あれやらこれやら いろいろ沖縄

沖縄に住み30数年の県外居住者が見た沖縄の生活や人情・自然や文化、観光。「あれやらこれやら」気ままに。

沖縄の社会~やはり素晴らしい沖縄の若者~「えいこう」と「ひろし」

2009年08月14日 11時53分28秒 | Weblog

 ~太平洋戦争末期、米軍が最初に上陸したといわれる比謝川河口付近の海岸で遊ぶ米軍関係の子供達。58号線から1キロほど海岸に入り込んだところで、県内の人でもあまり行ったことはない。米軍がどのように上陸したのかは知らないが、この辺りから上陸して、南部に向かって兵を進めたことだけは確かだろう。
読谷村を通って 残波岬に行く海岸線の海は米軍の艦船で真っ黒だったと古老はいう。
潮の引いた岩の小さな潮溜まりにコバルトブルーの熱帯魚が取り残されていた。~




 自宅を出て3キロほどの道程を、垣根の木々や花に顔を近づけ香りを確かめたり、庭先に遊ぶ子らをなつかしく眺めたり、何度も歩いているのに気付かなかった粋な住まい発見して小さな感動を覚えたりしながら、夕暮れの散策を楽しみながら目的の小さなスナックにたどり着く。40分ほどの楽しい散策だ。
 この日も、好きな日本酒を飲み、夜8時過ぎに店を出た。
左に曲がるとデイゴの並木道に出る。5階建ての30室余りの棟が5棟ほど並ぶ団地の外れの道だい。
今日はバスで帰るか、と思いつつ団地の外れまで、ほろ酔い気分で通りかかった。
 外灯と外灯の間の暗がりで二人の若者がぼそぼそと話している。
ビールかジュースの空き缶が数個と少しの菓子か何かが残っているらしいビニール袋が彼らの足元にあった。
外灯の間が遠いため光が届かないのと並木が遮っているため顔はよくわからなかったが、低いブロックに腰をかけていた方は面長の顔が何とかみえた。もうひとりは反対側を向いているため、外灯に照らされている茶髪だけが目に入った。
時計はまだ9時を廻ってない。
茶髪のかれは作業ズボンのままで、仕事帰りに友人に会ったと言う風であった。

 近づいてたずねる。
「呑んでるのか?」
かわいい。若い香りと息吹が満ち溢れる。
「おじさん、のんでるのかあ?」
茶髪の青年が見上げていった。2人ともきりっとした男面である。
30前だな。
「うん、早くからねー。帰るところだ」
「ふーん、元気いいんだね」
茶髪がいう。
「イケメンだなあ、兄ィ兄ィ達はー。飲んでるのはジュースかビールか?」
「ビール。おじさん何呑んだのか」
「安酒、日本酒だよ」
何だかこの子たちには済まない気がした。
「おじさんも、少しビールが呑みたくなった。一緒にいいか?」
「いいよ、でも大丈夫か。買ってくるよ、何がいい?ビール?」
と茶髪。
「ああ、君達はビールでいいかな」
「俺達はいいよ」
と茶髪が応える。
「おじさんは小さいのでいい。あとは君達が好きなのを買って」
そう言って1000円札一枚を渡した。
茶髪が立った。
500メートル程先にコンビニがあったな、あそこまで行ったんだ。
1,000円でビールの大きいの買えるのかな、と急に気になり始めた。この4,5年、ビールを買った事がない。
「ビールありがとう。俺達ももらったよ」
茶髪はそういってつり銭をくれた。つり銭はそのままポケットに入れた。
茶髪が大瓶、面長と自分には普通の缶だった。
つまみも買っておいでといったのだがなかった。「おじさん、つまみ要る?」ときかれたとき、「おじさんはいいから好きなの買っておいで」そういったけれど遠慮したな、と思った。

 それから30分ほど話をした。
面長の青年は今年26歳。東京に勤めていて里帰りで、きょう着いたばかりという。
なまえは「ひろし」と言った。
茶髪は「えいこう」といって、
「栄えるの栄に光と書くんだよ。いい名前だろう」
と威張った。学年は面長と一緒だが、まだ25歳と言った。
作業着姿をみて「仕事帰りか」と聞くのも気が引けた。
「明るいところでもっとよく顔を見せろ」
と外灯のある方向に茶髪の顔を向けさせた。
街頭の明かりにきらきら光るたくましい若人だった。
「うまくやってたな」
ヒロシは首を横に振ったが、コウエイは苦笑いした。
「単車乗り回したんだろう。暴走族やったな」
「単車?」そういってふたりは笑い出した。
「おじさんが君らの時代は単車って言ったんだ」

 そんな他愛ない話題で30分余りを過ごした。
「やっぱり人間は汗かかないと駄目だな。おじさんみたいに背広を着て、机に向かって夏は涼しく、冬はあたたかくと過ごすのもひとつの生き方かもしれないが、最近、汗を流して働くのはもっと素晴らしいと思えてならないんだ。家では、夏でも日中はおじさんはクーラー使わないんだ。汗がタラタラ出る。一日に何度もシャワーを浴びるし、着替えもする。汗をかくって最高だね。夕食もうまい。」
「おじさんの知り合いの息子がいてね、君達より少し上かな、鳶をやっているんだ。ずいぶんきつそうだけど、よくがんばっている。おじさんなんかは真似もできないよ。でも、飯がうまいと云っていた。職場でも友人がたくさんできるみたいだね」
栄光が、
「おれも鳶やっていたよ。今は失業しているけど」
「そう、若いうちは何でもやってみるさ。2度や3度の失敗くらい何でもないさ。でも、今の社会じゃあ試す事もできないなあ」
この青年達もどこかの居酒屋でも行って、久しぶりに逢った友達と語り合いたかったのではないだろうか。そう思ったが触れなかった。
 「君達のような若者が就職できないような社会にしたおじさんたちが悪いんだよなあ。すまないなあ」
ふたりはキョトンとして顔を見合わせていた。
戦後の日本がここまでになったのは俺達が一生懸命やったからだという輩はたくさんいる。しかし、こんな不運な若者達をつくるような社会にしたのだという者をひとりたりとも見たことがない。
 30分ほどの間だったが、清々しい時を過ごせた。
「邪魔してごめん。楽しかったよ」
名残り惜しかったが、腰を上げた。
「おじさん、どうもありがとう」
とふたり。
「いやいや、おじさんこそ若返ったよ。タバコ一本いいかなあ」
というと、タバコの箱を出しながら
「大丈夫?タバコやめてるんだろう」
あたたかい風がふっと通り過ぎた。
一本抜きながら、この若者達にとってタバコ一本でも大切にしているはずだと気が付いたけれど、そのままタバコに火をつけて後にした。

 いい人生送れよ。