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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

ぬえの「能楽講座」(その2=能面について)

2006-09-08 14:20:23 | 能楽
さて今回の能楽講座では、総論というか、能の歴史、能や能舞台の特長、流儀の歴史などのカタいお話(だいぶ脱線はしたけれど。。)をしてから能面を展示して見て頂きました。

今回はお見せするだけで終わってしまったけれど、次回以降には能面の使い方の実演をしたり、扱い方を教えて能面を実際に顔に掛けて体験して頂こうと思っています。

ぬえは一代目の能楽師で、内弟子に入門した頃は自分の持っているもの、というのは なぁんにもありませんでした。能楽界では能楽師を親に持つ能楽師が圧倒的な人数を占めるわけだけれども、そういう人たちはほとんど家にいくばくかの面・装束・道具類はそろえているわけで、そういう立場の人くらべて、自分が絶対的に不利な立場にいるのだと気づいた ぬえは、内弟子の時代から「毎年、必ずひとつは道具を集めていく」という事を堅く心に決めました。これは今でも心がけています。

そんなワケで今回お見せした面はほとんど骨董屋で集めたものなのです。ぬえは東京では骨董市や骨董屋にはかなり頻繁に出かける方ですが、それだけに留まらず地方に行く機会があって時間が許せば骨董屋さんを覗いたりします。もう骨董屋さん通いも20年になってしまいました。骨董屋さんで「なにか能に関係する道具が出たら教えてください」と言って名刺を渡すと。。たいがいは「ええ?。。能の道具。。?。。ふふん。わかりました」と言われて。おいおい、なんだよその含み笑いをしながらの「ふふん」ってのは。。(/_;)

それでも骨董屋では これまでに本当に「出会い」がありました。ちょっとビックリするような物も ぬえは所蔵していますし、自分が手に入れないまでも、ほかの能楽師に紹介して差し上げたり、って事も何度もある。やっぱり足で探すものだと思います。そして最近では何か出物を見つけた友人からの情報の方が多くなってきました。「おい、ぬえくん。こんな物があの骨董屋に出されていたぞ」。。こういう情報を頂くと、ぬえは必ずその日のうちに見に行く事にしています。

まあ。。友人は能楽師ではないから、「能面が出た」、なんて言われても、その90%はオモチャなんですけれど。。それでも必ずその友人には感謝して、次もなにか見つけたら知らせてもらうようにお願いしておきます。そうしている中で、能面を見つけた、と友人の報告で ぬえがある骨董屋に行ってみると、その能面はオモチャだったのだけれど、同じ店の中で江戸期のある宗家による金泥の極め書きがつけられた小鼓の胴が破格の値段で売られているのを発見した、という事もあります。この胴は ぬえが買ってしまうと死蔵になってしまうので、その流儀のしかるべき小鼓方に紹介してあげました。

今回展示した能面10数点は、それほど古いものは少ないのですが、多くはこうして ぬえが一つひとつ集めたものです。ただ、ぬえの師匠は能面についてたいへん造詣の深い方で、どうも少なくとも東京では能面については一番詳しいらしい(ぬえにそう言った能楽師が何人かいるので本当らしい)。ぬえは能面を手に入れた場合、必ず師匠にご覧に入れているのですが、その時に面の善し悪しや面のどこに注目して入手するべきかをずいぶん教えて頂きました。たとえば般若の場合だと、角と下あごの牙が同じような角度だと表情が効いて見える、とか、この面だけは絶対にテラして使ってはならない、ワキに面を切る場合でも必ず上目遣いにワキの顔を睨みつけなければならない、とか。。


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7 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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能楽ビギナーです^^ (☆ハチミツ☆)
2006-09-10 19:41:36
先月、「おもしろ能楽館」というイベントに参加して、観世流の河村栄重さん、田茂廣道さん、福王流の福王和幸さんのお話を聞き、いろんな能面を拝見させていただきました。(鳥取市にて)

「へぇ~」とうなずいてしまうような話ばかりで、大変興味ぶこうございました。

また能面がとても大切そうにフェンディのバッグから取り出されたり、しまわれたりするのもおもしろかったですw

さっそく9月27日に行われる船弁慶のチケット購入いたしました。超楽しみですー^^。



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はじめまして (ぬえ)
2006-09-12 03:09:45
ハチミツさん、はじめまして。



鳥取市ですか。。ぬえはいまだに日本海というものに「触ったことがない」からなんだか羨ましい。。新潟ぐらいまでは行くのですけれど、駅と演能会場とホテルぐらいしか知らないし~



さて面が取り出されたバッグがフェンディだった、ということですが、そりゃすごい。じつは面を運ぶカバンにはみ~んな苦労しています。最低限、般若が入る大きさが必要だし、フタは上についていなければならない。さらに持ち運ぶ際の取っ手は、そのフタの上になければならない。。



じつはこういうバッグは、いま日本ではほとんど入手不可能なんです。古い化粧ケースにはあるのですが、いまはこういうデザインのカバンはないですね。。



だから ぬえらシテ方は、海外公演があると空き時間を利用して血眼になってブティックや化粧品店を訪ねて面カバンとして使えるコスメケースを探します。。



ぬえもいくつか海外でゲットしたけれど、上には上が居るもので。。スペインでだったかなあ。。ぬえがようやく中古品を見つけて喜び勇んでホテルに帰ってきたら、師匠は同じ日にロエベのすんごい彫り物が施されたケースを手に入れてました。。



