今年は『赤毛のアン』出版百周年と聞いていた。本土とこの島、P.E.Iを結ぶ13キロのコンフェデレーション・ブリッジは流線形の美しい橋だ。プリンス・エドワード島公園の森林の紅葉、鏡のような淡水の池、湿地に反映する木々や家々に溜め息をつき、波打つ坂道からちょっと外れて迷い込めば赤土の農地と農場が現れ、まさしく百年前で時が止まったような美しい童話の世界を味わいつつモンゴメリの故郷、アンの里、カヴェンディッシュへ。
海外の旅を始めてから結構長い私だが短時間に何十人もの日本人にあった場所はここ、赤毛のアンの家、Ann of Green Gablesが最高だろう。10人以上のグループが4組、その後に続いたJTBグループは36人、瞬く間に80人以上に会った。日本の旅行業界の宣伝の上手さもあろうが、アンの世界が好きな日本の読者たちはモンゴメリの著作をよく読んできており、展示物のエピソードを語りながら見学していた。作者が少女の頃Green Gables( 緑の切妻屋根 )の周りの森や農園を散策し、空想と想像力を発揮して「恋人たちの小径」や「お化けの森」などと命名したここはまさしく百年前の風景であろう。絵本で見たままの世界がそこにあった。モンゴメリの柔軟で空想力の飛びぬけた感性を通して表現された物語のなかに広がる世界を日本からの多くの若者たちと共有できたのは嬉しいひと時だった。当時を再現した納屋で日本人女性たちとアン少女の三編みのついた帽子を被りカメラに収まった。(続く)彩の渦輪