傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

牛肉市場の[和牛 VS WAGYU]の攻防・・・関税云々ではなく現場力の競争(1)(雑感)

2014-03-05 10:49:00 | 独り言

シンガポールで開催されたTPP交渉閣僚会議は大筋合意できず先送りと報道。
関税撤廃の貿易自由化を目指すTPPを国益につながると民主党政権、自公政権で鋭意推進してきたが、関税撤廃云々の自由化論争より現実の市場競争が先行しており、TPPの着地には新たに血を流す覚悟と新たな智恵が不可欠ですね。
2月28日放送のNHKの【ガチアジア】の『和牛 VS WAGYU~アジア 牛肉市場をめぐる攻防~』を視聴すると、日本の原種の黒毛和牛の遺伝子を持つオーストラリア産の「WAGYU」がアジア圏で影響力を持ち、中国では国家プロジェクトによるオーストラリア産「WAGYU」の遺伝子をかけ合わせたブランド牛「雪龍黒牛」が新興勢力になろうとしていると。

番組『牛肉市場の[和牛 VS WAGYU]の攻防』の番組紹介を転載すると、

”「番組内容
いま香港で人気の食材、WAGYU。霜降りの安いオーストラリア産牛肉が、日本の和牛と市場争いを繰り広げている。WAGYUのルーツと新たなビジネスの動きを徹底追跡。

詳細
日本が誇る食材「和牛」が、いまアジアの市場で苦戦を強いられている。たっぷりと霜降りが入り、価格の安い「WAGYU」に客を奪われているのだ。WAGYUの正体は、オーストラリアで生産された“和牛”。取材を進めると、かつて日本から持ち出された和牛の遺伝子を受け継ぐ牛が大量生産され、さらにその精液や受精卵が中国やヨーロッパへと渡っている実態が明らかになってきた。「和牛」対「WAGYU」、その攻防を追う
。」”

です。

番組『牛肉市場の[和牛 VS WAGYU]の攻防』は、80年代後半の日米牛肉自由化交渉で、日本は高関税賦課を条件に牛肉自由化を承諾し、その後段階的に関税引き下げでアメリカ産牛肉の輸入が増大し、日本の畜産農家はアメリカ産との差別化に和牛の付加価値に「霜降り」への改良努力で産地ごとブランド牛が確立されてきた。
要は、和牛は、畜産関係者の長年の努力による世界に冠たる牛で、貴重な遺伝資源であったが、差別化の特長であった「霜降り」をアメリカは見逃さず、生きた和牛や精液を輸入を開始し更なる日本市場を狙ったと。
現在、日本は精液の輸出を自制し、和牛の遺伝子を守る取り組みをしているが、平成11年までに、少なくとも248頭の和牛と凍結された精液5000本余りがアメリカに渡ったと見られていると。
アメリカに渡った和牛の遺伝子は、アメリカでの遺伝子ビジネスは低調であったが、アメリカからオーストラリアに渡った受精卵はオーストラリアで「WAGYU」としてビジネスが開花し中国ら世界18ヵ国に受精卵の輸出へ発展し、中国は「WAGYU」育成は国家プロジェクトに。

当方は番組を視聴し、世の中、生き馬の目を抜く商魂逞しさに驚愕すると同時に日本は皆で守勢し、出る杭は打たれる風土と思いましたね。

番組は、関税ゼロの香港で日本の和牛販売業者が日本の半値のオーストラリア産「WAGYU」の低価格に苦戦する場面から始まり、オーストラリアの代表的な「WAGYU」生産者で日本の黒毛和牛の原種を受け継いでいる3000頭の牛を育てており、「Mr.WAGYU」と言われるデビット・ブラックモア氏が紹介になる。
デビット・ブラックモア氏は、20年前、アメリカから和牛(「道福」はアメリカで飼われていた種牛で、血統書では父親は日本でも霜降りで名の知れた紋治郎)の精液を取り寄せ、オーストラリアの雌牛とかけ合わせるることから始まり、赤味が特徴だったオーストラリア牛に霜降りが入るようになり、日本市場に進出した「WAGYU」の始まりだと。
香港の中間所得層が好む「WAGYU」は、日本の和牛とオーストラリアの牛をかけ合わせた交雑種で、デビット・ブラックモア氏は、アメリカで和牛同士の受精卵を輸入し、オーストラリアのメス牛に移植し代理出産させ100%純血の和牛の遺伝子を受け継いだ子牛を誕生の成功が「WAGYU」の起源となる。

