地盤強化と地震防災 ⑱

2022年05月14日 | 防災と琵琶湖


作成日:2022.5.13|更新日:2022.5.14


地域循環共生圏概論 53
□ 地盤強化と地震防災 ⑱
先回は、マグニチュード7クラスの地震被災想定を考えた。
そして、3つの問題----①排出ごみの削減、②温暖化ガス
排出の削減に係わる彦根市広域地区の長期的目標及び実行
の不備、②前述の地震想定に対するごみ処理施設の対策(
1メートル強の津波の二次災害対策及び被災ごみへの広域
対策の不備、③同じく、現行案の荒神山の山体崩壊の有無
と想定と対策、④さらに、気象変動などの長時間降雨量に
よる土石流・土砂崩れなど危険性を指摘してきた。もっと
も、②~④はごみ処理施設だけでく公共施設全般に係わる
問題である。今回は、巻頭に掲載した読み「地盤強化と地
震防災」の目次に沿って「新ごみ焼却場建設計画」の問題
を洗い出す。☈
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第1部 地盤を知る
第1章 安全な地盤とは
第2章 地形の成り立ち特徴


図1.沖績層と洪績層

第2部 地盤を見極める
第3章 地盤調査の種類と特徴
表1.斜面対策における望ましい基礎地盤調査法
第4章 スウェーデン式サウンディング試験結果の解釈
第5章 支持力
5-4 地盤支持力の基礎
5-6 盛土の支持力評価
第6章 地盤沈下と不同沈下
6-3 沈下修復工事
第7章 地盤液状化
7-1 液状化現象と液体化予測方法
7-2 宅地地盤の代表的な液状化対策
第3部 基礎を知り、選ぶ
第8章 基礎・地盤補強の種類と目的
第9章 基礎の剪定
第10章 基礎施工の管理ポイント
第11章 宅地地盤の擁壁
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☈ さて、防災的側面(地震・液状化・津波・土砂崩れ・
高波・洪水・火災・気候変動・パンデミックなど)から地
盤強化・地盤改良に関する工期・工費(この場合、事業コ
アである用地買収費は除外)が嵩むは必至(これは負債と
みるか、安全・安心的側面の高付加価値化とみるかの会計
学的側面の差異として顕在する)。また、想定する防災対
象説明因子の設定(マグニチユード・降雨量・降雪量など
のインシデント或いはインパクト・ファクタ)により変動
するが、工法的側面は対応できていると考えている。


図1.土構造物・地盤改良シーン概説図(出所:大林組)
1.法面補強、2.法面麺緑化、3.河川堤防補強、4.
軟弱地盤改良、5.地盤改良・液状化対策、6.施工安全
品質管理、7.基礎補強、8.環境技術、9.設計・解析
技術、10.調査・計測
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☈ 例えば、鉄道近接場所など、厳しい施工条件に対応でき
る地盤改良工法の「e-コラム工法®」は、線路近接場所での
地盤改良(土留め工)や杭工事において鉄道軌道への影響
を抑え、短工期で施工できる工法。従来の回転撹拌機構に
起振(バイブレーション)機構を付加した超小型・高削孔
能力を備えた機械を用いた施工で、止水性の高い土留め工
や防護工、杭基礎(ソイルセメント体径φ400~800mm)を
構築している。また、生産性向上・コスト縮減を実現する
岩盤への杭打ち工法は、鋼杭を岩盤へ直接打設できる杭打
工法。長時間の運転に耐えられる特殊振動杭打ち機(特殊
バイブロハンマ)を用い、低圧ジェット水で岩砕粉を除去し
ながら、高強度特殊鋼により先端補強した鋼杭を打設し打
撃効率を向上させ、岩盤への直接打設を実現。その他、狭
あいな空間に杭基礎のフーチングを構築する「合成構造フ
ーチング」、ソイルバッグ(土のう)と杭による複合基礎
工法の「既製杭の杭頭非接合工法」、低コストの小口径合
成鋼管杭により、狭い場所で基礎を補強の「ハイスペック
マイクロパイル工法」、鉄道の営業を妨げることなく、線
路上空から昼夜連続で杭を打設の「ラピッツ-O工法®」、
函内の掘り残し形状の把握と計測機器の統合管理で安全な
ケーソン沈設管理を実現する「ケーソン統合計測管理シス
テム」。鋼管矢板継手の剛性を向上し、基礎寸法を縮小す
る「ハイパーウェルSP®」などの基礎工法など各社様々な創
意工夫競合し顕在する。


