私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 



French Music for Hurdy-Gurdy
Focus 932

演奏:ロバート・グリーン(ハーディー=ガーディー)、エヴァ・レジャヌ(リコーダー)、ピーター・ミドルトン(バロック・フルート)、デーヴィット・ウィルソン、エリザベス・ゲーヴァー(バロック・ヴァイオリン)、メアリー・ティルトン(チェンバロ)、シェリー・テイラー(バロック・チェロ)

ヴィエル・ア・ルー(単にヴィエルとも言う)は、11世紀のヨーロッパで作られ、ルネサンス時代を通して広く愛用された楽器であった。しかしその後は農民や乞食の楽器と蔑まれるようになった一方、18世紀のフランスでは、アマチュアのための楽器として、特に女性達にもてはやされ、一流の音楽家による多数の曲が流布していた(図版1参照)。

図版(部分):Johann Christoph Weigel, “Musicalisches Theatrum”, Faksimile-Nachdruck herausgegeben von Alfred Berner, Bärenreiter Kassel, Basel, London, New York, 1961, Blatt 36 “Leyrerin”

 ヴィエルは通常、ギターのような形をしていて、ヴァイオリンなどの弓で奏する位置に木の円盤があり、その側面に松ヤニが塗られ、その円盤に取り付けられたハンドルを回転することによって弦をこすって音を出す。棹に当たる部分には弦を跨ぐタンジェントと呼ばれる部品があり、それに取り付けられた鍵盤を押すことにより、弦を押さえ、音程を決めるとともに、円盤に接触して音を奏でることになる。通常6本の弦が張られ、そのうち2本がユニゾンで、旋律を奏するために用いられる。鍵盤の音域は、通常2オクターブほどである。他の4本の弦は、そのうち3本が円盤に触れて、持続音を発する。ちょうどバグパイプのドローン管の役割を果たす。このCDの解説によると、ドローン弦で得られる調性は、ハとトの長短調であるという。フランスやハンガリーの楽器では、バズィング・ブリッジと呼ばれる機構があって、円盤を回転させるハンドルの回転を変えることにより、弦がブリッジに触れてうなりを生じる。これによってリズムを刻むことが出来る(図版2参照)。

図版2:作者Fenevadにより、英語版ウィキペディアにアップロードされた、パブリック・ドメインの図版(http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Hurdyparts.png)。

 ここで紹介するCDは、インディアナ大学音楽科アーリー・ミュージック研究所が制作しているFOCUSレーベルである。収録されている曲は、フランソア・クープラン(1668 - 1733)の作品を編曲した独奏曲や、ミシェル・コレット(1709 - 1793)、ジャック・オーベール(1689 - 1753)、ジョセフ・ボーダン・ドゥ・ボアモルティエール(1689 - 1755)そのほか18世紀に活躍したフランスの作曲家達のヴィエルとリコーダー、フラウト・トラベルソ、ヴァイオリン、通奏低音などの編成の曲である。ヴィエルは単純だが和音も奏することが出来るので、独奏はもちろん、様々な独奏楽器との合奏によって、様々な響きを楽しむことが出来る。
 奏者については、解説書に何も書かれていないが、いずれもインディアナ大学の音楽科の教師達ではないかと思われる。こういう極めてマイナーな楽器の演奏をCD化するのは、商業的なメジャー・レーベルのみならず、特定の分野に特化したマイナー・レーベルでもなかなか難しいことと思われ、この様な教育機関によるCD化は、筆者のような好奇心の強い、人によってはゲテモノ好きと思われる人種にとっては、誠にありがたい企画である。
 ただ、そのためになにがしかの出費をして購入する人は少ないと思うので、この種のCDこそ、公共の図書館などに備えてほしいものである。

発売元:Early Music Institute, School of Music, Indiana University
FOCUS Recordings


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