ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

2019-02-28 10:51:27 | 映画


(これは2017年9月24日の記事です)

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」という長いタイトルの映画を見た。(ジャン=マルク・ヴァレ監督作品)

ジェイク・ギレンホール主演の映画はどれもたいていいい。
「ブロークバック・マウンテン」「デイ・アフター・トゥモロー」「ミッション:8ミニッツ」「ゾディアック」・・

最近見たのは「ナイト・クローラー」
事故現場などの動画を撮ってメディアに売り込むカメラマンの話なのだが、彼は人間の死に対して全く共感を感じないサイコパス。その男をジェイク・ギレンホールはすさまじい迫力で演じきっている。

「雨の日は会えない・・」も妻の死に対して悲しみを感じない男の話なのだが、彼はサイコパスではなく、どこにでもいる中年のサラリーマンだ。

冒頭で車の事故により突然妻が死ぬ。
だが彼は悲しみを感じない。病院の自動販売機からチョコが出てこないといって自販機会社にクレームの手紙を書く。
葬式でも涙を見せず、翌日から会社に出勤して周囲をあわてさせる。それを見た妻の父親がいぶかり、やがて折り合いが悪くなる。

実はショックが大きすぎて現実を受け止めきれないでいるのだが、彼はそれを意識することすらできない。
一種の乖離状態に陥っているのだ。

そこで彼はモノを壊すということを始める。

まずは冷蔵庫の水漏れを修理するため分解し始めるのだが止まらなくなり、すっかり破壊しつくしてしまう。
ここから彼の破壊衝動はエスカレートしていく。

トイレのドアがきしむからといって壊し、蛍光灯を壊し、会社のPCも壊し、やがて自宅まで破壊しつくそうとする。

「破壊」というのが原題である。
「雨の日は会えない・・」のようなセンチメンタルな話では全くない。

「破壊」で思い出すのが、ミヒャエル・ハネケの「セブンス・コンチネント」だ。ハネケといえば「ピアニスト」の監督だが、「セブンス・コンチネント」の破壊力は圧倒的ですさまじい。何しろ自宅を含めすべてを破壊しつくし(破壊描写が延々と描かれる)その後家族全員死んでしまうという話なのだ。

ハネケの映画はどれも毒を含んでおり、後味がよくない。それでも見る者を圧倒するインパクトを持っている。「破壊」がテーマなら、これくらいの破壊力じゃないとね、と思う。

「雨の日は・・」は映画としてはイマイチだけど、ショックを受け止めきれない人間の破壊衝動については巧く描かれていると思う。

人間はどこかで発散しないと狂い始める。彼の場合はそれが破壊行動だった。
一方で彼は、自販機会社にクレームの手紙を書いたことから知り合ったシングルマザー、カレンの息子クリスをかわいがり、クリスも彼に自分はゲイじゃないかと思うんだけど、と打ち明けたりする。

終盤で彼はようやく涙を見せるのだが、そこに至るまでの人間模様、心理描写が今一つなのが残念だ。

でも、ジェイク・ギレンホールはいい。

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