図2.地盤強化杭状補強材打ち込み法



2021年11月30日 管理棟:内装工事、計量棟:内装工事、
炉室:配管保温工事・電気工事、外構工事:可変側溝敷設・
路盤整備工事


【事例研究Ⅰ:江戸崎地方衛生木材組合新ごみ処理施設】
経緯:
既存のごみ焼却施設が稼働28年(一般にごみ焼却施
設の寿命は30年などと言われている)を超え、近年、その
維持管理費が増大。そのため、地元住民代表、有識者や関
係者などによる「施設整備検討委員会」を設置し、2012年
 7月から施設更新の必要性や環境負荷の軽減などの協議を
行い、新ごみ焼却施設の整備・運営計画を作成し、作業を
進めきたが、その後、いくつかの問題点が指摘され、地方
自治法に基づく特別委員会が設置・調査、新ごみ焼却施設
整備・運営事業は一旦中断したが、事業を再開している。
事業再開にあたっては、今後一層加速する少子高齢化や人
口減少、また、これらの社会動向を踏まえた社会インフラ
のあり方が大きく変化している状況などを加味し、将来に
わたる市村民の負担軽減や、将来の本組合のごみ処理行政
のあり方等を熟慮の結果、最終プランを決定し、新ごみ処
理施設整備・運営事業を再開する。(2017年9月)

❏ 5つの基本方針
1.目標とした環境性能等の維持➲協議を重ね目標とし
 た環境基準・ごみ処理能力の環境性能等を維持

⛨ これまで施設整備検討委員会等で協議を重ねて設定した
 新ごみ焼却施設の「処理能力」や「環境基準」などの環境性能
 等はそのまま踏襲し、処理能力は、災害時の廃棄処理分12
 ン/日を含めた70トン/日とし、発電による余熱利用、また、下
 記の環境基準を踏襲するなど、目標とした環境性能等は維持
 する。

2.市村負担の最小限化➲早期の事業再開や支援制度の
 活用などを図り、市村民負担の最小限に努める

⛨ 早期の事業再開を図ることで、年々増加傾向にある
 存施設の修繕費の最小限化とともに、交付期限がある財
 政支援(震災復興特別交付税)の最大取得に努める。加
 えて、国(環境省)の交付金に鑑み、運営費(ランニン
 グコスト)のコスト抑制を図るなど、交付金の有効活用
 を図ることで、組合引いては市村負担の更なる最小限化
 に努める。
 ※ ごみ焼却施設の修繕費の推移(機能維持分)

3.土地の高度利用化➲既存敷地内での施設配置を基本
 に、コンパクトな新ごみ焼却施設を目指す

⛨ 今後の人口減少等によるごみ処理需要等に鑑み、既存
 敷地内での施設配置を基本とし、また、主要な道路との
 接続のため必要な接続用地の取得等は、最小限とするこ
 とで、本格的な減少時代を踏まえた土地の高度利用化を
 図り、コンパクトな新ごみ焼却施設を目指す。



4.効率的な安全運転の確保➲業等のコンパクト化を進
 めながらも、安定的な運営やサービスに努める

⛨ 現在、国が推進するごみ処理事業の理想形の1つのス
 タイルは、ごみ処理事業の効率化(処理量300トン/日な
  ど)と、発電による再エネルギー化などの焼却時に発生
 する熱量の有効活用。県ではこれらの動向に鑑み、ごみ
 処理ブロックの広域化を促進しており、今後は本組合も
 広域化を検討していくことが求めている。そのため、周
 辺施設の更新時期を見据え、次の更新時において、現実
 的に広域化が協議できる可能性を残すため、委託期間
 見直し(例:20→15年)
広域化のための協議に向けた
 取り組みを進めていく。