番組では、デビット・ブラックモア氏は、日本の書籍「日本名牛百選」(著者:小野健一)を取り出し、日本がやってきた和牛の飼育の歴史が詳しく書いてあるとし、英語に訳して勉強したと。
その後、デビット・ブラックモア氏は日本市場から撤退しアジア市場へ方針変更し、香港では「WAGYU」は富裕層には日本ブランド牛と同等になり、中間所得層には日本ブランド牛より3割安価の「WAGYU」は支持を得たと。
オーストラリア人のドミニック・ベイヤード氏は、8年前に、WAGYU遺伝子販売業者になり、年間4000本の受精卵を9カ国に輸出し半分は中国だとし、中国に渡ったWAGYU受精卵で、酪農家の乳牛で代理出産させるWAGYU生産企業の積極的な活動を紹介。

昨年10月に和牛の国際会議を主催したオーストラリア和牛協会は、世界各国で生産されている牛のDNAを鑑定し和牛の血統を50%以上受け継いでいれば和牛証明書(800豪ドルの牛は、証明書があれば2000豪ドルになる)を発行し、これまで8カ国3500頭余の証明書を発行しており、和牛に日本産もオーストラリア産も無いとし、オーストラリア協会が認定したWAGYUは”最高の牛肉”とあると豪語し、今やオーストラリア産WAGYUは世界の食肉市場で大きな影響力を持っていると。

中国では、オーストラリア産WAGYUの遺伝子を使った国家的プロジェクト(雪龍黒牛)が始動していると。
ブランド牛「雪龍黒牛」を取り組みは、7年前に、体の丈夫な中国の牛、肉付きの良いフランスの牛らに霜降りが入るオーストラリア産WAGYUを掛け合わせ各々の特徴を持つ牛の誕生が雪龍黒牛だと。
雪龍黒牛の牛肉生産企業社長は、”「私達が生産する牛肉に絶対の自信を持っています。今後コストを下げて、より手頃な価格で提供できるようになれば我々の事業はさらに発展しるでしょう」”と語り、来月には香港に進出すると。

一方、番組では、日本側は、食肉会社の海外戦略担当者がオールジャパンブランド力UPや、低価格対策に安価部位と抱き合わせ販売策、家畜改良技術研究所の和牛の特徴(香り)の特化などの和牛拡販の取り組みを紹介していたが、オーストラリア、中国のWAGYUの取り組みと比較すると大丈夫かな?と心配になりますね。

シンガポールで開催されたTPP交渉閣僚会議はアメリカとの折衝で歩み寄りが見られず大筋合意できず先送りと報道があったが、牛肉市場現場は、[和牛 VS WAGYU]の攻防で、WAGYUで先行した「オーストラリア」、WAGYU遺伝子を持つ雪龍黒牛の国家的プロジェクトの「中国」の影響力が大きく、日米は既得権堅持に協調しようとしているのではないかと邪推できますね。

日本は日米牛肉自由化交渉による高関税下に黒毛和牛の霜降り牛肉という遺伝資源を死守できず、アメリカに遺伝資源を解放し、オーストラリアが「WAGYU」でビジネス化に成功し、超大国の中国が国家的プロジェクトで牛肉市場を狙っており、日本は交渉下手というより、自由化を関税を抑制するという先見性・戦略性がない策であり、和牛という遺伝資源の宝の持ち腐れという印象を持ちますね。

「追記」

NHKニュース『JA全農 和牛の輸出を強化へ』(3月6日 23時11分)

”「JA全農=全国農業協同組合連合会は、来月、アメリカで日本の和牛を提供する直営のレストランを開業するなど、今後、海外で直営の外食店を拡大することを通じて、和牛の輸出を強化することにしています。

発表によりますと、JA全農は日本の高級和牛の輸出を強化するため、欧米や東南アジアでの市場の開拓を進めるとしています。
このうち、アメリカでは、来月、ロサンゼルス郊外に日本の和牛を提供する直営のレストランを開業するほか、ヨーロッパでも今月新設したロンドンの駐在事務所で、市場調査を進めたうえで、来年度中に和牛の料理を出す直営店を出店するとしています。
日本の高級和牛は、生産が増加している一方で、日本国内での消費は、ここ数年、頭打ち傾向にあるということで、JA全農は再来年度中には海外に展開する直営の外食店を現在の1店舗から8店舗に拡大し、輸出量も現在のほぼ1.5倍の250トンに増やす計画です。
JA全農の小原良教常務理事は「今後、世界の主要都市に直営のレストランを展開して、実際に和牛のよさを実感してもらって輸出量の増加につなげたい」と述べました。
」”

JA全農が和牛の海外展開の強化は理解できるが、目標が現在の1.5倍の250トンの目標程度は高級志向の富裕層向けで、オーストラリア産WAGYU、中国産WAGYUが目指している富裕層・中間所得層は支持は得られないでしょうね。
JA全農が和牛を量より質を第一とするのであれば理解はできるが?



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