石匠風間ブログ!

読書、音楽、雑学

『船に乗れ』藤谷治その2

2015-07-26 | 読書

再読しながら。少し時間を於いて。その2を書きたいほど面白いとも言えるか。

この作品には生々しいほどにリアルなオケ事情やチェロ事情にあふれていて、それに関わる人には「そうそう、そーなんだよなぁ」的な共感に随所でおちいることになる。

サトル君=主人公がドイツで有名な先生に指摘される
「君の弾き方は弦を鳴らしている、弦ではなく楽器を鳴らすんだ」
っていうのは、まさしくぼくが常々悩んでいる重要な課題で、というかできませんw

早いパッセージになると音量が大きくなるとか、他楽器に負けないように弾きたいとか、気持ちが痛いほどわかる。
合奏の難しさそれ故の楽しさなんて普段感じる通りの感覚で、よくぞ書いてくれたと。

著者にとっては自伝的な位置づけの作品らしい。どこまでが事実なのか知らないけど、そうでなきゃこんなにオケや楽器に詳しいわけない。

となると、やっぱ2巻での大事件が引っかかってくる・・・

ぼくは単細胞だから本の中の話でも頭にきてしまう、とても腹が立つ。

この感覚は村上春樹の『色彩持たない多崎つくる~』で抱いたものと同じ、主人公だけに情報を与えずそれがミステリアスなストーリー展開を創るのだけど、そういうのはフェアじゃない、たとえ物語手法としての設えだとしてもすごく不愉快です。

あの時点では言えないでしょ的な落とし所をもってやがてサトル君も納得?するのだけど、ぼくがわからずやなのか、胸糞悪いのです。
そして「胸糞悪い」作品ってのが大概面白いんだ、残念なことに。

アマゾンのレビューを見ても賛否両論、ぼくの感覚を持つ人と持たない人がはっきり別れるようだ。まあ、フィクションに対して何熱くなってんの?って言われりゃ何ら抗弁できないのだけど。逆に熱くなりたくて読んでるところもあるけど。

ネタバレにならぬように書いているのでちんぷんかんぷんかもしれないけれど、機会があったら是非読んでみてください。

そして是非皆さんそれぞれの感想を教えて下さい。