5.効率的な安全運転の確保
⛨ 今回の新ごみ焼却施設整備・運営事業は、施設整備だ
 けでなく、ごみ焼却時の熱量の有効活用として発電によ
 る再エネルギー化などを含めた効率的な施設運営を確保
 するために、DBO方式(デザイン・ビルド・オペレーショ
 の略で、設計・建設及び運転・維持管理を一括発注す
 る方式)よる事業発注を予定しています。そのため、施
 設運営における一定以上のノウハウや実績などにも考慮
 し、経済性と安全性とのバランスのとれた事業者の選定
 が大切です。したがって、事業等のコンパクト化を進め
 ながらも、安定的な運営・ごみ処理サービスに努めてい
 きます。

□ 工事の進捗状況


2020年5月14日 杭工事


2020年6月29日 管理棟:基礎工事


2020年9月29日 管理棟:鉄骨建て方、ごみピット:地下躯
体工事、炉室:基礎工事

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所在地:江戸崎地方衛生土木組合
住 所:〒300-0625 茨城県稲敷市高田424
総人口:56,359人(2019年4月1日)
1.既設焼却施設
・公称能力:100t/16h(50t/16h×2炉)
・形  式:准連続燃焼式焼却炉(流動床式)
・施設概要図


2.不燃物処理資源化施設
・公称能力:20t/5h
・形  式:比重差型選別機
・施設概要図:


3.粗大ごみ処理(破砕)施設
・公称能力:7t/5h
・形  式:二軸剪切式破砕機
4.粗大ごみ処理(破砕)施設
・公称能力:1t/5h
・形  式:一軸破砕機
5.粗大ごみ処理(圧縮)施設
・公称能力:25t/5h
・形  式:スクラッププレスNSP-1220型

工事名称:ごみ処理施設建設工事
工  期:2019年2月27日~2023年3月31日
施  行:エスエヌ環境・日立造船・コスモ総合建設特定
     建設工事共同企業体
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1.発 注 者:江戸崎地方衛生土木組合
2.事業名称:江戸崎地方衛生土木組合ごみ処理施設整備・
  運営事業
3.施設概要:ごみ処理施設:ストーカ式焼却炉(ストー
  カ式焼却炉:70t /日=35t /日×2炉)
4.事業方式:DBO(Design:設計、Build:
  建設、Operate:運営)方式
5.事業期間:設計・建設期間 2019年2月~2023年3
月  
   運営期間:2023年4月 ~ 2038年3月(15年間)
6.建設場所:茨城県稲敷市高田424番地
7.グループ企業:代表企業 エスエヌ環境テクノロジー
 株式会社 
 協力企業 日立造船株式会社、コスモ綜合建設株式会社             
  出資企業 日立造船株式会社、Hitz環境サービス株
            式会社 株式会社日本管財環境サービス


2021年9月10日 管理棟:内装工事、炉室:外装工事・耐
火工事・配管工事・電気工事、計量棟・洗車棟・車庫棟:
屋根工事・外装工事

表 2018年度焼却施設作業月報



※ 江戸崎地方衛生土木組合のごみ処理施設新設は彦根市
 の1/2程度の規模であり、広い平野部に立地されてい
 る。      
                      この項了
        
【エピソード】



「男子厨房に立ちて環境リスクを考える」を考え、また、
町内会の役員をこなしなが、ごみ問題を継続して考えてき
たが、おもしろいもので、「3R・5R運動」「SDGs」
を通し、すこしづつであるがソリューションの全景が拓け
た。これはいささか自信と確信がある。ところで、「ごみ
ステーション」を管理するようになり、「カラス禍」つま
り、ステーションの金網の空隙部に嘴を入れ、ごみを漁る
光景をしばしば目撃し、カラスのネットワークに驚き「賢
いねぇ~」とため息をつき、翌日、彼女と二人で防護ネッ
トの内張を改修する。


2022年4月25日8:21:22 改修前のごみステーション(金属
ネットが破れている箇所から金網に食らいつきゴミ袋を破
砕しゴミを取り出すという荒技を目撃、思わずアルフレッ
ド・ヒッチコック監督の映画『鳥』を思い浮かべた。

【脚注及びリンク】
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