昨日の続き…
池袋の店で働いてた時のこと
その日はとても暇な日で
ママもカリカリ来ているようだった
閉店が近付いた頃、ドアが開く音がした
「いらっしゃいませェ~」
近所のホモバーのマスターだ
「あらお母さんいらっしゃ~い!」
マスターだがウチではお母さんと呼ばれている
子泣きジジイそっくりの風貌と
目玉オヤジの様な甲高い声が特徴だ
「どうせ暇こいてたんでしょっ!
あらエドナあんた相変わらずブスね~」
いつもの毒舌がこんな日は耳に心地良い
「お母さんヒドイワ~ッ!」
マスターのボトルは半分くらい残ったローヤルだ
ママを入れて4人も居るんだから、あっと言う間に空くだろう
東北出身のヒロミちゃんがモタモタと酒を作る
「アンタ相変わらず汚いわねェ~
化粧の仕方知らないのかしら?」
「そったらこど言わねでけろ~」
ヤニで茶ばんだ歯を見せて身をくねらせるヒロミ
ホモバーのマスターだから口は達者だ
意地悪言われても切り返すぐらいでないとオカマはつとまらない
「ねェお母さん、今度お店に遊びに行ってもいいかしら?」
先輩のレイコさんが甘えた声を出す
「ダメよウチは女装禁止なの!
それにアンタは顔がデカ過ぎてドアにつっかえちゃうわよ!!」
「まァ悔しいわァ」
ママがソワソワし始めた
ショータイムをしたくてウズウズしているのだ
客が来ると会話もそこそこですぐショーをしたがるのだ
「エドナ、あんたは踊り下手だから見てらんないわ
こないだアタシが教えてあげたでしょ
色っぽさがないとダメよ!」
「お母さん、プレッシャーだわァ」
私は昔からショータイムは苦手
踊りのセンスがまるでないのだ
それよりもボトルがなかなか空かない事の方が気になっていた
ヒロミちゃんに目で合図するが分ってないようだ
入り口のドアが開き、新たなお客様が来店
レイコさん目当ての男性客だ
ママは相変わらずショーの音楽の頭出しに夢中だ
ショーが終わったらマスターも帰ってしまうだろう
始まる前にニューボトルを入れてもらわなければ…
私とヒロミの2人で飲めばあっと言う間だろう
私はグラスにドバドバ~と酒を注いだ
この際仕方がない
ヒロミは相変わらず涼しい顔をしている
腹が立ったので「アンタも飲みなさいよ」と言うと
「おめに言われだがね」(アンタに言われたくない)と来た
「飲まない、喋らない、動かない
まるでアンタはオブジェね」と吐き捨て
ほとんどストレートに近いウイスキーを
立て続けに流し込んだのだ
見かねてマスターが口を開いた
「アンタ、無理しなくても入れてあげたのに…」
「エドナそろそろ始めましょ」
ママが私にショーの前歌を命じる
私はさっきの一気飲みが効いた様だ
いつもなら「さそり座の女」を選ぶのに
何故かその時は中島みゆきの「化粧」を入れてしまった
そんな暗い曲をショーの前に歌うなんて
きっとママに注意されるだろうが
もうイントロが始まっている
♪化粧なんてどうでも良いと思っていたけれど…
歌いだして気付いたのだが涙が出ている
サビに来るともう駄目だ
泣けて泣けて、とても歌えないのだ
マスターや他のお客さん(と言っても一人だが)も
何で私が泣いてるのか不思議そうに眺めている
その日のショーは酔っ払って泣きじゃくる私のせいで
滅茶苦茶だった
何が哀しいのだろうか
ヒロミちゃんがこんな暇な時にも
マイペースだった事か?