ワニ皮のすご~~~いケースを持っていた人もいたけれど、あれは今じゃワシントン条約に引っかかるんでしょうかね。。
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能面♪ (ぐりこ)
2006-09-13 12:53:20
実ははじめ能面についてはあんまし興味がなかったのですが

講座の中でぬえさんが

一つ一つのお面に入っている感情を説明してくれました

怒りとか苦しみとか女性らしさとか平安とかー

そういえば私の仏像好きは顔の表情に惹かれての事です

興福寺阿修羅像もステキですが

福岡観世音寺の馬頭観音なんかも

憤怒と哀しみと慈愛の表情をヒトツの顔でこんなに上手く表現した顔もなかなか無いーといわれているとのこと

そんな複雑な顔を見るのが好きでして



能面は仏像よりももっとシンプルな顔のなかに

いろんな感情(念?)が籠もっているのだなーと思うとヒジョウに面白いものだと思いました



ただ、シンプルなので汲み取る感性が必要なのねーと思いました



長々とすんません!

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観世音寺とわ (ぬえ)
2006-09-13 16:52:43
>ぐりこさん



福岡の観世音寺。。それは太宰府にあるお寺ですね。ずっと以前、「第一回ぬえの会」が終わってから福岡在住の囃子方に会ってお礼を言うために博多に行った折、宇佐と太宰府まで彼の車で行きました。



観世音寺は国宝の日本最古の梵鐘が有名で、それは見たのですが、馬頭観音立像というのは知らなかったな。。画像を検索してみました。



「これ」か。。

http://dazaifu.mma.co.jp/museum/b03.html

う~ん、ぬえはあまり食指が動かないが。。ゴメン。



ぬえが好きな仏さまはね~、京都・東寺の、たしか講堂にある小さな普賢菩薩像なんか良いですな~。講堂には「立体曼陀羅」というのがあって、仏像を曼陀羅図の通りに配置してあるのですが、この普賢菩薩さんはなぜかその仲間に入れてもらっていないかのように、まるで置き場所に困って、この立体曼陀羅の隅っこに居候させてもらっているようでかわいそう。画像を検索したのですが見つからなかった。。普賢菩薩は女性的に描かれる事が多いですが、この像はキリリとかっこいい男性(?)で、まさに能面の「神体」の相貌。「神体」の面はこの像から写されたんじゃないかな。。なんて疑ってしまいます。



>>ただ、シンプルなので汲み取る感性が必要なのねーと思いました



先日の能楽講座では、面を見せただけで時間切れで、実際に面を掛けて動いて見せることができませんでした。いろいろな表情を出せる、というところ、ぜひ見て頂きたかったです~~
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東寺 (ぐりこ)
2006-09-16 16:41:27
行きました東寺♪ 昨年秋に行ったのですが

先日の東京遊びのような

ハード仏像見学スケジュールで

一番楽しみにしていた立体曼荼羅も

5分ほどしか見れなかったのです 涙



普賢菩薩は私のもってる解説本にも載ってないようですが

隅っこにいらっしゃっいましたか?

ぜひお会いしたいものです
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Unknown (☆ハチミツ☆)
2006-09-23 11:22:47
ぬえさん、お返事ありがとうございました。

何を隠そう、わたくし福岡市出身で、観世音寺には何度か足を運んだことがあります。

大学時代を京都で過ごし、東京、熊本と転々とし、現在は鳥取に住んでいるわけです。

観世音寺や東寺と、次々に懐かしいお寺の名前が登場して、勝手に盛り上がってます。

楽しみに読んでます。

これからもよろしくお願いします。

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Unknown (ぬえ)
2006-09-24 23:04:18
>ハチミツさん



コメントありがとうございます。ふぇぇぇ~福岡から京都、東京、熊本、そして鳥取ですか。。べ、べ、別にケーサツに追われてるワケじゃないですよね?(。_゜☆\ベキバキ(~_~メ)



ぬえはずう~~っと神戸より西には行ったことがなくて、数年前からようやく九州や山陽に行く機会ができるようになりました。それにしても ぬえは生まれてこの方ずっと東京に住んでいるので、帰省するイナカというものもなければ、まったく知らない街に住むという経験もないので、なんだか羨ましい。。



ところで山口県ではじめてお寺を見て回ったとき、戦争の被害がなかった事もさることながら、関東や京都とくらべて建物の傷みが少ないように感じました。小さいお堂で、すこし細工の良いのがあって、全体の感じから江戸初期ぐらいと考えたのですが、説明板を見つけたら「室町期」だって! 建築の様式も独特のもので、う~ん、まだまだ中国地方から西は ぬえには秘境のようなところです。



鳥取っていうのは砂丘しか知らないが、やっぱり池田家の領地でしたっけね。行ってみたいなあ。。そういえば東京・上野の国立博物館のすぐそばに残っている大きな門はたしか鳥取藩の上屋敷のものだったはず。都内に住んでいるとなかなか博物館にも行かないけれど、博物館もこの門も必見です。上野の東照宮も近所だよ~
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