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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

活動報告書

2011-10-18 06:50:19 | 能楽の心と癒しプロジェクト
また話題があっちこっち…
昨日は久しぶりのオフ日で、これを利用して先般の「能楽の心と癒しを被災地へプロジェクト」石巻訪問公演の報告書と決算書を一気に作り上げました。もう遅すぎるくらいでしたが…。とくに国際学会の会場に募金箱を設置してくださったり、仙台の和菓子店でイベントをまとめてくださった東北大学の方々をはじめ、チャリティ・イベントを開いてくださった方々へは、募金の使途を明瞭にするのが遅れて申し訳ありませんでした。以下はそういった関係者へ送った活動報告書です。
 たぶん、このブログで ぬえが本名を書くのは初めてだと思いますが…(^^ゞ

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能楽の心と癒しを被災地へプロジェクト

宮城県訪問活動(2011年9月26日~30日)


 〔活動報告書〕

【趣旨】
 東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志3名(※注1)は、すでに8月15日に石巻市立湊小学校避難所にて能楽の獅子舞を披露する活動を行って参りましたが、この度「能楽の心と癒しを被災地へプロジェクト(※注2)」という団体を組織し、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、ゲスト出演の能楽師1名、記録写真撮影のための写真家1名(※注3)とともに去る9月下旬に宮城県を訪問、計5カ所にて能楽の上演を行いました(※注4)。

※注1 能楽師有志は八田達弥(シテ方・観世流)、寺井宏明(笛方・森田流)、大蔵千太郎(狂言方・大蔵流)の3名。今後同人が増加する予定があります。
※注2 この度の訪問の経験をふまえ、団体名は「能楽の心と癒しプロジェクト」(仮称)などと改称する予定があります。
※注3 今回の訪問のゲスト出演者は小梶直人(狂言方・大蔵流)、写真家はY氏(匿名を希望しております)。ともに無報酬での同行です。
※注4 公式な能楽上演場所は1.石巻市立門脇中学校避難所 2.ロマン海遊21(石巻駅市観光物産情報センター) 3.イオン石巻ショッピングセンター 4.玉澤総本店一番町店(仙台・和菓子店) 5.石巻市立湊小学校避難所。


【活動記録】
 9月26日(月)
 八田・寺井・Y氏が先発隊として宮城県入り。Y氏は石巻市内、八田と寺井は南三陸町・歌津崎の旅館「ニュー泊崎荘」に宿泊。

 9月27日(火)
 八田・寺井は早朝、被害が甚大な泊崎漁港の堤防にて鎮魂の祈りをこめて舞囃子『融』の一部を上演。
 その後石巻市内に入り、Y氏と合流後、関係者を訪問。いまだ未確定な上演の詳細を詰める。地元ローカルFM局「ラジオ石巻」に情報を伝えて上演の宣伝を依頼する(その日のうちに3度放送で紹介があったとのこと)。
 上記3名にて石巻市・牡鹿半島~女川町までの被災状況を視察。台風15号の被害により牡鹿半島東岸は土砂崩れのため通行不能で女川町にはたどり着けず石巻市街に戻り、Y氏は市内に宿泊。八田・寺井は松島町の旅館「光」に宿泊。

 9月28日(水)
 深夜に東京を出発した大蔵・小梶と合流。石巻市立湊小学校駐在のボランティア団体「チーム神戸」と市内不動町の支援団体「明友館」に挨拶。また市立住吉中学校に間借りして授業を続けている湊小学校の佐々木校長先生を訪問。先生は我々の活動をすでにご承知で、湊小学校の校舎で授業が再開された際には、今度は子どもたちのために能楽を上演したい旨お伝えし了承を頂く。
 午後、石巻市立門脇中学校避難所にて能『羽衣』の一部、狂言『寝音曲』を上演。住人さんに大変歓迎を受け、また住人のリーダーから石巻市の復旧の現状など貴重な意見を聞く。
 夕方、石巻駅前の「ロマン海遊21」(石巻市観光物産情報センター)にて能『羽衣』の一部、狂言『痿痺』を上演。館内に事務所を置く観光協会から再訪を依頼される。
 Y氏は石巻市内に宿泊、能楽師4名はこの日より湊小学校避難所に宿泊。

 9月29日(木)
 午前中は宿泊している湊小学校避難所の周辺、およびとくに被害が甚大だった門脇地区の被災状況を視察。
 午後、イオン石巻ショッピングセンターにて能『羽衣』の一部、狂言『寝音曲』を上演。イベント担当者より次回の訪問時には優先的に上演枠を与えて頂けるとのこと。石巻市立大川小学校の重大な被害でお孫さんを亡くしたというお客さまが声を掛けてくださり、その鎮魂の意味もこめて舞台を勤める。
 夕方、仙台市内の和菓子店「玉澤総本店 一番町店」の喫茶部にて能『松風』、狂言『柿山伏』の能楽ワークショップ。この公演はかねて八田と懇意の東北大学の長神風二氏が交渉・実現したもので、チャリティ・イベントとして、唯一有料の公演。
 この公演終了後Y氏は東京での用事のため帰京。能楽師4人は湊小学校避難所に宿泊。

