私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Wolfgang Amadeus Mozart: Overtures
Sony Classical SK 46695
演奏:Tafelmusik, Bruno Weil (Conductor)

序曲は、フランス語の開始を意味するouvertureが語源で、劇音楽の始めに置かれた楽曲が起源とされる。イタリアではジャコポ・ペーリ(Jacopo Peri, 1561 - 1633)のユーリディーチェ(Euridice, 1600)やモンテヴェルディのオルフェオ(1607)などがその初めと考えられる。その後17世紀から18世紀にかけて、イタリアやフランスのオペラの序曲の形式が出来上がり、ドイツ・オーストリアでは特にイタリアの影響の許にグルックの序曲が成立する。これを継承したのが、モーツァルトのオペラの序曲と言うことが出来るだろう。モーツァルトの序曲は、おおむねソナタ形式を取っている。当該オペラと動機や主題を共有するものもあり、オペラの冒頭へ切れ目無く繋がって行く場合もある。これらの序曲は、オペラが上演される場合はもちろん、オペラ自体の上演があまりされないものも含め、独立した管弦楽曲として演奏されることも多い。
 今回紹介するCDには、後期のオペラ、「イドメネオ、レ・ディ・クレタ(Idomeneo, Rè di Creta, 1780年 - 81年)」(KV 366)、「後宮からの逃走(Die Entführung aus dem Serail, 1781年 - 82年)」(KV 384)、「劇場支配人(Der Schauspieldirektor, 1786年)」(KV 486)、「フィガロの結婚(Le Nozze di Figaro, 1786年)」(KV 492)、「ドン・ジオヴァンニ(Don Giovanni, 1787年)」(KV 527)、「コジ・ファン・トゥッテ(Cosi fan tutte, 1789年 - 90年)」(KV 588)、「ティト王の慈悲(La Clemenze di Tito, 1791年)」(KV 621)、「魔笛(Die Zauberflöte, 1791年)」(KV 620)の8曲が、作曲順に収録されている。モダンオーケストラの演奏では、いくつものCDは発売されているが、オリジナル編成の演奏によるものは、これが唯一のものであろう。
 このCDには、さらに「アイネ・クライネ・ナハトムジーク(Eine kleine Nachtmusik)ト長調」(KV 525)も収録されている。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」直訳すると「小夜曲」となり、今では死語に属するかも知れないが、「さよきょく」と読んでセレナーデを意味していた。モーツァルト自身が作製した作品目録には、1787年8月1日に完成した「小夜曲、アレグロ、メヌエットとトリオ、ロマンツェ、メヌエットとトリオ、フィナーレからなり、ヴァイオリン2,ヴィオラ、低音部(の編成)(Eine kleine Nachtmusik, bestehend in einem Allegro. Menuett und Trio. - Romance. Menuett und Trio, und Finale. - 2 violini, viola e bassi.)」と記されている。現在は4楽章からなるが、自筆原稿では、2楽章に当たる箇所のページが欠けており、これが紛失したものか、意図的に削除したものかは不明である。この作品が作曲されたのは、モーツァルトが「ドン・ジオヴァンニ」を作曲している途中で、その作曲がどのような機会に行われたのかは不明である。モーツアルトの13曲あるセレナーデの最後に当たり、かつ最も人気のある作品と言えよう。
 このCDで演奏しているのは、すでに「ベートーフェンのピアノ協奏曲第5番とヴァイオリン協奏曲をオリジナル編成で聴く」で紹介したブルーノ・ヴァイル指揮のターフェルムジークである。このオーケストラは、ターフェルムジーク・バロック・オーケストラとも称し、1979年にカナダのトロントで創設された。1981年からジーン・ラモン(Jeanne Lamon)が音楽監督をしており、バロック時代の作品、バッハ、ヘンデルやヴィヴァルディ等の曲は指揮者なしで、古典派の作曲家、ハイドン、モーツァルトあるいはベートーフェンの作品は指揮者を立てて演奏している。このCDの演奏に於ける編成は、ヴァイオリン13、ヴィオラ4、チェロ3、コントラバス3(1人はヴィオローネ兼任)、フルート2(一人はピッコロ兼任)、クラリネット、オーボエ、ファゴット、トランペット、ホルン各2,トロンボーン3、ティンパニ1、打楽器3の42人からなる。録音は1991年5月にドイツのルートヴィヒスブルクで行われた。残響の少ない空間で演奏されたらしく、かなり直接音の多い録音である。
 例によってこのソニー・クラシカルのCDは、ドイツのサイトでも日本のサイトでも掲載されておらず、廃盤になっているようである。どうしてこの様なCDを簡単に廃盤にするのか、理解に苦しむ。

発売元:Sony Music Classical & Jazz

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ドイツ語やフランス語の文字が文字化けする問題について
この「私的CD評」では、ドイツ人やフランス人、それにそれらの国の作品や文書をそれぞれの国の言語で用いられているウムラウトやアクセント付きの文字を用い表記しています。これらの特殊文字は、HTMLのスクリプトを用いなければ正しく表示されないため、これを用いて記述していますが、最近「私的CD評」をよく読んでくださっている方から、それらの特殊文字が正しく表示されないという事を知らせていただきました。この事に関してその方と何度か意見を交換した結果、Windowsの各ヴァージョン、Mac OSいずれに於いても、その純正のブラウザー、Internet Explorer 7やSafari Version 4では特殊文字が正しく表示されませんが、Mozilla Firefox 3.5.3を用いれば、Windows環境下でも、Mac OS環境下でも、問題なく表示されることが確認されました。この「私的CD評」をご覧いただいている方で、ドイツ語やフランス語の表示に文字化けが発生しておられる方は、Mozilla Firefoxのサイトで、無償でダウンロード出来ますので、一度お試しになることをおすすめします。

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