摩周湖

2010年12月22日 | 世界の湖沼百選






【環境モニタとしての湖】

 
座標: 北緯43度35分0秒 東経144度32分0秒

所在地

北海道

面積

19.1 km2

周囲長

19.8 km

最大水深

211.5 m

平均水深

137.5 m

貯水量

903 km3

水面の標高

355 m

透明度

19 m

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布施明の『霧の摩周湖』でも歌われ
てきた摩周湖は、北海道川上郡弟子
屈町にある湖。日本でもっとも透明
度の高い湖の一つで、世界ではバイ
カル湖についで第2位、2001年には
北海道遺産に選定された。急激に深
くなりその透明度から青以外の光の
反射が少なく、よく晴れた日の湖面
の色は「摩周ブルー」と呼ばれている。



北海道東部、阿寒国立公園内に位置。
日本の湖沼では20番目の面積規模を
有する。約7000年前の巨大噴火によ
って生成された窪地に水がたまった
カルデラ湖であり、アイヌ語では「
キンタン・カムイ・トー(山の神の
湖)」という。摩周という名の由来
は「カムイシュ」(神老婆)や「マ
シ・ウン・トー」(カモメの湖)な
ど諸説あるが不明(なお摩周湖にカ
モメは生息していない)といわれる。

 

周囲は海抜600m前後の切り立ったカ
ルデラ壁となっており、南東端に「
カムイヌプリ(神の山)」(摩周岳・
標高858m)がそびえている。湖内は
阿寒国立公園の特別保護地区に。開
発行為や車馬・船の乗り入れは厳し
く規制されている。流入・流出河川
はなく、周辺の降雨が土壌に浸透し
た後十分にろ過されて流入するため
有機物の混入が非常に少なく生活排
水の影響がなくリン酸塩の流入もな
いという。

夏季の気温・水温が低いこともこの
一帯の有機物の分解が進まない理由
となっているという。また、湖面へ
の直接降雨には大気汚染の影響が忠
実に反映されるため、湖水は地球の
環境変化を知るモニタリングの対象
となっている(中国での農薬の使用
状況や亜硫酸ガス濃度の推移も確認
されている)。河川の出入りがない
にもかかわらず年間を通じて水位の
変動が少ない。古来近隣の神の子池
に伏流水が流れ込んでいると考えら、
伏流水は湖の南東8キロにある「さ
けますセンター虹別事業所」近辺の
他に、多和平などにも伏流している
とみられている。

もともとは魚類が生息せず、エゾサ
ンショウウオのみが生息していたが、
1926年の道立水産ふ化場がニジマス
の採卵・ふ化事業の開始から、ニジ
マス、ヒメマス、エゾウグイ、スジ
エビが放流され、自然繁殖を続けて
いるという。また、特定外来生物種
のウチダザリガニが、1930年7月に
魚のエサとして雄248尾、雌228尾を
放流し定着している。しかし、これ
らの放流された魚類、甲殻類により
ミジンコが激減し、植物プランクト
ンが増加。水質汚濁が懸念されてい
る。

摩周湖一帯の火山活動は約3万年前
から始まり、山頂を失う以前の姿は
富士のような成層火山で、標高は2
千㍍程度と考えられている。当時の
安山岩質溶岩流が外輪山を形成し、
摩周湖に相当するカルデラは約7千
年前の大噴火で形成された。巨大カ
ルデラ噴火としては九州南沖の鬼界
カルデラとほぼ同じ時期で、日本国
内では最も新しい。その後約4千年
前からカルデラ東部で噴火が始まり
カムイヌプリ火山が成長した。同じ
頃カルデラ中央(湖底)でも溶岩ド
ームが形成されカムイシュ島ができ、
現在の地形となったとされる。



【透明度の低下】

1931年8月の透明度調査で、バイカ
ル湖の40.5㍍(1911年調査
)をしの
41.6㍍の透明度を記録している。
これは当時確認された世界最高記録
である。1950年代以降透明度が低下
している。このままだと、倶多楽湖
などと順位が逆転する可能性がある
という。2004年8月の北見工業大学
による検査では、透明度19.0㍍まで
低下する。

透明度低下の原因は不明である。
(1)ヒメマスやニジマスの放流に
よるプランクトン分布の変化が指摘
されているが、透明度の低下はヒメ
マスやニジマスを放流してから20年
以上も変化しておらず魚類の放流と
の因果関係は不明される(2)1952
年十勝沖地震を境に透明度が低下し
ているとする説や(3)増加した観
光客による内壁斜面の崩落、排気ガ
ス、増加したエゾシカによる影響な
ど諸説ある。



少し考えてみると、透明度という指
標はシンプルなのだが、珪藻土の濃
度(吸収波長560nm ピーク)での評
価や十字板の読み取り可能深さでの
評価のため、ごく微量で構成される
物質の相対濃度であり、それ以上の
情報は得られないのでトレーサビリ
ティとしては不適当だ(例えば、パ
ーティクル分級個数量の変動だけで
なく、由来分科別での変動を測定す
というような)。

透明度の低下の原因の1つに「温暖
化」が上げられているが、温度ファ
クタは大変重要なことではないかと
思える。そんことを考えならがら、
Get back 41.6m!は 地球環境
推進にあたり世界発信される合い言
葉言かもしれない。


Image-2008 Lake Masshu.jpg


脚注及びリンク集


(1)「世界の大湖沼
(2)「
世界湖沼会議」、財団法人 国際湖沼環
  境委員会
(3)「
世界の湖と琵琶湖
(4)「摩周湖の湖沼学的研究
(5)「北海道において保護すべき陸水
(6)「摩周湖の透明度の低下原因解明と総合的環境保全に関する研究