に動き回りつつ、固定カメラで内匠頭(加山雄三)と上野介(市川中車)の表情をじっくりと撮っていく。ワンカットごとの映像設計、色彩設計が見事に計算されていて、ため息が漏れてしまう素晴らしさ。
いやもうね、たまらんですよ、これは。
大石内蔵助役の松本幸四郎(後の松本白鸚)さんがまた素晴らしい。事に及んで飄々とし泰然としつつも、実は大いに葛藤し悲しんでいる。その多面的な部分を実に見事に演じており、大石内蔵助という人間に深みを与えています。
白鸚さん演じる大石内蔵助は、なんというか、人間のどうしようもなさだとか、起こしてしまう宿業のようなものを、透徹した「優しい」目線で見つめ、受け入れているような感じなんです。それでいて上野介を打ち取るときの果断なふるまいには鬼のような怖さをも感じさせ、池波正太郎先生がこの方をモデルにして『鬼平犯科帳』を書いたのいうのが、なにやら理解できた気がしましたね。
ちょっと稀有な役者さんだなと、思わせていただきました。
対する吉良上野介と側用人・柳沢吉保(山茶花究)の悪コンビがまたいい。特に歌舞伎役者の市川中車演じる上野介のまあ憎々しいこと。これでもかという悪人顔で、イケメン加山雄三の内匠頭を攻める攻める!ここまで徹底した悪を演じるのも、役者冥利に尽きるでしょうね。
同じく歌舞伎役者・中村又五郎さん演じる5代将軍綱吉は、ぼんやりした歩き方で、ぼんやりとしゃべる見事なバカ殿ぶり。これじゃあ柳沢の思い通りになってもしゃあないわ、と思わせます。
加山さんの内匠頭はイケメンだが大の堅物で、賂などを送るのが大嫌い。だから上野介にもわずかな進物しか送らなかったのですが、これが欲深な上野介には気に入らない。事あるごとに内匠頭に向かって賂を送るようせびる始末。あんたどんだけ欲深やねん!加山内匠頭は心底上野介を嫌っているのが、その表情によく出るんです。これが益々気に入らない上野介。
稲垣浩監督の演出は、それぞれの登場人物の関係性が、短い時間の中ですぐにわかるような演出を心掛けたようです。人物同士の関係性が分かりにくいと、観客の側がストーリーに入り込めなくなってしまいますからね。エンタテインメントはこうでなくちゃ。
人間ドラマの部分も充実してます。萱野三平(中村萬之助、現・中村吉右衛門)の切腹は映画オリジナルの展開でしたが、なかなか魅せてくれます。「大石東下り」の場は、垣見五郎兵衛は登場せず、代わりに森重久弥演じる本陣の主人が大活躍。ええっ?こうくるかい!?というような意外な展開ですが、話の本筋、テーマは外しておらず、見事という他ありません。
「南部坂雪の別れ」はオーソドックスな展開。吉良の間者が入り込んでいることを察知した内蔵助は本心を告げず、亡き先君の正室・搖泉院は怒って席を立つ。内蔵助は一冊の書簡を戸田の局に預け、雪の中を去っていく。
内蔵助が預けた書簡を奪おうとする間者、それを阻止する戸田の局。その書簡には、大石以下赤穂浪士たちの真の目的が!
それにしても、搖泉院に司葉子。戸田の局に草笛光子。吉良の間者に白川由美って、なんて豪華な布陣だ!
そうして愈々討ち入り。お約束の山鹿流陣太鼓は鳴らさず、浪士たちは静かに吉良邸に侵入すると、やにわに「吉良殿の身印頂戴に参上仕った!」の大音声。大チャンバラの始まり。
映画オリジナルの展開を加えつつ、実に迫力のある殺陣を魅せてくれます。当時の役者さんは皆さんホントに殺陣が上手い。今の役者が束になってかかっても、こういう画にはならないだろうなあと思うと、なにやら寂しい気持ちになってしまいます。
吉良上野介を捕らえ、潔く切腹を迫る内蔵助ですが、上野介がそれを受け入れるはずもなく、「やむを得ん」と鬼の表情で短刀を突き刺す内蔵助。
冬晴れの空の下、吉良の身印を掲げ、亡き殿が眠る泉岳寺へと向かう一行。これを見物する江戸庶民。かくて映画は大団円を迎えたのであります。チャンチャンチャーン!
ー完ー
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忠臣蔵映画史上最高傑作の呼び声は伊達じゃありません。これはホントに素晴らしい作品です。
私の大大大大おススメ!機会があれば是非にも是非にも是非にも!
