911だった。

アメリカ同時多発テロから、１０年が過ぎた。
１０年。
もう、１０年だ。


あの時、わたしは日本に住んでいた。
夜、kenjiはもう寝ていたが、わたしはテレビを見ていた。
突然のブレイキングニュースで、映画のような映像が飛び込んできた。
飛行機が高層ビルに突っ込んでいた。
最初は、事件か事故かわからなかった。
状況がやっと飲み込めて、思わず寝ているkenjiを起こした。



その数年前、kenjiとわたしは、この場所を訪れていたのだった。
テキサスの田舎に駐在していた頃、せっかくアメリカにいるのだし、と、
ニューヨーク見物に出かけた。
自由の女神などをフェリーで見て周り、その時、このビルも目に入っていたはずだ。


そのビルに飛行機が突っ込むシーンや、「テロ」という言葉に、テレビ画面を見つめながら、世界はどうなってしまうのか、とても不安に思った。

あれは２００１年の出来事だった。
わたしたちがハワイに住むことを決めたのは、２００４年。
テロから３年。
いつもどこかと戦争をしているアメリカに住むということに、不安はあった。

それでも私たちは、アメリカに移住した。

住んでみれば、危機感は忘れた。
民間のレベルでは、戦争ははるか遠い場所での出来事だからだ。

アメリカは、自国が戦場になっていない。
軍に関係のない民間人が被害をうけることはない。
民間人の住居への誤爆は、戦争なら当たり前のように済まされる。


９１１の１０年目、ということで、わたしの中では、不安があった。
どこかでまたテロが起きないか不安だった。
この日、kenjiがお客様を空港に迎えに行く仕事があって、わたしはとても心配だった。
テロの舞台は飛行機が多い。


争いは争いを生む。
不安な気持ちは不安を増殖させる。

感情は連鎖していく。



今年の３月１１日は、東北大地震があった。
ちょうど半年。

天災は防ぎきれないけれど、人災（戦争）はわたしたちの行動次第で、なんとかなるはずだ。
争いの、不安の連鎖を、どこかで断ち切るためにはどうすればいいのか、わたしにはわからない。
すでに起こっていることを断ち切る力はわたしにはない。

けれど、新たに始めないことは誓える。争いを自分から起こすことはしない。

争わなくても分かり合える。
争わなくても分け合える。
争わなくても、わたしたちは満たされてるのだから。



１０年目の今年、とくに目立ったことは起きなかった。
kenjiも普段通り、お客様を空港でピックアップして、仕事を終えて家に戻ってきた。
わたしもいつもどおり、ワイキキでマッサージをした。
いつもと同じ、青空に白い雲。さわやかな風が吹いていた。








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