Ｍ美

雨の金曜日、このまま夜まで降り続きそう


昨夜は店の裏に住んでいるＭ美が遊びに来てくれた

他にゲストは居なくて、ヒデミさんも営業に行っている

Ｍ美は某球団の熱烈なファンで

応援団にも加入している

地方の試合にもトランペットを担いで参加する

先日も東北まで行って来たばかりだ


「球場によって何かと規制もあるの

　こないだ行った所はトランペット禁止だったので

　口でトランペットの音を真似て応援したわ」

くち三味線ならぬ“くちトランペット”である

大きな声を出し過ぎて声が枯れている

ミーハーな私は、何年か前に現役を退いた某選手の事を訊いてみた

元女子アナを奥さんに持つ人柄の良さそうな彼だ

「アノ人とっても感じ悪いらしいよ」

Ｍ美の知り合いにスポーツ誌の記者が居て

インタビュー時に態度が最低だったとか

「やだ～、そうなの？ファンだったのに…」

今度から彼を見る目が変わりそう

楽しい裏話を聞いているとあっと言う間に時間が過ぎる


かれこれ２時間くらいダベってただろうか

それにしても暇だ

時計の針は１時近い

その時ドアが開いた

「いらっしゃいませ～！」

秋本さんだ

彼は私たちが外でキャッチしていると

ひやかして通過する事が多いのだが

５回に１回の割合で飲んで行ってくれる

ガラガラの店内を覗いて一度は立ち去ったものの

ゲストのＭ美が気になっていたのか

５分位して戻って来てくれたのだ

可愛くて若い女の子はホントに得だ


秋本さんは建築関係の会社を営んでいる

つまんない親父ギャグで我々を疲れさせるのだが

まあそれもご愛嬌と言う事で耳を貸す

懐の広いＭ美は私と一緒になって

オジサンの話に付き合ってくれている


その後、Ｓちゃんがお友達とご来店

ヒデミさんも営業から帰って来て閉店まで盛り上がった

他所で飲んでくると必ずテンションが高くなる彼女

きっと用もないのにビールをガブ飲みしてきたのだろう

酔うとＫＹに磨きがかかり、始末に悪い時もあるが

昨夜はまだマシだった

最後はＳさんとＭ美だけになり

時間も４時半過ぎだ

会話はとめどもなく続きそうだったが

我々の身体も持たないし

何より酔っ払いのヒデミが暴れる前に店を閉めなきゃ…


Ｍ美、昨夜はお手伝いしてくれてホントにありがとう

そんな彼女ももうすぐ引っ越してしまうのだ