風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画 『IT(イット)』 2017

2018-04-23 08:42:55 | 映画










※思いっきりネタバレあり。




アメリカン・ホラーの帝王、というより、いまや世界のホラー小説の帝王といっていいスティーヴン・キング。



最近はまったく読まなくなりましたが、若い頃は大ファンで、当時出版された作品はほぼすべて読んでました。



なかでもこの『IT(イット)』は大好きな作品でした。なにがいいって、泣けるんですよね。



これは一言で云えば友情の物語なんです。友情、絆、信頼、勇気をもって恐怖と戦い、これに打ち勝つというのがテーマで、ある意味とてもベタなテーマなわけですが、ホラーという体裁をとることで、このベタなテーマが思いっきりこちらに響いてくる。



アメリカの田舎町で暮らす7人の少年少女たち。彼らはそれぞれに問題を抱えています。どもり癖のある子や喘息持ちの子。親に虐待を受けていたりといった問題から、黒人、ユダヤ人といった人種的、宗教的問題を抱えている子、あるいは近眼でいつも無駄口減らず口ばかり叩いている子に、読書好きでいつも図書館に入り浸っている太り気味の子など、それぞれの「問題」を抱えた子供たち。



学校へ行けばいじめっ子に目を付けられるこの子たちは、自らを「ルーザーズ(負け犬)クラブ」と名乗り、そのある意味奇妙な友情を深めていきます。


やがて彼らは、この町の地下に巣食う、子供ばかりを狙う怪物の存在を知ることになります。ルーザーズクラブはその「友情」という絆と、「勇気」という力を持って怪物に戦いを挑んでいくのです。



地下に巣食う怪物「ベニー・ワイズ」は、不気味なピエロの姿をして子供たちの前に現れますが、このピエロが怪物の正体というわけではありません。その本当の姿、どこから来たのかはまったくわからない謎の怪物。


怪物は子供ばかりを襲い、その恐怖心を餌にしています。ルーザーズクラブの面々も最初は怖がってばかりで、ベニー・ワイズの餌食となりそうになるのですが、お互いを思う「友情」が「勇気」を生み、恐れを克服して怪物に立ち向かっていくようになる。自分のことを怖れない子供たちに戸惑うベニー・ワイズは、やがて逆に恐怖を覚え、その身体は朽ち果て、地下深くへと落ちて行く。



ベニー・ワイズは死んだのか?それはわからない。もし再びベニー・ワイズが現れたら、その時はもう一度集まって戦うことを誓い合い、彼らはそれぞれの道へと旅立っていきます。



映画はここまで。しかしスティーヴン・キングの原作にはまだこの後があるんです。


実は物語の要は、この後の展開にあるといっていい。


大人となったルーザーズクラブの面々は、大人となってもそれぞれの問題を抱え、悩み苦しみながら生きている。そんな彼らのもとへ届けられる、かつての仲間からの知らせ。

「IT(それ)が現れた」


子供のころにはなかった様々なしがらみやらをすべて捨てて、再び結集するルーザーズクラブ。果たして彼らは子供のころのように、「友情」と「勇気」を持ってベニー・ワイズに立ち向かえるのか!?



まあですから、今回の映画はあくまで「前哨戦」に過ぎません。本当の『IT』はこの次にこそあるといって良いわけです。



制作サイドは続編、というか完結編を初めから作るつもりで制作に臨んだに違いなく、そのせいか実に気合の入った良作に仕上がっています。ホラーとしても、泣ける映画としてもレベルが高い。


子供たちが良いんですよね。子供たちは今回の撮影を通して本当に友情を育んだのだろうなということが、画面を通して伝わってきて、これが映画全体に良い雰囲気を与えているんですね。

しかしなんといってもスゴイのは、怪物「ベニー・ワイズ」を演じた俳優、ビル・スカルスガルドの演技です。ピエロのメイク越しの不気味な表情、セリフ回し、全身の筋肉を駆使しての不気味な動き。その全身全霊を込めて見事に怪物を演じ切っています。