御覧あれ。
『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』
制作 藤本真澄
田中友幸
稲垣浩
脚本 八住利雄
音楽 伊福部昭
殺陣 久世竜
監督 稲垣浩
出演
大石内蔵助:松本幸四郎(のちの松本白鸚)
浅野内匠頭:加山雄三
堀部安兵衛:三橋達也
堀部弥兵衛:小杉義男
大石りく:原節子
大石主税:市川團子(現・市川猿翁)
片岡源吾右衛門:市川段四郎
高田軍兵衛:宝田明
岡野金右衛門:夏木陽介
不破数右衛門:佐藤允
間十次郎:高島忠夫
吉田忠左衛門:河津清三郎
寺坂吉右衛門:加東大介
岡島八十右衛門:平田昭彦
磯貝十郎左衛門:佐原健二
大高源吾:小泉博
竹林唯七:藤木悠
矢頭右衛門七:市川染五郎(現・松本幸四郎)
萱野三平:中村萬之助(現・中村吉右衛門)
搖泉院:司葉子
戸田の局:草笛光子
吉良の間者:白川由美
脇坂淡路守:小林圭樹
多門伝八郎:有島一郎
梶川与惣兵衛:藤田進
伊達左京亮:久保明
上杉綱憲:太刀川寛
本陣の主人:森重久弥
大工の平五郎:フランキー堺
平五郎の妹:星由里子
お軽:団玲子
柳沢吉保:山茶花究
小林平八郎:中丸忠男
千坂兵部:志村喬
勅使1:上原謙
勅使2:天本英世
徳川綱吉:中村又五郎
土屋嘉男
伊藤久弥
新珠美千代
淡路恵子
水野久美
池内淳子
浜三枝
沢村いき雄
堺三千夫
柳屋金梧楼
東八郎
南利明
沢村貞子
土屋主税:池辺良
吉良上野介:市川中車
俵星玄蕃:三船敏郎
昭和37年 東宝映画
正直、食卓で片膝立ててるような映画を、日本映画としてカンヌとかに持っていかないで〜、とかたまに思ってしまいます…。
戦後の芸能界にも色んな事情がありますが、そろそろ在日の方なら誇りを持って在日としての文化作品を作る、日本人の製作者をちゃんと入れて伝統的な日本の作品を作るということをしないと、「誰も見ない」=「製作されない」事態に陥り、映画ドラマの衰退、果ては自分たちの困窮になるということにもっとハッキリ気付いて欲しいなぁと思いますね…。
さっき「時代劇の衰退」に関するサイトを色々読んでいて、そこで感じたことをここに書いちゃった💧
すみません。大道さんの記事と関係ないので、なんでしたら削除して下さい〜🙇
最近いろいろおかしなことになってきてますよね。コンビニとかいっても、店員さんの礼の仕方……それ日本じゃねーだろ!ああやって浸食してくるのかと思うと、なにやら背筋が寒くなります。
みんな昔の時代劇を見て、正しい日本を学ぼう!
正しい日本式お辞儀を観たいなら、ももクロを観ましょう。あの子たちのお辞儀はホントに綺麗だ!
あれっ?そういう話だっけ?……(笑)
お兄さまが、とってもお勧めのご様子なので(笑)、是非TSUTAYAを通る事がありましたら、借りて見て見たいと思います( ✌︎'ω')✌︎ この顔文字、今年の顔文字大賞か何か取ったみたいですよ!
真田丸もいよいよ最終回ですね〜〜
古い忠臣蔵映画なら、片岡千恵蔵主演の『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』なんかもおススメですね。片岡千恵蔵の大石内蔵助と市川歌右衛門の脇坂淡路守による「赤穂城明け渡し」のシーンは涙無くしては見られません両巨頭の演技「対決」は見どころですね。吉良上野介には進藤英太郎。こちらも見事な悪役ぶり。
萬屋錦之介の『赤穂城断絶』はアクション満載でちょっとイメージが違うかも。千葉真一演じる不破数右衛門と渡瀬恒彦演じる小林平八郎との壮絶な殺陣シーンはなかなかの迫力。監督の深作欣二と萬屋さんとの意見が合わず、映画は中途半端な出来になってしまっているのが残念。
あとはやっぱり、映画じゃなくてテレビドラマになるけど、里見浩太朗先生主演による『忠臣蔵』ですね。これはいい!オーソドックスではあるけれどツボをちゃんと押さえた演出で、忠臣蔵入門編的な味わいのあるドラマですね。
忠臣蔵見てね~。