地域循環共生圏概論 ㉜

2021年09月11日 | 防災と琵琶湖


作成日:2021.9.11|更新日:

地域循環共生圏概論 ㉜

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SDGs への貢献度の客観的・定量的評価の意義とは
                    その1

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▶ via 環境ビジネス 2021.SP

SDGs(持続可能な開発目標)
は、広範な分野をカバーして
いるため、各目標の相関性が極めて複雑です。 企業活動
は、ステークホルダー(stake holder: 利害関係者)と
の対話で、シナジー(synergy:相乗作用)を最大化、ト
レードオフ(trede-off:取引・一得一失)を最小化させ
る取り組み成果を示すために、 客観性のある評価を選択、
採用することが重要です。そういう意味では "SDGs イン
ボイス" (invoice: 内容証明・紐付け)といえるのでは
ないでしょうか。


図1 SDGコンパス記載のバリューチェーンにおけるSDGs
   マッピング事例

□ SDGsに求められる客観性
SDGsウオッシュという言葉があります。英語でごまかし
や粉飾を意味するwhitewashとSDGsを組み合わせた造語
で、SDGsに取り組んでいるように見せて、SDGsへの貢献
という意味で実態の伴っていない取り組みを指していま
す。グリーンウオッシュから派生した用語です。そもそ
もなぜ評価が必要なのでしょうか。企業の場合、SDGsへ
の取り組みを説明することは、ステークホルダとのコミュ
ニケーション上、極めて重要です。環境、社会、企業統
治への配慮を投資判断の基準にする ESG投資は、責任---
企業の長期的な成長を測るための指標の---ある投資を行
う上で既に世界標準となりつつあります。サプライチェ
ーン(Supply Chain:供給連鎖)の上・下流の企業との
取引においても、今後はSDGsヘの配慮を求められること
が 増えます。GHGプロトコル(温室効果ガス排出量内容
証明)のSCOPE3(2011年にGHGプロトコルが策定したサ
プライチェーンの温室効果ガス排出量の算定方法・範囲)、
環境フットプリントも同様でしよう。このようなステー
クホルダーとの対話(ダイアログ)において取り組みの
成果を示すためには、客観性のある評価が求められてい
ます。

次に、行政に目を転じると計画段階では 近年「証拠に基
づく政策立案(EBPM:Evidence-based Policy Making)」
が重視される傾向にあり、実行段階においても、財政当
局に成果を示すために客観的な評価が求められています。
自治体SDGsモデル事業に選定された都市は、成果を支援
元はもとより、市民・県民に対しても示していく必要
ります。ローカルSDGsとも称される 地域循環共生圈に
ついては、現在環境省において総合指標が検討されてい
ます。地域循環圈のガイドラインには、環境、経済、社
会の3側面を考慮した評価指標が例示されています。

□ 評価の潮流
2020年7~8月に日本経済団体連合会が「第2回企業行動
憲章に関するアンケート調査」を実施。その中で、会員
企業がSDGs達成への貢献の度合いをどのように測定・評
価しているか調査しています。SDGsに貢献する取り組み
の評価について、72社から126件の実施事例の回答(アン
ケート回答 289社)中の事例を見ると、①評価指標を用
いた評価、②社会的投資収益率(SROI: Social Retum on
lnvestment)、③ライフサイクルアセスメント(LCA)、④
ロジックモデルによる定性的評価、⑤シミュレーション
モデルによる評価、⑤社会実証実験による評価等、多様
な手法が用いられていました。その中から、いくつか評
価手法を概説すると以下のようになります。
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①SDGs評価指標:国連統計委員会から提案されたグロ
ーバル指標があり、世界的にはそれを用いて2030アジェ
ンダの進展をモニタリングすることになっている。一方
で、グローバル指標では各地域の事情を反映することが
難しいものもあるため、各地域に適した独自指標の設定
が推奨されている。 
日本政府から地方創生SDGsローカル指標リストが公開さ
れており、また様々な研究機関からも独自に指標が提案
されている。企業活動に対しては、GRI、国連グロー
バル・コンパクトおよび持続可能な開発のための世界経
済人会議(WBCSD)が開発したSDG Compassがある.また、
企業が独自指標を設定する際、マテリアリティ(組織に
とっての重要課題)から独自指標を設定するケースや、
SBT(ScienceBased Targets)、つまり5~15年先を目標年
として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標を考慮
して設定するケースなどがある。

