ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」他

2016-10-03 19:26:56 | 映画


今回ツタヤで借りたDVDは4本。
「黄金のアデーレ」については先日書きました。
今日は他の3本について。

一番よかったのは、
「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」
 ジル・シメントの小説「眺めのいい部屋売ります」の映画化です。
 リチャード・ロンクレイン監督作品。2014年。

(以下ネタバレです)
モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが熟年夫婦を演じています。さすがベテランの二人、すごくいい味出してます。
ニューヨークのブルックリンに40年も住んでいるアレックスとルース夫婦ですが、最近足腰が弱ってきてアパートの階段を上るのが大変になってきました。
そこで、不動産屋をしている姪のリリー(シンシア・ニクソン。「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダ役)に頼んで自宅アパートを売ってエレベーター付きの家に引っ越そうと考えます。
アパートの内覧会の日、マンハッタンブリッジ上でタンクローリーが立ち往生します。そしてそれはテロリスト騒ぎに発展し、TVを賑わす事件になっていきます。
一方、彼らが飼っているドロシーという老犬が病気になります。
二人はテロリスト騒動のさなか、ドロシーを動物病院に運び、CTを受けさせ手術まで受けさせるのです(この手術代が何と1万ドル)

リリーはやり手の不動産屋。常に早口でまくしたて、二人を駆り立てます。
内覧会、値段の交渉、オファー等々、アメリカの不動産事情がよくわかり (ま、わかったところでどうということもないのですが)、ジェットコースターのような取引の渦の中に二人が巻き込まれていく様子が、コメディタッチで軽妙に描かれます。

何よりアレックスとルースのカップルがいい。
42年前、両親の反対を押し切って二人は結婚し、以来、ブルックリンに住み続けています。
若かりし頃の回想シーンが随所に挿入され、二人の来歴が語られます。
アレックスは絵描きです。売れた時期もありましたが今はあまり売れなくなっています。ルースは長く学校の先生をしていたようです。
二人には子どもがいないので、犬のドロシーが子どもです。

二人はジェットコースターのような日々を過ごした後で、自分たちの暮らしや生きてきた時間を見つめなおすのです。
いろんなアパートを見てきたけど、やっぱりここが一番だと。
ドロシーの病気も回復し、テロリスト騒ぎもおさまり、
結局、二人はアパートを売るのはやめて、もう少しここにいようと決心するのでした。

このアパートが何とも素敵です。
大きな窓からはマンハッタンブリッジが眺められ、屋上には野菜を育てる小さな庭園まであって、実にいいアパートなのです。
熟年の二人の生活が今後どのように変化していくかわかりませんが、
それは、とりもなおさず、私たち団塊の世代にも共通するもので、
人生の最後をどう締めくくるかに思いを馳せさせてくれる映画でした。

とはいえ、あんなカップルだったらどこに住んだっていいよね、
という、実にうらやましい映画でもありました。


次によかったのが、「黄金のアデーレ/名画の帰還」
その次が「パディントン」

「パディントン」は一見とてもかわいい子ども向けの映画に見えますが、
よくよく考えてみると、これって、移民の話ね、とわかります。

ペルーの山奥で平和に暮らしていたクマの一家を大きな地震が襲い(ひょっとして日本?と思った)
家も森も破壊され、伯父さんも亡くなります。
子グマのパディントンは、伯母さんを一人ペルーに残し、昔ロンドンから山奥にやってきた探検家を訪ねて、はるばるロンドンに向かいます。
なぜなら、探検家はとても親切な人で、マーマレードの作り方を教えてくれ、ロンドンに来たら家をくれるという約束までしてくれたからです。
パディントンは無事ロンドンに到着し、途中いろいろあったけど、最終的に親切な家族に拾われ、その家族と一緒に暮らすようになりましたとさ。めでたしめでたし。
というお話。

ニコール・キットマンが悪役で登場します。
珍しい動物を剥製にするのが趣味という冷酷な女で、パディントンを剥製にしようと追い回します。しかも、彼女はあの親切な探検家の娘だった、というオチまで付いてます。

つまり、言ってみれば、まあ、彼らにとって、外国人(クマ)というのは、とても珍しい動物みたいなもの、なんですね。
イギリスと言えば紳士の国だといわれておりますが、
もちろん、パディントンを拾ってくれたブラウン一家のような親切な人たちも大勢いるでしょうけれど、一方で、ミリセント(ニコール・キットマン)のように、剥製にしてやろうと狙っている輩もいるということですね。
とてもわかりやすい。

4本の中で最悪だったのが「セッション」でした。
「セッション」はかなりムカつく映画です。
(あらすじも書きたくないので興味ある人は他で見てください)
それもそのはず、あの音楽教師はまさにサイコパス。正気じゃないのです。
最後の最後まで、彼はとことん生徒をいたぶります。そのいたぶり方がハンパなく凄まじい。見ていて吐き気がしてきます。
でも(幸運なことに?)生徒の方が一枚上手だった、というお話。
サイコパスについて学ぶなら、いい映画かもしれない。
(軍隊にはこの手のサイコパスがいっぱいいそう)
でも、一番いいのは、そういう人と出会わないこと。出会ってしまったら、さっさと逃げることです。彼らが改心することはまずあり得ないので。

というわけで、時々はツタヤで新しい映画を借りるのもいいなと思いました。



《追記》
「セッション」について再考。
 狂人についての映画としては秀逸かもしれないと思いました。
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