Nobony’s Jig: Mr. Playford’s English Dancing Master
Alpha 502
演奏:ル・ウィッチ
17世紀のイギリスで流行していたカントリー・ダンスは、宮廷仮面劇(マスク)や劇場での公演の影響を受けたものであった。元々はイギリスの各地、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズで踊られていた民舞とその音楽がロンドンにもたらされたものであった。ロンドンで音楽関係の出版業と書店を営んでいた、ジョン・プレーフォード(1623 - 1686)が1651年に出版したThe English Dancing Masterの初版には、105の踊りのステップや身振りの説明とそれぞれの踊りのための曲が収められていた。この本は非常な好評を博し、改訂を重ねながら1728年までに計18版が発行された。改訂版発行に際しては、流行らなくなったダンスを除外し、新しいダンスを追加した。第2版からは、表題のEnglishが除かれ、The Dancing Masterとなった。
その初版の表紙*とタイトルは次の通り:
The English Dancing Master: OR, Plaine and easie Rules for the Dancing of Country Dances, with the Tune to each Dance.
LONDON
Printed by Thomas Harper, and are to be sold by John Playford, at his Shop in the Inner
Temple neer the Church doore. 1651.
実際の踊りの説明と曲を、Daphneを例としてあげる**:
演奏をしているLes Witches”は、フランスのグループで、5名の奏者からなっている。ヴァイオリン、各種のリコーダーとフラウト・トラベルソ、リュートとギター、ヴィオラ・ダ・ガムバ、チェンバロとシターン、そして打楽器の様々な組み合わせで演奏している。曲はThe English Dancing Masterからの曲だけではなく、またこの本にあっても演奏には他の曲集からとっているものがある。たとえば、”Paul’s Steeple(セント・ポール聖堂の尖塔)”は、1684年に同じくジョン・プレイフォードによって出版された、The Division Violinからとられている。全体としてその演奏は、17世紀の様式を感じさせるものである。
冒頭の曲、”Nobody’s Jig, Mr. Lane’s Maggott...”は、当時の曲そのものではなく、それらに刺激されて、様々な舞曲や歌謡の旋律を自由に構成した、文字通り「誰のものでもないジグ」である。この曲は、ルネッサンスからバロック初めの舞曲の色合いが強く認められる。収められている曲の中には、先に挙げた”Paul's Steeple"のほか、”Daphne”や”Bravade”など、当時のアマチュア音楽愛好家のための曲集にも多く登場するものが多くある。