それとも無理してボトルを空けようとした自分が
はしたなくて惨めに思えて来たのか
そのどちらでもない
私は酔うと泣き上戸になると言う事を
その時、初めて知ったのだった
池袋の店で働いてた時のこと
その日はとても暇な日で
ママもカリカリ来ているようだった
閉店が近付いた頃、ドアが開く音がした
「いらっしゃいませェ~」
近所のホモバーのマスターだ
「あらお母さんいらっしゃ~い!」
マスターだがウチではお母さんと呼ばれている
子泣きジジイそっくりの風貌と
目玉オヤジの様な甲高い声が特徴だ
「どうせ暇こいてたんでしょっ!
あらエドナあんた相変わらずブスね~」
いつもの毒舌がこんな日は耳に心地良い
「お母さんヒドイワ~ッ!」
マスターのボトルは半分くらい残ったローヤルだ
ママを入れて4人も居るんだから、あっと言う間に空くだろう
東北出身のヒロミちゃんがモタモタと酒を作る
「アンタ相変わらず汚いわねェ~
化粧の仕方知らないのかしら?」
「そったらこど言わねでけろ~」
ヤニで茶ばんだ歯を見せて身をくねらせるヒロミ
ホモバーのマスターだから口は達者だ
意地悪言われても切り返すぐらいでないとオカマはつとまらない
「ねェお母さん、今度お店に遊びに行ってもいいかしら?」
先輩のレイコさんが甘えた声を出す
「ダメよウチは女装禁止なの!
それにアンタは顔がデカ過ぎてドアにつっかえちゃうわよ!!」
「まァ悔しいわァ」
ママがソワソワし始めた
ショータイムをしたくてウズウズしているのだ
客が来ると会話もそこそこですぐショーをしたがるのだ
「エドナ、あんたは踊り下手だから見てらんないわ
こないだアタシが教えてあげたでしょ
色っぽさがないとダメよ!」
「お母さん、プレッシャーだわァ」
私は昔からショータイムは苦手
踊りのセンスがまるでないのだ
それよりもボトルがなかなか空かない事の方が気になっていた
ヒロミちゃんに目で合図するが分ってないようだ
入り口のドアが開き、新たなお客様が来店
レイコさん目当ての男性客だ
ママは相変わらずショーの音楽の頭出しに夢中だ
ショーが終わったらマスターも帰ってしまうだろう
始まる前にニューボトルを入れてもらわなければ…
私とヒロミの2人で飲めばあっと言う間だろう
私はグラスにドバドバ~と酒を注いだ
この際仕方がない
ヒロミは相変わらず涼しい顔をしている
腹が立ったので「アンタも飲みなさいよ」と言うと
「おめに言われだがね」(アンタに言われたくない)と来た
「飲まない、喋らない、動かない
まるでアンタはオブジェね」と吐き捨て
ほとんどストレートに近いウイスキーを
立て続けに流し込んだのだ
見かねてマスターが口を開いた
「アンタ、無理しなくても入れてあげたのに…」
「エドナそろそろ始めましょ」
ママが私にショーの前歌を命じる
私はさっきの一気飲みが効いた様だ
いつもなら「さそり座の女」を選ぶのに
何故かその時は中島みゆきの「化粧」を入れてしまった
そんな暗い曲をショーの前に歌うなんて
きっとママに注意されるだろうが
もうイントロが始まっている
♪化粧なんてどうでも良いと思っていたけれど…
歌いだして気付いたのだが涙が出ている
サビに来るともう駄目だ
泣けて泣けて、とても歌えないのだ
マスターや他のお客さん(と言っても一人だが)も
何で私が泣いてるのか不思議そうに眺めている
その日のショーは酔っ払って泣きじゃくる私のせいで
滅茶苦茶だった
何が哀しいのだろうか
ヒロミちゃんがこんな暇な時にも
マイペースだった事か?
それとも無理してボトルを空けようとした自分が
はしたなくて惨めに思えて来たのか
そのどちらでもない
私は酔うと泣き上戸になると言う事を
その時、初めて知ったのだった