②ロジックモデル:企業の事業活動の経済的、環境的、
社会的影響について、5段階からなるプロセスで検討す
る。すなわち、投入、活動、産出、結果、影響までの道
筋を追うものである(図1)。まず定性的に考察し、次
いで、可能な限り定量的なデータを収集する。ロジック
モデルの下流に行くほど、正確なデータの収集は困難に
なるとされる。データ収集ができれば、 ①の評価指標、
あるいは③のSROIによる評価へとつながる。

③SROI:企業やNPO等の活勣による社会インパクトの評
価指標であり、目的のために投じられる費用と、それに
よって達成された社会成果(アウトカム)の比で計算さ
れる。費用、社会成果いずれも非財務情報を含み、可能
な限り貨幣換算することで評価に算入する。公共経済学
における費用便益分析、B/C(費用便益比)と同様の計
算手法の企業版、あるいは企業の財務分析におけるROI
(投資収益率)の社会拡大版といえる手法である。

④LCA、LCSA:ライフサイクル概念による持続可能性の
定量評価はライフサイクル持続可能性評価(LCSA: Life
Cycle Sustainabirty Assessrnent)と呼ばれる。環境(
LCA)、経済(LCC: Life Cycle Costing)については、
既に多くの評価実績がある一方社会側面(SLCA: Social
LCA)については評価手法やデータベースが確立している
とは言えず、実施事例も少ないのが現状である。評価指
標としては、雇用創出、労働衛生・災害、健康・安全等
が採用されている。

⑤SDGs目標間のシナジー(相乗効果)とトレードオフ
(負の影響):
:SDGsは、広範な分野をカバーしているた
め、各目標の相関性が極めて複雑なものとなっている。
そのため企業活動において、シナジーを最大化、トレト
レードオフが存在していないか、存在する場合、負の影
響を最小化できないか検討することは有効である。この
分野はまだ研究途上であるが、例えば、地球環境戦略研
究機関(IGES)のレポートでは、再生可能エネルギーの
シェア拡大が農業生産に対して負の影響を与える可能性
があること、エネルギー消費効率の向上が水力発電の水
需要を減少させ、衛生的な水の利用可能性が高まること
等が指摘されている。なおIGESからは、SDGsの各目標の
相関性がわかるデータ分析&可視化ツールが、無料ウェ
ブツールとして公開されている。

図3.QoLによる評価事例(フィードバック活動)

事例1:SROIによる環境保全イベントの評価
以下、評価事例を3つ紹介する。
損害保険ジャパン日本興亜株式会社、日本NPOセンタ、
全国各地のNPO支援センタ、イベント実施地域の環境団
体等との協働による市民参加型の環境保全イベントの社
会的インパクト評価結果が公開されている(図2)。主
な成果(社会的価値の創出)として、プロジェクト実施
による希少生物保護や環境保全の改善、広報活動の実施
によるマスコミヘの露出、環境イベントの実施による会
員増加や他機関との連携強化等が評価対象とされている。
それぞれ、仮想評価法、代替費用法、機会費用法などの
手法を用いて貨幣価値換算がなされている。投資額はこ
の事業に実際に要した費用を算定し、成果÷投資額とい
う計算から、SROI=2.00を得ている。 SROIは、1を超え
ることで投資を上回る成果が得られていることを意味す
る。
                  この項つづく
 
✔ 公的企業や民営・民間企業にとって、不経済経済を
抱えることは、従来の企業規範と相反することであり、
大資本・大規模企業にとっては「不経済」を「公的補塡」
「外部転嫁」「
ポートフォリオ:Portfolio risk)」「
経費削減」で凌ぐことができるが、大多数の中小零細企
業は「経営不振・経営破綻」に陥る。この「不経済費用」
を社会政策に「プラス転嫁」に転換できる貿易関係を構
築する行為(=社会主義政策➲旧態資本主義からの脱
却)言い換えれば、「超高度分業社会」の円滑なる構築
が急がれているということとなります。

【エピソード】


残暑、お見舞い申し上げます。
新型コロナウイルス世界大戦も三年目に入りました。
しかし、負けてはおられません。足腰を鍛え「百名山踏
破」の準備を行う毎日となりました。
                     幹事敬白



【脚注及びリンク】
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