 9月30日(金)
 湊小学校にて茶道と曹洞宗僧侶との合同イベント。コーディネートしてくださった「チーム神戸」リーダー金田真須美氏が総合司会となり、能『羽衣』の一部、狂言『寝音曲』を上演ののちお客さまに薄茶がふるまわれ、引き続いて能『松風』、次席の薄茶、狂言『痿痺』、曹洞宗僧侶による果物のサービスが順次行われる。とくに僧侶のみなさんは早くから湊小学校避難所で活動され、茶菓を届けながら住人さんの心のケアに携わっておられたとのこと。近く市内の避難所はすべて解消される予定で、事実上住人さんとのお別れの催しとなったこのイベントは大変華やかなものとなったと確信。
 終演後、活動費など支出を精算、残額の一部を「チーム神戸」および「明友館」に寄付して石巻を出発、各自帰京。


【収入・支出】
 今回の活動資金は 1.東京でのチャリティ・イベント(路地裏de狂言特別公演) 2.横浜で開催された国際学会「第34回日本神経科学大会」の際、大会長たる東北大学・大隅典子先生の厚意により参加者より集められた募金 3.匿名個人よりの寄付金 4.滞在中仙台市内の和菓子店「玉澤総本店 一番町店」で行われたチャリティ・イベントにより、合計129,739円が集まりました。関係者に対し、厚く御礼申し上げます。
 これに対して今回の訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。「災害派遣等従事車両証明書」を取得することで東京~宮城県間の高速道路料金が免除され、宿泊につきましても湊小学校避難所に宿泊させて頂きました。事情により一部旅館を利用しておりますが、この場合も宿泊費は素泊まりに限定し、参加者の食費は一切自費による出費と致しました。記録用ビデオテープや乾電池、領収書、湊小学校長さまへのご挨拶の菓子など多少の雑費はありましたが、活動費の支出合計は64,063円となり、現地で被災者の方々に直接の支援を続けておられる「チーム神戸」「明友館」の2団体に計45,000円の寄付ができた事は望外の幸でした。
 この訪問公演の結果、収支差額として20,676円の残金が出ました。当初プール金などは考えていませんでしたが、次回の訪問につながるチャリティ・イベントの宣伝費用等に多少の資金は必要、という同人の意見に鑑み、この残金は今後の活動資金の一部とさせて頂き、改めまして使途は明瞭に致します。


【成果と感想・今後の展望】
 石巻市を中心に今回計5回もの公式公演を行えた事は予想を遙かに超えた大きな成果でした。しかし実際には石巻という「著名被災地」ならではのイベントの多さや、いまだに続く被災地の混乱により事前には計画は遅々として進まず、東北大学の長神風二氏や、さらに数日前に現地入りして関係者と交渉してくれた同人・寺井の活躍を抜きにしてはこの成功はあり得ませんでした。
 しかしながら実際に上演した5カ所ではいずれもお客さまに非常に喜んで頂く事ができました。これにはとくに同人・大蔵の司会の話術が寄与したと思いますが、今回はじめて能と狂言とを本格的に近い状態でバランス良く上演することで能楽の「癒し」の心を伝えることができたのではないかと思います。とくに門脇中学校避難所では終演後に住人さんのリーダーから果物を振る舞って頂き、そうして避難所から帰る時には住人さんから立ち上がっての拍手を頂戴しました。これはあとでリーダーさんからこの避難所ではおそらく初めての反応と伺い、ありがたいことだと思います。避難所ではこのほかにも感謝のお言葉を度々頂戴し、また開催させて頂いた施設の担当者の方々からは再訪しての出演を依頼されたりと、次回の活動に向けての手応えを感じることができました。
 被災地の復興の状況は、市街地では着実に進んでいながら、そこから少し離れた地域では6ヶ月前とほとんど変わっていない状態。これに対して被災者支援については、今回の訪問公演終了後の10月11日までに石巻市では避難所を完全に解消し、仮設住宅に移行するなど大きな転換点に差し掛かっています。
 ボランティア団体も活動拠点を新たに立ち上げることになり、仮設住宅へ移られた被災者への対応はかえって困難となり、食料支援や住人の孤立や孤独の問題に対して長期間の取り組みが必要になると思われます。
 一方、今回の訪問で新たに多くの方々と知り合いとなることができました。。いま「能楽の心と癒しを被災地へプロジェクト」では年末~来春頃を目標に2度目の訪問公演を計画しております。これらの新しい出会いから我々の活動も新たな展開を遂げ、息の長い支援が続けられるよう意気込みを新たにしております。どうぞ今後も変わらぬお力添えを賜りますよう伏してお願い申し上げます。



平成23年10月18日

                    「能楽の心と癒しを被災地へプロジェクト」

                               代表   八田 達弥
                              (住所)(電話)
                               E-mail: QYJ13065@nifty.com

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 なお、上記活動報告書には記しませんでしたが、ぬえが指導する「伊豆の国市子ども創作能」の出演者(小学生)のお母さん方から新鮮な野菜が寄付され、「明友館」を通じて被災者に配布されましたことを併せてご報告させて頂きます。


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