私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




François Couperin: Pièces de clavesin
Erato 2564 68966-3
演奏:Olivier Baumont (clavecin)

フランソア・クープラン(François Couperin, 1668 - 1733)は、フランスの音楽一族の中で特に傑出した者として、「大クープラン(Couperin le Grand)」と呼ばれている。最初の音楽教育は、父親のシャルルと叔父の一人、フランソアから受けた。さらにもう一人の叔父ルイの作品もこの間に知った。1685年に父の後を継いで、パリのサン・ジェルヴェ教会のオルガニストになった。この地位は代々クープラン一族が担っており、大クープランの後も従兄弟のニコラ・クープランが就いている。1693年には、師のトムリンの後を継いで、王宮礼拝堂のオルガニストに就任し、1717には王宮楽団の常任楽士に任命された。時のフランス国王は、ルイ14世で、フランソア・クープランの任務は多岐にわたっており、王家の音楽教師をも勤め、1年の内3ヶ月王宮の楽団の指揮とオルガニストに従事するとともに、サン・ジェルヴェ教会のオルガニストも続けていた。
 フランソア・クープラン(以降クープランと記す)は、コレッリのトリオソナタをフランスに導入した事で知られているが、最も大きな貢献は、鍵盤楽器のための作品に於いてである。パリで1713年から1730年にかけて出版された4つのクラヴサン(チェンバロ)曲集には、230曲あまりの曲を含み、クラヴサン独奏あるいは小編成の器楽アンサンブルで演奏出来る。クープランのクラヴサン曲は、通常の組曲の体裁を取って居らず、「オルドル(ordres)」と名付けられた一群の舞曲や特徴ある名を付けられた曲から構成された単位からなっている。1713年に出版された最初の組曲集は5つのオルドルからなっており、まずアルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグという通常の組曲同様の舞曲から始まっているが、その後に様々な名前の曲が加えられている。最初と最後の曲が同一調性で、その間に様々な調性の曲が含まれている。例えば第1オルドルは、ヘ長調の「8月の(L’Auguste)」と名付けられたアルマンで始まり、同一調の「サン・ジェルマン・アン・レイの喜び(Les plaisirs de Saint Germain en Laÿe)」で終わる、合計18曲からなっている。 第2オルドルは23曲、第3オルドルは13曲、第4オルドルは4曲だが、第2曲の「バッカナール」は3部からなっている。第5オルドルは14曲からなっている。
 1717年には2番目の曲集が出版され、第6オルドルから第12オルドルで構成されている。その後1722年に3番目の曲集(第13オルドルから第19オルドル)、1730年に4番目の曲集(第20オルドルから第28オルドル)が出版された。さらに、1716年に出版した「クラヴサン奏法(L'Art de toucher le clavecin )」にもアルマンドと8曲の前奏曲が含まれている。
 このように膨大な曲からなるクープランのクラヴサン曲の全曲を聴くことはそう容易ではない。そこで今回は、これらの曲集のダイジェスト版とも言えるCDを紹介する。演奏しているオリヴィエ・ボウモン(Olivier Baumont)は、1960年フランス生まれのチェンバロ奏者で、パリのフランス国立高等音楽・舞踏院で学び、その後ユゲット・ドレイフュス、ケネス・ギルバート、さらにグスタフ・レオンハルトの教えを受けた。ボウモンは、フランスを拠点にクープランなどフランスの音楽家の作品を中心とした演奏活動を行っており、それと並行して、2001年よりパリのフランス国立高等音楽・舞踏院のチェンバロの教授の任にある。
 ボウモンは、エラート・レーベルに1991年から1994年にかけてクープランのクラヴサン曲の全曲を録音しており、現在10枚組のCDで発売されているが、今回紹介するCDは、この全集から14曲を選び、それに加え、フランソア・ダジンエクール(François Daginecour, 1684 - 1760)、ルイ・デ・ケ・デルヴァロア(Louis de Caix d’Hervelois, c. 1670 - c. 1760)、アントアーヌ・フォークレイ(Antoine Forqueray, 161/2 - 1745)の3人による、「クープラン」と題した曲が収録されている。
 演奏しているクラヴサンは、録音された年によって異なり、1991年録音の第4曲集はアンソニー・シドニーが1636年のリュッカース作、1763年エムシュ改造の楽器に基づき製作したものを、1992年録音の第3曲集はウィリアム・ダウドが1730年にニコラ及びフランソア・ブランシェが製作した楽器を複製したもの、1993年録音の第2曲集はジョン・フィリップスが1646年リュッカース作、1756年ブランシェ、1780年タスカン改造の楽器をもとに複製したもの、とクラヴサン奏法からの曲はアルベール・デランの1768年作の楽器、そして1994年に録音された第1曲集と3人の作曲家によるクープランと題された曲は、エミール・ジョバンが17世紀のフレンチモデルをもとに製作したクラヴサンが使われている。
 ボウモンの演奏は、当時のフランス音楽の特徴と言われる、同一音価が続く場合には、それらを均等にではなく付点音符を交えたように弾く点や装飾音を豊富に加えるなど、フランスのクラヴサン演奏の正統的な奏法によっている。
 このCDに収録されている曲は僅かで、これだけでクープランのクラヴサン曲の真髄に触れたとは言えないだろう。ボウモンのCD10枚の全集は、6,000円台で購入出来るようなので、全曲踏破に挑戦してみても良いかも知れない。

発売元:Erato, Warner Classics and Jazz



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