青空百景/剱岳 点の記

2009-07-02 | ◆空と映画とスタジアムと…


間違いなく山岳映画史上に残る名作だと思います。
山へ登られる方や、山の魅力が分かっている方でしたら
この立山連峰の美しい山々を、大スクリーンを通して観られるだけでも
十二分に幸せな時間を過ごせます。

話は、どんな時代のどんな場所にもいる、馬鹿上司の命令で、
命をかけて剱岳に登らさせられる哀れな?測量手達の物語です。

この陸軍の馬鹿上司と真摯に命令を遂行する測量手の関係を見ていると、
やがて困った指導者の下で悲惨な戦争に突入していく日本国民の姿や、
敗戦から復興していく逞しい日本人の縮図を見ているような気にさせられました。
ある意味善くも悪くも、20世紀の日本人の生真面目さが描かれているような作品です。

面白いのは、この作品自体がその流れを(生真面目さ)汲むように作られていて、
惜しみない人の汗と時間と、危険を代償に作られているのがよく分かります。
平地とは違い、ちょっとカメラ移動するのも大変ですし、過酷な自然、
すぐに変わる自然の中での撮影の苦労はたやすく想像出来ます。

演出は必要以上に過剰でなく、危険な場面でも、
安易に人を死なせるようなお涙頂戴もなく、
登頂に成功しても、バカ喜びする訳ではなく、
淡々と本分の仕事をまっとうするシーンに測量手魂を感じます。
そんなところが初登頂を“威信”や“権威”にしか感じられない、
陸軍馬鹿上司との人間性の違いを浮き上がらせているんじゃないでしょうか。

あとキャスティングもお見事で、それぞれの役者が見事にハマっていて、
特に案内人役の香川照之にとっては、代表作の一つになる作品じゃないでしょうか?
松田龍平はどんどん優作に似てきていますね~

とにかく200日以上かけて撮られた、日本の四季の美しい山(美味しいトコ撮り)は、
DVDのTV画面では伝わりません。
山好きな方は、ぜひ大スクリーンでご堪能ください。


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