ほとんどCGもスタントマンも使うことなく、ほぼ全シーンをご自分で演じ切っており、現場ではぜいぜい息を切らしながらの撮影だったとか。その演技はある意味感動的ですらあり、これも泣かせる要素の一つ、かも。


この方の演技を是非にももう一度観てみたい。と思ったら、すでに来年、続編の公開が決定しているそうな。これは楽しみ。


みなさんいいですか、今回の作品はあくまで「前哨戦」ですからね、本当の『IT』はこの次の作品にこそあるんですからね。


今回の作品を観たならば、次も観なけりゃなりません。それで初めて物語は完結するんですから。だから絶対次回作も見てくださいね。



もし観なければ、ベニー・ワイズに



「浮かべられ」ちゃうぞ……。

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4 コメント

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Unknown (Sarasz)
2018-04-23 23:15:01
ハハハハハハ!(≧▽≦)

は〜い、わかりますた〜(^.^)/~~~

私もね、80年代までのキングが好きだったんだけど、「イット」と「スタンド」だけ読んでないの。
長すぎたのかな〜。笑

なので1990年のテレビ版を観たんだけど、ラストで「えええ〜っ(¯―¯٥)」となった記憶が…。
ダメな戦隊ものの怪獣キャラみたいな…。
おっとっと、お口チャック(^_^;)
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Unknown (薫風亭奥大道)
2018-04-24 14:10:15
Saraさん、私は逆にそのテレビ版はみてないんです。あまりにも評判が悪かったので、これは観ない方がいいなと(笑)
スティーヴン・キングの作品で最初に読んだのは「ファイアスターター」だったかな。のちにドリュー・バリモア主演で映画化された奴です。ちなみに映画の邦題は『炎の少女チャーリー』という、噴飯もののタイトルでしたね。
スティーヴン・キングの名前自体は、『キャリー』や『シャイニング』の原作者として知ってはいたけど、その辺の作品は映画公開時には翻訳されていなかったんじゃないかな?随分後になってから文庫化されたような記憶がありますね。だからキング作品は上述した「ファイアスターター」から始まって、次に読んだのが吸血鬼もの「呪われた町」だったような気がする。この辺で完全にハマってしまった。「クージョ」とか「クリスティーン」とか、大好きだったなあ。
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Unknown (Sarasz)
2018-04-25 04:51:28
「炎の少女チャーリー」観たなぁ。
私はそんなにキライじゃなかったよ。笑
ワイヤーで釣られた火の玉が、ギューンって飛んでいく様が、昭和の特撮っぼくって。笑
あの小説の「超能力を使うと鼻血が出ちゃう」設定って、その後の多くの超能力作品に影響を与えたと思う。

「クリスティーン」にね、感謝祭にターキーを食べて、その次の日に残ったターキーをサンドイッチにする、みたいなシーンがあって。
「そ~か、やっぱりアメリカでも食べきれなかったものを翌日のお弁当にするんだ〜」なんて、どーでもいいところに感心したりして。
でもキングは、リアルな日常に非現実的な恐怖が侵入してくるさまを描写する作風だから、アメリカ市民のリアルな日常を知れる作品でもあったんだよねー。
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Unknown (Sarasz)
2018-04-25 05:12:28
「ファイアースターター」って、政府の組織の薬物による超能力者開発実験による被害者の話じゃない?
ある意味、CIAのウルトラ計画みたいな。

それで話の最後にチャーリーが、その事実を世間に知らしめるために「ローリング・ストーンズ誌」の出版社を訪れるところで終わるんだよね。
それをね、また何か別のアメリカ作品でね、登場人物がこんな風に叫ぶシーンがあるの。
「いいか、ローリング・ストーンズ誌ってのは、あの『ファイアースターター』でチャーリーが真実を告白するために、最後に駆け込んだ出版社なんだぞ!?」って。
それくらい、ローリング・ストーンズ誌は真実を伝えるメディアだと信頼されていた、それが今じゃ……って、嘆くシーンで。
ローリング・ストーンズ誌をあまり知らない、むしろロック雑誌だと思ってる日本人には「へえ、そうなんだ?」みたいな感じだったなー。

とにかくキングよもやま話は尽きないの〜
(*^。^*)
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